31日は東京・国分寺市内のライブカフェに足を運び、リラン・バクレー監督のドキュメンタリー映画「ザ・思いやり」を観ました。この映画は大和市内では、共産党系団体の「大和市革新懇」が昨年11月15日に行った「ライブ&トーク」(大和市や市教委後援)のメーンイベントとして既に上映しています。大和市や市教委が事実上〝推奨〟している映画なので、市議会議員として内容を確認しておくのが目的です。

 映画の内容をザックリまとめれば、在日米軍は学校やらゴルフ場やら様々な面で厚遇を受けており、日本政府が負担している在日米軍駐留経費(いわゆる「思いやり予算」)は無駄だ(無駄が多い)という趣旨でした。監督が映画の中でインタビュー取材した内容は主に以下の通りです。

 【横須賀基地】
・呉東正彦弁護士(編注:「原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会」共同代表。社民、共産党系の支援を受けて2009年の横須賀市長選に無所属で立候補)
「原子力空母の母港化に日本の税金およそ100億円を使っている」

 【厚木基地】
・上田博之綾瀬市議(編注:共産党の議員)
「厚木基地の騒音被害で移転対象は1300件ある。補償金35億円はすべて日本の税金だ」

 【普天間飛行場などがある沖縄】
・前泊博盛・沖縄国際大教授(編注:元琉球新報論説委員長)
平成26年度の在日米軍関係経費の細目を提示しつつ、「(日本政府の予算のうち)8911億円が米軍駐留を支えていると見ることができる」

 ・普天間飛行場の前で訴えている日本山妙法寺の仏僧・鴨下祐一さん
「武力で平和は作れない。世界の軍隊は必要ないと訴えている」

 【在沖米海兵隊の一部が移転する予定の米グアム基地】
・先住民であるチャモロ人の男性
「(海兵隊移転に伴いグアム沖を)米軍が浚渫(しゅんせつ)する計画があるが、その場所は貝の生息地だ。自然環境も文化も奪う。許せない」(このシーンは別の女性が取材)

 こんなシーンが続いた後、バクレー監督が米・カリフォルニア州のハリウッドに行き、世界各国の通行人に対し、「日本の在日米軍駐留経費と同様に、米国が外国軍隊の駐留経費を支払うと仮定したら、どう思うか」を街頭インタビュー。外国人や日本人が、驚いたり批判したりするシーンが映し出されました。

 このほか、米軍がワゴン車を撃墜する凄惨なシーンや、芸人の松元ヒロ氏が「意味がないと思いませんか」と講談するシーンもありました。

 映画の最後には「もう少しでも米国防総省に我慢してもらえば、日本は米軍を支援しなくてよいのではないか」との大きな字幕が登場。東日本大震災の被災地である岩手県石巻市の仮設住宅に住む女性が「予算をこちらに向けてくれれば良いけどね」と訴え、取材対象者が書いたメッセージボード(「めざめよ。私たちの税金が人権侵害に使われている」など…)を何枚か示して締めくくりました。

 「思いやり予算」については色んな見解があろうかとは思います。ただ、この映画は、「日本が搾取されている」と反米軍感情を一方的に煽っているだけのように見受けられます。大きな抑止力を持つ在日米軍が日本の平和や安全に貢献し、日本の軍事力の一部を肩代わりしているという一般的な考え方は、まったく示されていませんでした。少なくとも、政治的中立性を保つべき行政の「後援」にふさわしい映画ではないとの感想を持ちました。

 なお、予告編はYOUTUBE で見ることができます。