この間、テレビのクイズで、「三角形の内角の和は?」という質問がありました。ふつうに考えれば、180度ですが、物理学や数学をやってきている者からすれば、ついつい、上げ足を取りたくなってしまいます。

 

「ふつう」というのは、我々の目の前にある紙の平面に三角形を描けば、どんな形であれ、それぞれの角を足し合わせば、180度になります。

 

正確な説明ではありませんが、「平面上」の幾何学をユークリッド幾何学と言います。例えば、「平行線が交わらない」というのも、この幾何学に含まれています。

 

では、「平面」ではない場合はどうなるのでしょうか?つまり、曲面上に図形を描いた場合は、ユークリッド幾何学で常識的なことが成り立ちません。このような幾何学を「非ユークリッド幾何学」と言います。

 

代表的なのが、球面上で考える幾何学です。つまり、地球の上に図を描いたケースを思い浮かべてみましょう。人間にとって、地球は大きな「平面」です。しかし、離れてみると曲面であることがわかります。

 

図でも示してありますが、北極点Aからスタートしましょう。下にまっすぐ向かって線を引き、赤道との交点Bで直角に方向を変えて、赤道沿いにまっすぐ線を引きます。距離は赤道で作る円の円周の4分の1、つまり、Cまでとします。そこで、また直角に方向を変え、北極に向かって真っすぐ線を引きます。

 

そうすると、地球の上に大きな三角形を描いたことになります。それぞれの角度を見ると、当然ですが、BとCの角は、それぞれ90度になります。今回の例では、4分の1周なので、角Aも90度になります。

 

この場合、三角形の内角の和は、270度になります。つまり、非ユークリッド幾何学における三角形の内角の和は、必ずしも180度にはならないことが分かるでしょう。

 

実は、この幾何学が、アインシュタインの一般相対性理論に使われています。つまり、星々の質量が空間を曲げて、非ユークリッド幾何学のようになります。その曲面上を光がまっすぐ進むのですが、曲面沿いなので上のようなことを考慮しなければなりません。

 

簡単に言えば、一般相対論は、空間の曲がり具合と重力を結び付けて力学を再構築したものです。

 

相対論と言えば、タイムマシンの話とか、SFのように聞こえますが、車などで使われているナビゲーションシステム(GPS)は、相対性理論がなければ実現しなかった技術です。