大和市議会の3月定例会が23日に閉会しました。最終日の本会議では、顧問弁護士業務に関する付帯決議をつけて令和4年度当初予算を可決。病児保育についての陳情やワクチン接種の安全性確保を求める請願なども採択しました。最終日に先立つ15日の本会議では、ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議を全会一致で可決しました。

 

 さて、大和市政をめぐっては、コンビニエンスストアの公共トイレ化が大きく報じられています。24日にはツイッターのトレンドに入るなど注目を集めているようです。これは、市が市内のコンビニに対して公共トイレの協力店を募集し、応じた店舗に協力店のステッカーを貼ってもらうと同時に、トイレットペーパー(年間200ロール程度)を支給する取り組みです。市議会の一般質問でも、何人かが取り上げていましたが、反発するコンビニ経営者の投書などを踏まえ、批判が相次ぎました。

 

 

 コンビニは近年、公共サービスの担い手としての役割を増しています。大和市の場合、マイナンバーカードを利用すれば住民票の写しや印鑑登録証明書をマルチコピー機で取得できます。突発的な心停止から救命するための自動体外式除細動器(AED)や、消火栓などに接続して放水できる消火資機材(スタンドパイプ)も設置しています。コンビニの公共トイレ化は、こうした「官民連携」や「新しい公共」の取り組みの延長線上にあります。

 

 

 利害関係者ごとにメリットやデメリットを比較してみます。

 

 ユーザーである市民にとっては、公共トイレの機能が増えることで利便性が増します。トイレの利用だけでは申し訳ないので何らかの商品を買うといった心理的負担がなくなります。ただ、多くのコンビニではトイレを無料で貸してくれますから、協力店であろうとなかろうとあまり変わらないと見ることもできます。

 

 行政機関の市にとっては、公共トイレの設置には多額のコストがかかるため、コンビニに代替してもらえれば安上がりです。費用負担は、協力店に支給するトイレットペーパーの購入費程度に抑えることができます。

 

 民間事業者のコンビニにとっては、公共サービスの担い手になることで、CSR(企業の社会的責任)をアピールでき、イメージアップを図ることができます。一方、利用客が増えればトイレが汚くなり、清掃作業の手間暇が増える恐れもあります。一定数のトイレットペーパーは市から補助されるものの、水道料金はかさむはずです。コンビニ経営者からは「トイレ清掃は大変なのに負担が増える」との声も漏れ伝わります。万引きのリスクなど防犯面でも課題があるようです。

 

 売上の増減については微妙です。利用者の増加に伴い、ついでに商品を購入してくれるという期待感もあります。一方、「協力店」と銘打つことでトイレのみの利用に対する心理的負担がなくなりますから、トイレついでの購入を控える利用者は増える可能性があります。

 

 現時点で、公共トイレの協力店はわずか7店舗のみにとどまっています。今後の動向は分かりませんが、メリットよりデメリットの方が大きいと捉えるコンビニ経営者が多いのかもしれません。

 

 個人的には、今回の試み自体は良いものだと評価しています。国や地方の財政が逼迫するなか、行政のスリム化を進めるためには、民間に公共サービスの役割の一部を担ってもらう官民連携や「新しい公共」の取り組みは不可欠だからです。「公共はすべて行政機関が担うものだ」とする従来型の発想は転換した方がよいでしょう。

 

 先月、ある市民の方から「コンビニはスペースが広いのに、なぜ平屋建てが多いのか。もったいない。2階建てにして、その部分を小ホールや集会室などに活用できないか」といったご提案をいただきました。合理的な視点だと捉えましたし、市民に身近なコンビニを公共サービスの協力機関として積極的に利活用する取り組みはあって然るべきです。

 

 ただ、市の大々的なアピールと比して、公共トイレの協力店の数が少なく、見切り発車になってしまっているのも事実です。事前に協定を結ぶなり、根回しして協力店を増やすなり、何らかの工夫はできたのではないでしょうか。民間事業者が公共の役割を担う義務はないので、協力してもらうためには、より丁寧な進め方が求められる。そんなことを考えました。