憲法改正と言えば、第9条のお話がほとんどですが、今回の提言は、ある意味興味深い内容だと思います。

実は、日本人の大多数が、憲法の意味と言いますか、役割を理解していなのです。憲法は原則として国に対する縛りで、国家が権力を乱用しないようにするものなのです。つまり、国(政府)が守るべきが、憲法です。

ついこの間、ネットでからまれまして、その人も憲法を理解していないようでした。この人が言及したのは、「政教分離」に関してだったのですが、察するに、「政教分離だから、なんらかの宗教を信じている人は政治家になってはいけない」と思っているようでした。

もちろん、きちんと説明しました。返信はないのでわかりませんが、理解したと思っています。政教分離は、信教の自由とペアになっていて、国家は、宗教組織やそれらの価値に中立であることと、国民の信教に関しては自由を認めるという、国家に対しての提言であるということです。つまり、「宗教を信じていても政治家として立候補はできる」のです。しかし、多くの人は、その人のように、「宗教を信じている者は政治家になってはいけないって憲法に書いている!」と信じているのです。

前にも言いましたが、日本人の大部分は憲法を「日本人全員が守らないといけない法の最後の砦」と勘違いしているようです。

少し前置きが長くなりましたが、最近では、そういう日本人の憲法に対する考え方が裏目に出ていて、そのカギを握っているのは、第9条ではなく他の条文にあるということを説明していきたいと思います。

改正すべき部分とは、「国民の三大義務」です。そもそも憲法なので、国民の義務を制定すること自体、問題なのですが、確かに、戦後、日本の復興において、この三大義務は功を奏してきたと思います。「みんなで一生懸命、勉強して、働いて、税金を納めて、日本を良くしよう!」と一致団結できたのだと思います。

しかしながら、現在、ある程度豊かな社会を築きつつ、それでいながら、混沌な時代に、これらの三大義務は、まじめな日本国民にとっての足かせであり、国家の怠慢を許容する結果になっていないでしょうか。

そこで、国民の三大義務は、「国家」の三大義務に修正するのが適切だと、ここで提言します。

まず、教育の義務ですが、国家は、国民が自由で公正な教育が行えるようにし、かつ、受けられるようにしなければならない、ということです。それに反するような法律を作ることができないという、憲法上の要請を、ここで定めます。

ここ十数年、学校でのいじめと、それが引き起こす「自殺」が問題になっています。以前は、「憲法に教育の義務があるから、どんなことがあっても学校に行かないといけない」という議論が主流でしたが、今では、「自殺するくらいなら、学校に行かなくてもいい」という感じにもなってきています。

いじめの問題は、公立学校にとっても対処が難しいようで、なかなか解決できないでいるようです。問題の一つの原因は、教育が国民の義務という側面で、本来国民の権利を考えなければいけない憲法が、国民に押し付けてきたように思えます。したがって、義務だった部分を国民の権利として、また、逆に国家が義務として保証する形で法律を作っていったり、助成金を出す形で教育の質を保つ時代に来ているのではないでしょうか。

勤労の義務に関しても同様に、国民が公平・公正に勤労できるような法整備をすることや、既得権益を不公平に守るような制度や法律を定期的にチェックして修正するなど、国民の勤労に関する権利の平等性に基づいた法整備をすることが国家の義務になります。

国民の義務として制定されていた「納税の義務」は、国家を対象にする場合は「税の取り扱い方に対する国家の義務」になるでしょう。ここでは、政府は公平・公正に税を国民からいただかなければいけません。もちろん、複雑な税制は解消しないといけませんし、手続きの仕方がより簡単になるように努力するのも国家側の義務になります。

このようなことを言うと、「納税を義務にしないと払わない奴らが出てくるじゃないか!」という人がいますが、何度も言うように憲法は国民の言動や行動を制限したり、取り決めたりするものではありません。脱税をすれば、別の法律で処罰されるだけです。(もし、ある人に「憲法に、人のものを盗んじゃいけないって書いてないから盗みました」って言われて、あなたは納得するでしょうか?)

では、今一度、なぜこのように憲法を修正すべきかと言うと、現在、国民が厳しい環境の中で、まじめな日本人があまりにも疲弊しているからです。一方で、政治はなかなかスムーズにいかず、国民の負担ばかり増えています。

この改正によって、日本人はやる気が出てくるでしょうし、チャンスをつかむための選択肢も増えるでしょう。一方で、政治家や官僚は、国を良くするために3大義務を守っていけば、素晴らしい国家になっていくことが期待されます。

今一度、憲法の目的を理解していただいて、日本が再生するために、日本国民にとって活力が出るような憲法の改正も考えてよいのではないでしょうか。

 

 

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