新聞、テレビ等で大きく報じられていますが、韓国が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA、ジーソミア)を破棄する方針を表明しました。私が記者時代に防衛省を担当していたころ、日韓GSOMIAに関する取材をしたこともあっただけに、大変驚いたというか唖然としました。
 
 日韓両国で軍事情報を共有する基盤となるGSOMIAは本来、2012年6月に締結されるはずでしたが、李明博政権下の韓国が署名日当日にドタキャン。その後、朴槿恵政権末期の2016年11月にまとまった経緯があります。
 
 報道によると、今回、韓国が破棄に至った背景としては、①日本が韓国を輸出管理上のホワイト国から除外したことに対して「報復」した②文在寅政権の支持率がスキャンダルで低下する中で「政権浮揚」を図った③破棄を求める北朝鮮に対して「融和姿勢」をアピールした-など様々な見方が出ています。
 
 また、一般的に、為政者は前政権の功績を否定することで、自身の正当性を強調する傾向があります。ひょっとしたら、文政権は、朴政権の置き土産を潰すチャンスと捉えたのかもしれません。
 
 どんなに日韓関係が冷え込んでも、北朝鮮に対峙するためには日米韓3カ国の緊密な連携は不可欠です。米国がGSOMIA継続を求めていたこともあり、「さすがに破棄はないだろう」と見られていましたが、このような驚きの結末となりました。
 
 結果論で言えば、文政権は「親北・反日」のスタンスを貫いたと言えます。北朝鮮や中国には喜ばれるでしょうが、日米両国のみならず自由主義陣営の国々の信頼を失うことは必至です。安全保障面以外でも大きなマイナスとなるでしょう。
 
 日韓関係をめぐっては昨年12月、韓国海軍が日本の自衛隊機にレーダーを照射した事件もありました。もはや、文政権下の韓国は、同じ価値観を共有する友好国とは言えません。
 
 とはいえ、文政権のヒステリックな対応に日本も対抗していたら、両国の関係は修復不可能になります。こういう時だからこそ、日本としては、「大人の国」としてぐっとこらえて冷静に対処する「静観論」が必要だと思います。