5日は海老名駅頭で行われた浅尾慶一郎元参院議員の街頭活動に参加し、ビラを配りました。

 

 

 さて、厚生労働省がこのほど、人口動態統計月報年計(概数)を公表しました。報道によると、昨年生まれた日本人の出生数は81万人で、1人の女性が産む子供の数(合計特殊出生率)は1.30だったということです。いずれも6年連続のダウンです。

 

 4月に出版された『世界少子化考』(毎日新聞出版)を先月、読みました。同社の取材班が韓国、中国、フランス、イスラエル、米国、ハンガリー、フィンランドの7カ国の現地をルポして概説したうえで、日本の今後のあり方を考える素材を提供するといった内容です。とてもためになったので、ご紹介します。

 

 

 同書を通底する問題意識は「子供が増えれば幸せなのか。幸せなら少子化でも構わない」です。この点については、個人的には異論があります。というのは、少子化を国全体として考えると、経済低迷や社会保障費増加の要因となるため、最終的には国民「負担」を増すことにつながり、個人個人に跳ね返ってくるからです。個人の幸福権を追求しつつも、少子化対策は両立させていかなければならないと私は考えます。

 

 少子化は先進国共通の課題です。発展途上の国では子供が労働力と期待され「子だくさん」になりますが、先進国となると個人の幸福や権利が追求されるようになり、子供をもうけるインセンティブが下がってきます。

 

 少子化対策で、これをすれば絶対成功するという方程式や特効薬はなさそうです。日本では、給付といった子育て支援ばかり焦点があたります。「カネが足りないから子供を産まない。だから給付を増やせ」という世論も強いようです。それは一面の理ではありますし、子育て関係の支出は増やすべきでしょう。ですが、根本的には「子育ては幸せにつながる」といった価値観を共有していくことが重要だと考えます。

 

 私が気になる点は、子育てがマイナスイメージで捉えられることです。子育ての「負担」という言葉がありますが、その裏には「押し付けられる」といった負のニュアンスが含まれています。これは、中立的な表現に置き換えた方が良いのではないでしょうか。

 

 たとえば、一般的な意味での「子育ての負担軽減」は「子育て支援」と言い換えることができます。これは広く用いられています。「子育ての経済的負担の軽減」は「家庭における子育て支出の軽減」と言っても主旨は変わりません。「子育て負担が女性に偏る」は「子育ての役割(役割分担)が女性に偏る」と言うことができます。まずは「負担」という考え方を払拭してみてはいかがでしょう。

 

 話がそれてしまいましたが、同書が示す各国の状況や対策はバラエティーに富んでいます。つまるところは、我が国の国情に合った施策を進めていくしかないのかなぁ。このように思います。以下、同書を読んで私が気になった点を要約してみます。

 

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 【韓国】合計特殊出生率は0.81(2021年)。世界最低水準です。背景には未婚化と晩婚化があります。「結婚は負担だ」と考える人の割合は男女とも過半数に達しています。学歴社会で教育費がかさむこともあるようです。興味深いのは、無償保育制を導入したものの出生数に影響はなかったことです。

 

 【中国】出生率は1.3(2020年)です。「一人っ子政策」が有名ですが現在では撤廃しており、3人目の出産も容認しています。中国でも未婚女性が増えて「独身経済」が成長しているということです。

 

 【フランス】出生率1.88(2018年)と先進国では高水準を誇ります。医療費や教育費無償化、家族手当などで子育てを支援しており、GDPに占める家族関係支出の割合は日本の倍近くあります。同性婚女性への生殖補助医療の適用を実現するなど、個人の選択を保障し多様な家族のあり方を認めています。

 

 【イスラエル】出生率は何と3.01(2019年)。OECDでトップです。背景には、人口の大半を占めるユダヤ人の親族の絆が強く「大家族主義」であることがあります。民族離散の歴史も影響しているようです。ITやハイテクが経済成長を牽引しており、将来不安がないことも強みです。ユダヤ教に基づく宗教的価値観もあって、諸外国と比べると異質な感じです。

 

 【米国】出生率は高いものの、右肩下がりの傾向にあります。生殖医療の費用を社員に補助する企業が増加しているということです。同書の記述は生殖医療に焦点を当てており、全体の状況については記していません。

 

 【ハンガリー】出生率が急速に低下しましたが、近年は回復傾向にあり1.49(2019年)となっています。①児童手当②産休・育休時の相当額の収入補償③減税④住宅購入の支援⑤出産ローン-といった「5つの柱」で、国の生き残りをかけて出生率向上に取り組んでいます。フランスとは対照的に反LGBTの施策をとっています。

 

 【フィンランド】出生率は減少傾向にあり、1.35(2019年)にとどまっています。子供を欲しがらない人が増えていることが主な理由です。父親の育児参加を促進するなど「男女格差が少ない国」として知られますが、それが出産数増加に寄与しているわけでもないようです。

 

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 同書はあとがきで「他国から何を学ぶのか。取り入れるべきものもあれば、そうでないものもある。少子化は女性の社会進出、権利獲得と深く結びついた現象であり、社会の進歩の成果という側面がある」と総括します。その通りだとは思いますが、女性活躍と少子化対策を両立させなければならないと考えます。

 

 参院選が迫っています。少子化問題はこれまで国政選挙の大きな争点にはなってきませんでした。ですが、先送りを続けるだけでは、座して死を待つのみになってしまいます。国民的議論が巻き起こることを期待しています。