緊急事態宣言の延長が決まりました。2月末の一斉休校から事実上始まった外出自粛も3カ月間にわたることになりそうです。このままでは経済や国民生活がボロボロになって「一億玉砕」となりかねないだけに、一刻も早い解除を願います。
 
 安倍晋三総理は4日の記者会見で「有効な治療法やワクチンが確立されるまで感染防止の取り組みに終わりはない。ある程度の長期戦を覚悟する必要がある」と強調。「命を守るためにこそコロナの時代の『新たな日常』を一日も早く作り上げなければならない」と述べました。
 
 政府の専門家会議は「新しい生活様式」として、感染拡大防止の実践例を事細かに例示しました。主な項目は以下の通りです。
 
○人との間隔はできるだけ2m(最低1m)空ける
○会話をする際は可能な限り真正面を避ける 
○「遊びにいくなら屋内より屋外」
○感染が流行している地域からの移動、感染が流行している地域への移動は控える
○展示品への接触は控えめに
○多人数での会食は避けて
○対面でなく横並びで座ろう
○料理に集中、おしゃべりは控えめに
○筋トレやヨガは自宅で動画を活用
 
 飲食業や接客業、観光業、エンタメ業、教育分野などは、引き続き大打撃となるでしょう。米国では、コロナ禍によりフィットネスクラブの「ゴールドジム」が経営破綻しました。
 
 この「新しい生活様式」に忠実に暮らしたら、人間らしくコミュニケーションを図る暮らしは望めません。「新しい生活様式」に期限は示されていませんが、仮に短期的なものではなく「アフターコロナ」の規範として定着すれば、結婚もできず子供も生まれません。我が国は持続可能なものとはならず、遅かれ早かれ滅亡します。
 
 さすがにコロナファーストだったワイドショーも、机と机が2m離れて授業するなど「新しい日常」の非現実性を指摘しはじめ、問題の大きさに気づき始めたようです。
 
 私としては、感染拡大を防止するためには、「三密回避」「咳エチケット」「手洗いの励行」「接触感染しがちな場所の消毒徹底」といったシンプルな対策で十分だと考えますし、それ以上は精神的後遺症も含めた悪影響が大きすぎると思います。
 
 
 さて、コロナ対策は究極の高齢者福祉、さらに言えば「シルバー民主主義」と言えます。日本(だけに限りませんが)において、新型コロナウイルスによってお亡くなりになった方の8割超は70歳以上です。労働力となる若手・中堅世代はほぼ死んでいませんから、守られる命は高齢者(や基礎疾患を抱える方々)が大半となります。
 
 一方、経済苦を理由に今後、多数発生する可能性がある自殺者(何としても防がなければなりませんが…)の大半は労働力人口に該当すると考えられます。政府は、感染拡大防止と国民生活を両立させるために、緊急経済対策を打ち出しています。ただ、「真水」で40兆円とも言われる緊急経済対策の財源は国債、つまり借金であり、将来世代に負担を先送りします。いずれは増税という形で降りかかってきます。

 コロナ弱者の身になって考えてみます。仮に「新しい生活様式」が長期化すると、緊急事態宣言が解除されても旅行にも行けませんし、大半の娯楽、直接的な対人コミュニケーションも難しいでしょう。今より緩くはなるものの、「他人と関わらず、自粛して禁欲的に生きることこそ美徳」という価値観は変わりません。
 
 「堅忍持久」の精神で好きなこともできずに長生きするより、仮にコロナに罹患して残りの人生が短くなるリスクを抱えたとしても、好きなことをして人生を全うしたいです。少なくとも私はそう考えます。
 
 ここら辺は人生観や死生観に関わってきますが、コロナ禍が深刻化するヨーロッパのスウェーデンは、外出自粛やロックダウン等の対策をとっていません。人口10万人あたりコロナで30人が死亡しており、諸外国より高率ですが…。
 
 コロナ撲滅を「聖戦」と捉える考え方を変えていかない限り、失われた日常は戻ってこないのではないでしょうか。今の日本は、実現不可能な「リスクゼロ」を目指して「最大不幸社会」に突入しています。私としては、リスクゼロはあきらめ、リスクを低減しつつ「最大多数の最大幸福」を目指す社会の構築を望みます。というか、数カ月前まではそうだったのです。