その24話目です

毎回 間が空きすぎて
話を忘れてしまいますね笑い泣き




悪性リンパ腫と診断され、
入退院を繰り返してきた主人。


    最後の入院になったあの時期…


すっかり痩せて、
体力も落ちてしまっていたあの時…


外へ出ることすらままならない

        そんな状態の中、


   担当の先生達が決断してくれた


              貴重な外泊許可





厳しい状態には変わりない…


         それでも


先生から言われていた数値を

          主人は気力で保ち続け

その時間を持つことができた…



     年明けの4日間
      一緒に過ごせる時間・・・

      
        

いよいよ4日目…最後の日。


この日は

午前中は
   部屋でゆっくり過ごそう。と


       家族3人だけで 過ごそう…と。




で、

人の事ばかり気にかけてる主人は

「お前、
       ライブの準備やれよえー」と…



            ライブ・・・



閉店へのカウントダウンが始まり、

私達の務めていたレストランでは

ラスト企画として

毎週末 幾つかライブを予定していた



その中のひとつに
私の時間も組んでくれ、

また

独りライブをする事が決まっていた





主人が言ってるのは

そのライブの準備のこと





      せっかく
     3人一緒に居られる時間だから


私はこの4日間、
ライブに関わる事を
全くするつもりはなかった


とはいえ、
頭の中では

       このくらいに内容を仕上げて、
            覚えて…練習して…

なんてことを考えていて、




あと10日程にせまったライブ…

気持ちは確かに焦っていた


 なんせ
 台本まとまってなかったからー笑い泣き



その時やることになっていたのは

作品を1から作るのではなく、

       小説を元にしていたので

それほど大掛かりではなかった



 一人用にセリフや内容を変え、
時間内にまとめれば出来上がり


でも
その作業に結構手間取ったりして








 主人は 何度も

        「いいからやれ」
  
                      「今やれ」

と私に言い続け、

 「12時までな。
       それまでにやり終えろよ。

             あとは家族の時間な 」

と・・・







前からそうでした…

強引にアレコレ言ってるようで、


私の事をスゴく考えて
 
  「こうしたいの?」とかではなく

             「こうしろよ」と

私のしたい状態を
するべき流れにしてくれてた…




結局
私は時間をもらい、
主人の言った時間まで
たっぷり使わせてもらいました



   そういう時、
   必ず娘と遊んでくれていて…
   私がめいいっぱい集中できるような
   そんな環境を作ってくれてた
   




         「時間だぞぉーーー」



そう言ってやってきた主人は



 「ご飯だ、ご飯。
            昼メシの時間だぞ」と、


手に持った皿をテーブルに置いた





  主人が作ってくれたパスタだった


 
出会った頃は
キッチンで毎日調理してて、

結婚してから
家で食事作るのは主人で…

       「俺がやった方が早い」

なんて言いながら色々作ってくれた




    「〇〇(私の名)にメシ作る



外泊許可が出た時
       主人はそう言ってた






     野菜たっぷり入った
                       トマトのパスタ





 
   「俺は腹減ってないから
              2人で全部食べろよ…」




 私達のパスタを作るのに

 かなり体力を使ってしまった感じで

 ベッドに腰を下ろした主人は

 だいぶ  しんどそうだった…




          「大丈夫….?」

             
         「少し横になって…」





そう声をかける私に



     「いいからサッサと食えよ」


 いつものようなセリフ

     でも
     全然力がない・・・



    「美味しいよ。ありがとう」

         「パパ、おいしい」



娘とそう言いながら

パスタを口に運ぶけど、

涙が溢れそうで

思うように食べれない・・・



 とても重く感じた
            ひと皿のトマトパスタ





あの時のパスタの味よりも

    私の中に残っている感覚


あの時感じた
 主人の作ったパスタに対する感覚…


なんとも言えない
胸の詰まるような感覚…

  今でもあの光景を頭に描くと
  私の中に湧いてくる感覚・・・



ひとつ ひとつ・・・
     何気なく過ぎてく光景

その中で過ごしながら、

   『これで最後かもしれない』

             という思いにのみ込まれ…


          『そんなことない』

という心の願いで必死に抵抗した




   どうして
   私達がこんなことになってるの…


   なんで主人が
   こんな思いしなきゃいけないの…


そんな取り留めのない思いが
何度も浮かんでいた

         主人と娘と私と・・・

      会話をしている時にも、
        ふざけあってる時でも、

何度も何度も…浮かんできていた





       外泊許可 最終日
できるだけゆっくり過ごして…
主人の希望で、
夕飯は
   焼肉屋さんに行く事になっていた





車椅子を押して入っていく店内

テーブルを挟んで主人と向かい合わせ
私の隣に娘が座り…


こちょこちょとオーダーをすると、

主人が言った

      「お前 ビール飲めよ」


        「いや、いいよ」


結婚前から2人でよく飲んでたけど、
主人は 全く飲めなくなった…


     「俺の分もビール飲めよ」


主人らしい進め方で
もう一度私にこう言った


      「じゃ、1杯…」



運ばれてきたビールをひと口・・・
それを主人がじっと見ていた

      「上手いか?」

        「うん」

そう答えたけど

久しぶりに飲んだから…とか
そんな理由じゃなく、

主人と一緒にいて
一人で飲んでるビールは

ホントはちっとも美味しくなかった




主人はいつもより頑張って食べた
私は娘と笑って食べ続けた


お腹も気持ちもいっぱいだったけど
笑って食べ続けた…







少しずつ近づく
      主人が病室へ行く時間・・・





食事を終えて
ゆっくり散歩がてら
病院へ向かう




 



人気のない病院の1階ロビー

昼間は
全ての科の受付や会計のあるフロア

今は最低限の明かりだけで薄暗い場所




幾つも並んだその中のソファーに
主人と娘と私は座り…


  
 4歳の娘は
 騒ぎもせず、遊びもせず、


主人と一緒に 静かに
               ただ座っていた…





     「楽しかったな」

      
     「もっと食べなきゃダメだぞ」


    「ママの言うこと
            ちゃんと聞くんだぞ」




主人が
        話すひと言 ひと言・・・

 静かに聞きながら
    主人の眼を見て そのたびに頷く娘









      
        時間だな・・・




        俺 部屋まで戻れるから、

        お前達タクシーまで見送る…





主人はそう言って
             ゆっくり立ち上がった


私は荷物をまとめ、

娘と一緒に



主人と病院の入り口へ向かった





 
夜9時になろうという時間

年明けのこんな時間は
人通りも車通りもほとんどなく、
辺りは真っ暗で静まり返っていた



病院入り口に
必ず数台止まっているタクシー


その1台に
娘と乗り込む



入り口の蛍光灯に照らされた主人


私達に向かって手を振り続け、




娘と私は
窓ガラスにへばりつき
手を振り続けた







車が病院から離れ、
主人の姿が見えなくなって…



私は席に座り直し、

     「パパに後で電話しようね」




 そう声をかけつつ
            ふと娘を見ると




   涙をポロポロ流していた

   本当にポロポロと流れてくる涙…



   泣きながら 娘は


      「パパ・・・パパ・・・」


そう 言い続けていた





今までワガママ言ったりする事なく
主人が入院してからは、
バタバタな私に
一生懸命 ついてきてくれて…



外泊許可の4日間

パパとずっと一緒にすごし、
  いっぱい遊んで
  いっぱい笑って

          パパと一緒に・・・





別れた途端
タクシーの中で
         泣き叫ぶでもなく、
         騒ぐでもなく、
静かに涙を流し
        パパと呼び続ける娘・・・





                  RRRRR・・・



そんな時 携帯が鳴った





              主人からだった




私はスグそのまま状況を伝え、

娘と電話を代わった





携帯を手に
娘は何度も何度も頷きながら
          「うん。うん…」

あの何とも言えない表情が、
見ているこっちまで泣けるあの顔が、

みるみる変わって

穏やかな娘の顔になっていった





時おり洩れ聞こえてくる
主人の優しい声



          パパ・・・



娘の大好きなパパ

怒ると怖いパパ

一緒に遊んでくれるパパ



 

あの時の

娘のあの涙…あの顔…

             ずっと忘れられない





 

そんな娘は もうじき17歳



主人の記憶は
鮮明に覚えてるとこと、
ボヤけてきてるとこが…



ある日 こんな事を言っていた…

   「その頃のパパの顔
          ハッキリ浮かばないの。
               ただ太い足は覚えてる。」


あの頃・・・
まだ小さかった娘は
ベッドの高さくらいの視界で、
寝てる主人の浮腫んだ足の記憶が
鮮明に残っているらしい・・・





それと、
主人が元気な頃の日曜日。
天気のいい日は音楽をバリバリかけて
主人と私は洗濯や掃除をしていた…

その光景も
音楽と共に強烈に残っているらしい






外泊許可 4日間・・・
       こうして過ぎていきました





外泊許可へ向けて、
めいいっぱい気力体力を集中した主人

そこから
目に見えて弱っていきました…





その話はまた・・・




みなさんが
 笑いのある時間照れ
  できるだけ多く過ごせますようにキラキラ