13日夜、福島・宮城で震度6強を記録する大きな地震がありました。否が応でも10年前の東日本大震災を想起させます。首都圏でも大規模な停電が発生しており、身の安全にお気を付けください。

 

 さて、大きな地震が起きたばかりではありますが、指摘する方がほとんど見当たらないので、新型コロナウイルス感染症をめぐるコラムを7日に引き続いて連投します。

 

 改正新型インフルエンザ対策等特別措置法が13日から施行しました。報道されている通り、緊急事態宣言の発令時期に前後する「まん延防止等重点措置」が新たに定められ、都道府県知事は必要な措置を要請したり命令したりできるようになります。

 

 

 この問題をめぐっては7日付のブログで、特措法改正の政令案の問題点について指摘しました。この政令(「新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令」)は10日、公布され、同日付の官報で公表されました。

 

 

 政令案概要が示していなかった事柄としては、「まん延防止等重点措置」で求められる措置として「厚生労働大臣が定めて公示するもの」がしれっと加わったことです。つまり、今後は厚生労働大臣が罰則を可能とする措置を自由に追加できるようになります。大手メディアはスルーしているようですが、私は唖然としました。コロナ対策は「罰則強化の管理社会」という新しいステージに入ります。

 

 図表における赤字の部分が、政令案には書かれていなかったものの、政令で書き込まれた部分です。パブリックコメント(意見募集)は2月4日から7日までのわずか3日間でしたが、計3117件という多くの意見が寄せられました。その結果と政府の説明が過日、公表されました。

 

 政府の説明資料によると、厚生労働大臣が定める措置は現段階で「施設の換気」となっています。つまり、都道府県知事から施設換気の要請・命令があり、従わない事業者には罰則(20万円以下の過料)が科される可能性があります。

 

 一方、政令案で示されていた「マスク非着用者の入場禁止」については、「正当な理由がなく」という文言が加わりました。政府の説明資料では「(マスク着用やアルコール消毒について)アレルギーのためにできない方に対して措置を義務付けるものではありません。配慮が十分になされるよう周知に努めます」とあります。

 

 私は「子供が喘息持ちでマスクをすると発作が出る。強制はやめてほしい」というメールをいただいたことがありますが、マスク着用が間接的に義務化されることで、現場レベルではマスク着用をめぐるいさかいが生じる可能性があります。アレルギー所持者に配慮する周知の徹底が求められます。

 

 都道府県知事が恣意的に要請・命令を行う可能性も否めません。過去1年間の経過を踏まえると、都道府県知事が独自の緊急事態宣言を発して外出自粛などを要請するケースが相次いでおり、政府より知事の方が私権制限に積極的な傾向がありました。

 

 政府の説明資料では「都道府県知事は、特措法に基づき専門家の意見を聴かなければならないこととされており、恣意的な運用はなされない」と理解を求めています。

 

 ただ、入院拒否者などに懲役を科すとする感染症法改正案は専門家会議で反対・慎重意見が大多数だったにもかかわらず、その事実が明らかにされないまま閣議決定されました。結局、国会での修正協議で刑事罰は行政罰に変更されましたが、この前例から導き出される結論は、「専門家の意見を聴く」ことは恣意的な運用を防ぐ担保には必ずしもならないということです。

 

 

 この政令の問題は罰則対象の拡大にとどまりません。「まん延防止等重点措置」が適用されれば、かなり長期化する可能性もあります。

 

 政令では、実施すべき要件を定める第5条の3で「政令で定める要件は…重篤である症例の発生頻度がインフルエンザ(編注:鳥インフルエンザや新型インフルエンザを除く通常のインフルエンザ)にかかった場合に比して相当程度高いと認められることとする」と規定しています。

 

 つまり、新型コロナの重症化率が通常のインフルエンザ並みに低下しない限り、「まん延防止等重点措置」がとられる可能性があります。これは大変重要な要件ですが、既に公表されていた政令案概要には書いてありませんでした。最終的にはワクチンの効果や接種率次第となるのでしょうが、大変姑息な手続きだと言わざるを得ません。

 

 「まん延防止等重点措置」は、対象となる区域や期間を限定する仕組みですが、6カ月以内の対象期間は再延長を繰り返すことができます。

 

 第5条の3第2項では「集中的に実施すべき事態についての政令で定める要件は…当該都道府県において新型インフルエンザ等の感染が拡大するおそれがあると認められる場合であって、当該都道府県の区域において医療の提供に支障が生ずるおそれがあると認められるときに該当する」と明記しています。

 

 これだけでは具体的な基準がよく分かりませんが、政府の説明資料では「今後、基本的対処方針等において実効性が上がるために適切な範囲となるよう、できる限り分かりやすい形で示す」としています。今後の説明になるのでしょう。

 

 「まん延防止等重点措置」は緊急事態宣言に近い措置です。医療体制が適切に整備されないまま、過度な自粛や私権制限が続くとすれば、大変問題は大きいのではないでしょうか。我が国の現状は、感染症学者や医師会が支配する「疫国主義」に陥っている気がしてなりません。