子供の頃家で飼っていたマリの話 を、記憶を辿りながらまた書くと宣言したっきり、一度も書いていなかった事をふと思い出したので、今日はそのマリの話です。


オス猫のマリはすっかり我が家の一員になり、毎日窓から、玄関から出たり入ったり。


所謂、外猫ですね。でも必ず家には帰ってきました。


マリがいつも出入りに使っていたのが、私と兄が使っている2階の子供部屋のベランダからでした。


隣の家との境にあるコンクリートの塀にぴょん!と登って、そこから庭に生えている木を伝い、2階のベランダへ上がってきます。


ガラス扉のカギが開いていれば器用に前足を使って扉を開けて部屋に入ってきます。


カギが掛かっている場合は例の太い声で「んぎゃ~、んぎゃ~」と開けてくれ!の催促が始まります。


マリに不幸な、その事件が起きた日、子供部屋にいた私の兄はものすごく不機嫌でした。


元々、うちの兄は長男坊によくいる、神経質で我儘なタイプ。


多分、学校で面白くない事があったのか、イライラしながら机に向かって宿題でもしていたんだと思います。


マリはいつものように、カギが掛かっているガラス戸を早く開けて欲しくて中にいる兄に向かって「んぎゃ~、んぎゃ~」と鳴き始めました。


私と違って、普段からマリの世話などした事がない、動物好きでもない兄にとって、マリには愛情など何もありません。


マリの「んぎゃ~、んぎゃ~」と、催促の鳴き声も暫くは完全に無視していました。


その鳴き声が突然「うるせーんだよ!!」と言う、兄も怒鳴り声でかき消されたと思ったら、


「ガラーっ!!(← ガラス戸を開けた音)」


「んぎゃー(← マリの鳴き声)」


「ガン!ガラーン!!(← 何かがベランダの鉄格子にぶつかった音)」


「ぎゃぎゃーん!!(← 多分、マリの声)」


何が起こったかと様子を見に行くと、どうもマリの鳴き声に怒った兄が、マリ掴んでベランダの鉄格子に向かって思い切り投げつけたようなんです。


当然、その場にマリの姿はなく、兄は平然と自分の机に座って宿題を続けていました。


暫くして、玄関の扉の外に寝そべって、股間の辺りをペロペロと舐めているマリを見つけました。


マリの様子を見ようと、急いで近寄ってみました。


私に気が付いたマリは、こっちを一度見つめてやや元気なく「ぎゃ~」と鳴くと、また足の間をペロペロと舐め始めました。


投げられた時に怪我したんだろうな…と思い、そのマリがペロペロしている部分を見てみると、何とタマタマが一つ袋から出ちゃってます!!


猫を飼っている方はご存知だと思いますが、オス猫の二つのタマタマは毛皮に包まれたような状態になっています。


その二つのうちの一つが、毛皮が剥けた状態になって、剥き出しになってます。


体とはちゃんと繋がっていますが、その部分をマリはしきりにペロペロと舐めていたんです。


当時、小学校の低学年だった私にはどうしていいか解らず、ただオロオロしただけでした。


親に相談したかどうかも良く覚えていません。


その後も暫くは、マリはその怪我した部分を毎日毎日舐め続けていました。


最初はその怪我のせいで動きが鈍かったマリですが、段々と普段通りに行動するようになり、1~2ヶ月も経つ頃には塀にジャンプして登れるぐらい元気になりました。


気になっていた股間をチェックしてみると、何と元通りにタマタマが毛皮に包まれて、何事もなかったように治ってたんです。


動物って怪我をすると良くペロペロと舐めたりしていますけど、あれって実際効果があるんですね。


あの剥き出しのタマタマを見た時は、一瞬もうダメかと思いましたが、自然治癒力もバカには出来ません。


しっかし生き物をベランダの鉄格子に向かって投げつけるなんて行為、私には考えられません。


こういう人は、きっとどこかでしっぺ返しを食らいます。


あれから30年近くの年月が経った兄からの年賀状は、いつの間にか東京から転勤になった山形の片田舎からでした…。