絵を描くことが好きになったきっかけは、たぶん従兄の影響。
子どもの頃から絵に惹かれる気持ちはずっとあって、
「イラスト」というものが、モノを引き立てる力を持つと初めて意識したのは――
鈴木英人が描いた、山下達郎のレコードジャケットでした。
乾いた都会的なサウンドと、あの鮮やかで硬質なイラスト。
イメージと音楽が完全にリンクしていて、
もはや私にとっては**山下達郎と鈴木英人は“ひとつのアーティスト”**という感覚でした。
その後も、わたせせいぞうの色彩感覚や、江口寿の異色なイラストにも惹かれ、
気づけばイラスト集を集めるように。
そして、いつの頃からか、**ミュシャ(Alphonse Mucha)**の作品が
静かに、そして確かに心に入り込んできました。
最初から強烈な衝撃があったわけではなく、
美術館や本の中でたまたま目にしたミュシャのイラストが、
じわじわと私の中に浸透し、蓄積されていった感じです。
今では、我が家の玄関にはミュシャのリトグラフ3点を飾っています。
どれも代表作ではありますが、実は印刷された工房によって色味や雰囲気が変わるのが面白いところ。
両サイドの「夢想」と「ゾディアック」はミュシャ財団の安定感あるもの。
でも、真ん中の「モナコ・モンテカルロ」はフランスの工房で刷られた古いもので、
色が落ち着いていて、個人的にはとても気に入っています。
近くでミュシャ展があると聞けば、必ず足を運ぶのですが、
ここ数年で圧巻だったのは、2023年に北九州市立美術館で開催された展示。
あのOGATAコレクションのボリュームと密度には本当に感動しました。
(ちなみに翌年の熊本での展覧会は、ちょっと物足りなかったです…)
ミュシャというと「アール・ヌーヴォーの画家」として有名ですが、
サラ・ベルナールとの出会いから始まり、
商業の世界で花開いたその線と構成美、装飾性に、今も惹かれ続けています。
私の中では、やっぱりイラストレーターとしてのミュシャが唯一無二。
また近くでミュシャ展が開催されるのを、今か今かと楽しみにしています。

