自民党総裁選の投開票が29日行われ、新総裁に岸田文雄元外務大臣が選出されました。

 

 決戦投票での逆転を見据え、岸田さんと高市さんのどちらが1回目投票で2着になるかが注目されました。1回目投票では河野さんが優勢と目されていましたが、岸田さんが大善戦。1票差ながらも河野さんを振り切って1回目から首位に立ちました。決選投票では大差をつけ、他陣営に文句を言わせない綺麗な勝ち方となりました。困難な時代における日本の舵取り役は大変だろうと拝察しますが、新総裁の手腕に期待します。

 

 

 私は自民党員なので総裁選の有権者です。岸田さんか高市さんかで迷いましたが、最終的には岸田さんに投票しました。

 

 岸田さんと言えば、私が政治記者時代、わずか数カ月間でしたが担当させていただいたことがありました。もう10年前のことです。当時は民主党政権で、自民党は野党でした。岸田さんは「宏池会のエース」と目されており、与党と国会運営の駆け引きを繰り広げる党国対委員長を務めていました。

 

 党の事務方に対しても偉ぶることはなく、背筋をピンと伸ばして真摯に話を聞いていた姿が記憶に残っています。記者団への取材対応も丁寧で、虚勢を張らない方でした。この度の総裁選では「聞く力」を掲げていましたが、さもありなんと思いました。

 

 岸田さんが総裁、そして総理に就任するのは、個人的にはしっくりきます。歴史を紐解くと、戦国時代の覇者は信長、秀吉、家康という順番でした。仮に歴史の流れが繰り返すとすると、4人の総裁候補者のうち家康っぽいのが岸田さんです。

 

 「信長」的存在は安倍総理です。一部メディアをはじめ敵は多いものの、反対を押し切っても、安保法制をはじめ諸々の改革を進めてきました。「秀吉」的存在は菅総理です。農家の出身で、一世代でメキメキと頭角を現し、主君が突然倒れると手際の良さを発揮して天上人に上り詰めました。

 

 秀吉に続く「家康」的存在が岸田新総裁です。党内の多数派ではありませんが、宏池会という名門派閥を率いて独自の存在感を発揮してきました。温厚篤実な人柄や、忍従を重ね続けた姿も家康と重なります。

 

 戦国時代と今の「自民党戦国史」における最大の違いは、徳川政権になっても信長も秀吉も現役バリバリであるという点です。現代の「権現様」はゼロベースでイチから幕府を作り上げるわけではありません。積み上げの上で成り立っていますし、配慮しなければならない事柄も多いでしょうが、持ち前の安定感を発揮してバランスをとっていただけると期待しています。