日大アメフト選手の危険タックルが社会問題化しています。ケガをした関西学院大の選手は「被害者」、タックルをした日大選手は「加害者でありパワハラ被害者」、指示をした日大監督・コーチは「首謀者」という構図になると思います。
 
    22日の日大選手の記者会見を見ましたが、誠実で大変立派な対応でした。事実関係を明らかにしつつ、監督やコーチに対する批判をさせようとする誘導尋問にも応じず、恨み節はこぼしませんでした。自身が加害者であることの自覚を忘れていなかったからでしょう。スポーツマンらしい潔い態度でした。
 
    この選手を責める気にはなれません。「やる気が足りない」と練習から外される状況下で、「QB(クォーターバック)を潰せば試合に出してやる」「出来ないじゃ済まされない」と言われれば、弱い立場に置かれている身としては断りづらいでしょう。
 
    社会心理学者・ミルグラムが半世紀ほど前に行った有名な実験(「アイヒマン実験」)があります。クイズに誤答する度に罰として電気ショックを与え、その電圧を上げ続けるという設定ですが、被験者の65%は、致死量となる最大電圧まで電気ショックを上げ続けたそうです。人間は、自分のモラルを逸脱しても権威に服従して残酷な行為を行う危険性があるという教訓です。
 
    《逆らいにくい上の立場の者から不正を命じられたら、どう振る舞うべきなのか》
 
    小学では今春から、中学では来春から道徳が教科化されますが、この問題は「考える道徳」の生きた教材として最適でしょう。