最高裁が8日、厚木基地の騒音訴訟に関して判決を下しました。報道を見る限り、ポイントは、東京高裁が認めていた①自衛隊機の夜間・早朝の飛行差し止め②将来被害の賠償-をそれぞれ退けたということになります。私としては、東京高裁の判断には疑問を持っていましたし、落ち着くべきところに落ち着いたと捉えます。踏み込んだ内容でなかったからか、テレビ各局のニュースも淡々としていました。
 
 一般論として言えば、判決は上級審になるにつれて、国全体への影響を考慮する度合いが大きくなります。特に、最高裁は判決内容を確定させますから、地裁・高裁と違って自由裁量は大きくありません。仮に、最高裁が自衛隊機の飛行差し止めを認めた場合、国の防衛政策が揺るぎかねません。同種の訴訟は全国でほかに5件あるということですが、それに与える影響も踏まえて、最高裁としては慎重な判断をしたのだろうと推測します。
 
 報道によると、最高裁は「飛行の自主規制や防音工事助成などを総合的に考慮すれば、自衛隊機運航が著しく妥当性を欠くと認めるのは困難だ」と判断しました。一方で「住民は騒音により睡眠妨害や精神的苦痛を継続的に受けている」と指摘しており、騒音被害を軽視しているわけではありません。
 
 私が小中学生の頃、夜にテレビを見ていても騒音で聞こえないということはよくありました。当時と比べると、NLP(夜間離発着訓練)の硫黄島移転などに伴い、騒音は随分、軽減されたように感じます。
 
 騒音の主な要因である米軍空母艦載機の岩国基地(山口県)への移駐は、来年ごろがメドとなっています。騒音被害の軽減に向けた努力の必要性は何ら変わりませんし、艦載機移駐が先送りとならないよう声を挙げていかなければならないと思います。