巨大津波、防潮堤、電源喪失、メルトダウン、シーベルト、計画停電、SPEEDI、避難区域、ホットスポット、ベント、仮設住宅、高台移転、風評被害、吉田所長、除染、復興…。

 5年前の私は、首相官邸で官房長官の担当記者をしていました。巨大津波や爆発する福島第一原発の映像を見て、「日本は崩壊するのではないか」とも思いました。通常は一日2回の官房長官会見が昼夜を問わず開かれ、その内容が全国中継される…。まるで戦時下のような非常事態であったことを思い出します。

 11日夜のNHK番組「ニュースウォッチ9」で、国の震災遺構に指定された岩手県宮古市の「たろう観光ホテル」の現場を中継していました。ここは私も個人的に視察した場所です。


 平成25年8月、私は夏休みを利用して岩手県内を旅していました。私が当時ハマっていた連続ドラマ「あまちゃん」のロケ地を巡るのが主な目的でしたが、震災被害についても改めて見ておきたいと思い、このホテルに足を運んだのでした。奇しくも、NHK番組に出演していた防災ガイドの元田久美子さんに、私も「取材」していました。


 当時の自分のフェイスブック投稿から、一部を引用します。

「「「
 19日午前は東日本大震災の被災規模が大きかった宮古市の田老地区を見学しました。今は沿岸部は野原になっていますが、震災前は漁民らの住宅が多数ありました。田老地区での死亡・行方不明者は約180名。このうち、およそ8割は逃げなかったために亡くなったそうです。観光協会経由で申し込んだ震災の語り部さん曰く、「元々、旧田老町は防災に強い町で、防潮堤もあったので過信した。最初は『高さ3メートル』と放送されたので、大丈夫だと思ってしまったのだろう」ということでした。

 国道沿いにある6階建ての「たろう観光ホテル」は、津波の影響で2階まで壁がなくなり骨組みだけとなっていました。ここでは、同ホテルの社長が震災発生時に撮影したビデオが残されており、田老地区の住宅が津波に飲み込まれていく様子を目の当たりに…。自然の前に人間は無力なのだと改めて思い知らされました。
」」」

 当時のメモを振り返ると、元田さんは「(ホテルの近隣の)中学校では卒業式の練習をしていた。先生は土地勘がなく、『校庭に出ろ』と指示。しかし、用務員が『高台に逃げろ』と言って全員が難を逃れた。校庭にいたら死んでいた」と話していました。東日本大震災では、一命をとりとめた方々がいる一方、行方不明者を含めて約2万人の方々が大切な命を失っていました。

 自分の記憶を風化させないためにも、ここに改めて記しておきます。