20代のある日、東京・品川に住んでいた私は「駐車場代が高すぎる!」という理由から、車をやめていいバイクに乗ろうと決意しました。
目指したのは、当時バイクの聖地だった上野。
CB750FかZ750RSあたりを探しに、バイクパーツショップの大手「コーリン」へ。
そこで目にしたのが、Harley-Davidson FXS(1981年製)。
店頭に入ったばかりで整備待ちの状態にもかかわらず、その姿に一目ぼれ。
売値も決まっていないのにその場で金額交渉し、ローン契約へ直行!
……気づけば予算の3倍。完全に一大決心でした。
納車はその1週間後。
予定も立てずにそのまま東北道を北上開始。
ところが、走り出して30メートルで心の声が。
「……なんでこんなクソバイク買ってしまったんだ」
車体の重さ、クセのある操作性、未知の鼓動。完全に後悔モード。
でも、高速をただ走り続けているうちに――
エンジンの鼓動が、拳で突き上げてくるような力強さに変わっていく。
それが体中に響きわたり、気がつけば鳥肌が立つほどの感動へ。
この瞬間から、私はこのバイクにぞっこんになってしまいました。
途中、栃木あたりでレギュレータ故障によりライトが消えるトラブル発生。
夜が明けるまでサービスエリアで過ごし、明るくなってから再び上野へUターン。
まさに試練の納車初日でした(笑)
いまこのFXSは車検切れでお休み中ですが、いまだ手放せない1台。
毎朝、出勤前に目にするたび、あのときの鼓動を思い出します。
ちなみに現在の“心の健康バイク”はFZR1000。
ヨーロッパからの逆輸入車で、当時「世界最速」といわれた名車です。
でも、やっぱり私のバイク乗りとしてのスピリッツは――あの日、上野で出会ったあのハーレーなんです。
