新型コロナウイルス感染症をめぐり、アメリカのニューヨーク州知事が「感染のピークを過ぎた」との見解を表明したと報じられています。同盟国の国民の一人として、胸をなでおろしています。
 
 3月末から4月上旬ごろ、「日本は2週間後、ニューヨークのようになるかも」といった報道が相次ぎました。ワイドショーやニュース番組でも、NYの医師が警告する報道を見かけました。たとえば、こんな感じです。
 
 
 でも、実際にはNYのようにはなりませんでした。日本では厳しいロックダウン措置がとられていないにもかかわらず…。
 
 「ここ1、2週間が瀬戸際」と言われた状態はずっと続き、「感染爆発 重大局面」と言われても、感染爆発しているようには見受けられません。もちろん、有名人で感染者が相次いでいますし、確認された数は氷山の一角だろうと理解します。ただ、日本経済新聞社のコロナ特設サイトを見ると、少なくとも確認された感染者数は1週間で倍増のペースにも達していません。
 
 東洋経済社のコロナ特集サイトが、とても分かりやすいです。公式データを集約してグラフィック化しています。データを見ると、冷静に見つめることができます。このグラフィックは転載自由なので、貼っておきます。
 

 

 年齢別の感染者数を見ると、現時点においては、最も危険とされる80歳代以上においても重症(ないし死亡)は2割に達していません。

 
 政府の某専門家は3月末、ツイッターで「戦争状態になっても冷静でいられる気持ちの準備をして下さい。見たくない未来が待っているかもしれません。これまで日本で見られなかったレベルの流行に成り得ます。助けてほしいのに病院が溢れる。そんな事態が十分に想定されます。近しい親族や好きな人の安全が守れない…」とつぶやきました。でも、3週間経った現在、そうなっていません。
 
 「人的接触の8割縮減」は、ヨーロッパ並みの感染力(基本再生産数2・5)で試算しているので、かなり高めの目標です。なので、安倍総理が政治判断として「最低でも7割、できれば8割」と目標を弱めたことは当然でしょう。某専門家は、私権制限に厳しい日本の法体系を見越し、国民の警戒感を緩めないようにあえて高目の目標を掲げ続けているのかもしれません。「何もしなければ死者40万人」という信じがたい試算も、警戒感を維持してもらうために国民を脅しているのだろうと推察します。
 
 ワイドショーは不安を煽り続けます。イタリアやスペインが深刻化したときには大々的に報じられても、ピークアウトしたことは伝えられません。作家の宮藤官九郎さんの感染は大きく報じられても、回復したとの報道は紙面の片隅です。
 
 現段階において、コロナ死者や重症者は急増していません。すると、ワイドショーは「軽症と分類されても、高熱が続く人もいる。軽症と呼んでいいのか」と煽ります。外出自粛が進んでくると、今度は「家庭内感染の恐れがある」…。
 
 「コロナは怖い」という報道をシャワーのように浴び続けているので、過剰に不安な気持ちを持つのも無理はありません。ただ、海外在住のWHO関係者が煽るように、コロナ死者が実際は10倍いる(にわかに信じがたいですが…)と仮定しても、現時点においてはインフルエンザ未満にとどまっています。
 
 決して人的接触の増加や3密の環境を薦めるわけではありません。外出自粛で人的接触を避けて感染を抑止するのは政府の方針ですし、医療崩壊は防がなければなりません。私自身、その努力は続けたいと思います。
 
 ただ、少なくとも日本においては、新型コロナウイルスは当初懸念されたような深刻なものとはなっていません。私はコロナそのものより、戦前のような「空気」が日本社会を支配し、政治をおかしくしていることの方に怖さを感じます。感染抑止策として「行動変容」が求められていますが、冷静に正しく恐れる「意識変容」が生まれない限り、この問題は収束しません。