小学校2年生の時、引越しをしました。同じ区内での引越しだったのですが、学区域からは外れてしまったんです。でも、歩いて30分近くかかる前の小学校にそのまま通い続けました。


理由は良く覚えていません。多分、近所の小学校はあまり評判が良くなかったので、両親が転校をよしとしなかったんだと思います。




そんな訳で、私は家の近所の小学生とは違う学校に通っていたんです。




引っ越してからしばらくすると、すぐ近くのマンションに住む別の小学校に通うAくんと友達になりました。小柄ですが、運動神経が良くって明るいAくん、一緒に草野球のチームに入って放課後や週末にも遊んでいました。




しかし、小学校も高学年になってくると近所の友達よりも同じ小学校の友達と遊ぶようになり、Aくんとは段々と疎遠になってしまいました。野球も草野球のチームではなくて、同じクラスの友達と一緒にプレイする事が多くなり、いつしかAくんの事は私の記憶から薄れて行きました・・。




学校帰りのある日、草野球チーム時代の友達でAくんと同じ小学校の知り合いに偶然道端で会い、久し振りにAくんの事を元気かと聞いてみました。すると彼はこんな風に答えました。




「お~、ミソパンの事ね。まだうちの学校にいるよ。」


ミソパン??最初は何の事だか良く解りませんでしたが、どうもAくんは今ミソパンというあだなで呼ばれているらしい。何でもプールの授業の時に、更衣室に残されていた1枚のパンツにうんちが付いていて、それがAくんのものだったことが判明し、それ以来彼はミソパンと呼ばれるようになったんだそうです。




「ふ~ん、そうなんだ。」


その時はあまり気にもせずに、次の日にはAくんの事は忘れていつもの生活に戻っていました。小学生ってそんなもんですよね。




中学2年生になり、同じ区内の全部の中学校が参加する陸上競技会が行われました。その陸上競技会の会場で偶然にも中学生になったAくんを見かけました。




「Aくん!久し振り!元気?」


中学生になって、学校内ではかなり目立つ存在になっていた私は、他校とはあまり接触しないように、と言う学校からの指導を全く無視して、Aくんとの久し振りの再会を素直に喜んで彼に話かけました。




ところが、声をかけたAくんの様子が少しおかしい。ちょっとおどおどした表情で、私の態度とは対照的に戸惑っているような印象を受けます。あれって思っていると後ろからAくんを呼ぶ声が。




「ミソパ~ン。何他の学校のやつと話してんだよ!」


と、いかにも悪そうな感じのやつが登場。Aくんのおどおど感が更に増して行ったようでした。




「うん。何でもないよ。向こうから勝手に話かけてきただけだから。」


とAくん。多分、我々同様、学校からは他校との接触はNGのお達しが出ていたんだと思います。


Aくんはささ~っと半ば逃げるようにその場を去ってしまい、私とAくんとの再会はほんの数分で終ってしまいました。




Aくんはまだミソパンって呼ばれていたんだ・・・。




私からAくんが逃げてしまった事よりも、彼がず~とそんなあだなで呼ばれ続けていた事を知ったのがショックでした。野球が得意で明るかったAくんが、たった一度のプール授業で付けられたあだなのせいですっかり性格が変わってしまったのかと思い、その時はとても暗い気持ちになりました。




今思うと、子供って残酷ですね。人が傷付くであろうあだなを平気で付けたりしますから・・・。でもそんな様々な壁を乗り越えて人間って成長して行くのかな~とも思います。小学校だって中学校だって子供にとっては立派な社会ですからね。




あれ以来、Aくんには一度も会っていません。生活環境がガラッと変わる、高校入学とかで立ち直ってくれていると信じたいですね。優しい性格だったから、きっとどこかで明るい家庭を築いて幸せに暮らしているじゃないかな~♪




どこかで偶然会ったら今度は逃げないでね。Aくん!