須賀さんの本のなかで、幼いころに心を通わせていた友人からの手紙について書かれていて、「むかしのままのまるっこい書体」「こころのこもったそのことばよりも、なによりも、私は彼女の書体がなつかしかった」とあった。
誰かによって書かれた文字というのは、書かれてそれでお終いになるのでなく、それ自体が独り歩きするわけでもなく、それでいて、何かしらその人自身の影を引きずっているような、なまなましさがある。
須賀さんの幼かったころにくらべて、今は、手紙を書くなんて、あまりしなくなった。私はじぶんが大切に思っている人たちが、どんな字を書くのか、ほとんど、知らない。
