政府は23日、新型コロナウイルス感染症をめぐり、東京都や大阪府、京都府、兵庫県に緊急事態宣言を発令しました。学校の一斉休校がなされなかった点には胸をなでおろしていますが、要請・命令に従わない場合に罰則がついたりしている点では昨年の第1次緊急事態宣言よりも強い措置となっています。大変遺憾であり残念です。

 

 大阪府の吉村洋文知事は23日、「個人に義務を課す法令が必要だ」と述べました。同日の国会審議では、日本維新の会の議員がロックダウン(都市封鎖)の必要性を訴え、国民的議論を要請しました。ですが、感染症対策や公衆衛生は差別や権力の濫用を生んできた歴史的経緯があります。全体主義を強化する懸念もあります。人流の抑制は人と人とが触れ合わないということであり、人間らしさを失わせることにもつながりかねません。私権制限を強化するロックダウンには慎重にも慎重であるべきです。

 

 ■東京都は発令の要件を満たしているのか?

 感染状況や指標を見る限り、関西圏に対する緊急事態宣言はやむを得ないでしょう。一方で、東京都については宣言を発令する基準の「ステージ4相当」ではないとの指摘があります。

 

 私は専門家ではありませんが、内閣官房のサイトで22日時点の指標を見る限り、7項目のうちステージ4に達しているのは「人口10万人あたり療養者数」「10万人当たり新規陽性者数(最近1週間)」「感染経路不明割合」の3項目だけです。その他の4項目は基準に届いていません。フライングのように見受けられます。

 

 そもそも、東京都の場合、24日時点で重症者数はわずか51人、入院患者は1779人です。これで医療崩壊が懸念されるのであれば、都内のコロナ体制はどれだけ脆弱なのでしょうか。

 

 ■緊急事態宣言の効果は?

 緊急事態宣言の効果も判然としません。大阪府が昨年6月に第1次宣言の効果を検証した際、複数の感染症学者は「データを見る限り関係なかった」「(効果は)なかった」と疑問視していました。当時、大阪府の吉村知事は「批判的検証をしないと国として間違った方向にいくのではないか」と語りました。

 

 第2次緊急事態宣言は今年1月8日に始まりましたが、東京都の場合、陽性者数のピーク(発症日ベース)は1月4日でした。宣言の効果が出るのは「10日から2週間」と俗に言われますが、効果が出始めたと考えられる1月18日にはピークの半数未満でした。つまり、陽性者数の推移を見る限り、第2次緊急事態宣言が発令される前から減少傾向にあり、宣言の効果で急減したとも見えません。もちろん、第2次宣言は第1次よりゆるやかな対策でした。その分、効果が薄かったとも考えられます。

 とはいえ、ドイツでは昨年11月からロックダウンを続けていますが、日本と同様に感染者数はいったん減少したものの、リバウンドして増えています。強硬な措置を続けたから収束するとも限りません。緊急事態宣言に効果がみられなければ、経済を停滞させるだけの単なる人災となります。これは大きな賭けとも言えるでしょう。

 

 緊急事態宣言にどこまで効果があるかは未知数です。少なくともその効果を丁寧にわかりやすく説明しないと、国民の理解を得にくいのではないでしょうか。

 

 ■神奈川県のまん防追加指定の理由

 神奈川県は24日、まん延防止等重点措置の対象区域で鎌倉、厚木、大和、海老名、座間、綾瀬の6市を追加すると発表しました。追加指定の期間は28日から5月11日までです。これまでに指定している政令指定都市3市と合わせると、県内9市が対象となります。私の地元の大和市は感染率が高く、いずれ指定されるだろうと推測していましたが、案の定でした。

 神奈川県のホームページに措置内容が記載されていますが、県外への移動や家族以外とのホームパーティーなどの自粛も求められています。

 

 神奈川県が公表する資料を見ると、6市が追加指定された理由は「新規感染者の数が多い。また、人口10万人あたりの感染者の割合が高く、既に措置区域に指定されている相模原市を上回る。飲食店数や駅別乗車人数から、感染拡大の可能性が危惧される」ということです。座間市は厳しい状況とはなっていませんが、「周辺市で感染者が増加していることや住民の生活圏を考慮する必要がある」と説明されています。

 

 ご参考までに、産経新聞が毎週土曜日に掲載している神奈川県の感染状況をもとに、絶対数だけでなく割合がわかる図表を作成してみました。

 まん防の対象に指定されていない自治体では、横須賀市は人口10万人当たり死者数が県内トップ、死亡率(死者数/感染者数)が2位、死者数(累計)で3位、感染者数(累計感染者数/人口)が5位となっています。愛川町は感染率(累計)と死者数(人口10万人あたり)がいずれも3位です。藤沢市も感染者数(累計)が4位、感染率(累計)が7位、死者数(人口10万人あたり)が8位と高く、要注意のようです。

 

 ■まん防で〝休業要請〟してよいのか

 まん延防止等重点措置は、緊急事態宣言とあまり違いはありませんが、事業者に対する休業要請はできません。ですが、神奈川県は、東京都と歩調を合わせる形で飲食店における酒類の提供禁止も求める方針です。都民の神奈川県への流入を防ぐ狙いがありますが、酒類を提供できなくなれば居酒屋は営業する意味がありません。居酒屋に事実上、休業を求めているのと同じです。

 

 賛否はともかく、緊急事態宣言が発令された東京都が休業要請を行うことは可能でしょう。ですが、神奈川県はコロナ対策の特別措置法上、休業要請は認められていません。これは事実上の違法ないし脱法行為ではないでしょうか。コロナ禍が発生して以降、「コロナ対策なら何でもあり」の世の中になっていますが、民主主義社会の基本原理である「法の支配」すら疑われる状況になっています。

 

 ■死者は減少も重症者は増加

 新型コロナウイルス感染症をめぐっては、感染者数ばかり着目されます。ただ、仮に罹患しても症状が軽微にとどまるのであればそこまで心配する必要もありません。最も重要なのは救命であり、死者や重症者の数だと考えます。

 

 東洋経済オンラインの全国データに基づき、こちらで月別推移をまとめると、以下のようになりました。死者数は今年1~2月をピークに大幅に減少しています。一方、重症者数は今年2月に大幅に減少しましたが、4月は大幅に増えています。これが変異株の影響なのかはわかりませんが、重症者はその後、死亡する可能性がありますから、入念な対応が必要です。

 とはいえ、我が国においては、コロナによる死者数が他の病気と比べて多いわけでもありません。厚労省の人口動態統計(確定数)によると、令和元年はがんで37万人超、肺炎で10万人近くがお亡くなりになっています。

 厚生労働省DMAT(災害派遣医療チーム)担当者らに対するインタビュー記事によると、札幌市内のこの冬のコロナ死者の4割強は「元々寝たきり」の方だったそうで、担当者は「コロナ死亡患者の多くは、元々状態がよくなくて最後の死因がたまたまコロナだった『最後の一滴死亡』に当たる」と指摘しています。

 

 新型コロナだけが過剰に騒がれ続けていることには、違和感を禁じ得ませんし、過剰に自粛すべきではありません。感染症対策を適切に行いながらも、早く元の日常に戻していくべきだと考えます。