2026年10月25日
宛先:株式会社テレビ朝日 ご担当者様
『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』脚本家 中園ミホ様
発信:韓国の一視聴者より
件名:日本版『ドクターX』の韓国版リメイクにおける創作上の同一性および5・18光州事件関連の歴史的描写に関する正式な意見と検討のお願い
中園ミホ様、テレビ朝日関係者の皆様
突然のご連絡を失礼いたします。
私は、日本のテレビドラマ『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』を原作とする韓国版『닥터X: 하얀 마피아의 시대』の脚色方針について、原作の創作上の同一性と作品の国際的な信頼を守るという観点から、懸念をお伝えするとともに、正式な検討をお願いしたく、本書をお送りいたします。
まず、独創的な人物設定と緻密な物語、そして医療界の権威主義や組織的な不正に立ち向かう主人公の信念を通じて、長年にわたり多くの視聴者に愛されてきた『ドクターX』の制作陣に、深い敬意を表します。
本作が日本国内にとどまらず、海外でも関心を集めてきた背景には、独自のキャラクターと物語、そして作品全体を貫く一貫した創作理念があると考えます。
海外リメイクにおいて、現地の文化、制度、社会的現実を反映すること自体は自然なことです。しかし、現地化を理由に原作の本質を弱めたり、原作の中心的なテーマとの関連性が十分に説明されていない政治的・歴史的な物語を新たに付け加えたりすることまで、当然に正当化されるわけではありません。
私は、この点において、今回の韓国版の脚色方針を慎重に検討する必要があると考えております。
1.原作『ドクターX』の独自性と創作意図の尊重について
『ドクターX』の核心は、卓越した技術を持つ外科医・大門未知子が、医療界の権威主義や組織の不合理に立ち向かい、患者の命と医師としての信念を守り抜く姿にあります。
本作の魅力は、医療現場における権力構造や組織の利害、専門性と良心の葛藤を描きながらも、主人公の独立した精神と人間的な信念を一貫して貫いている点にあると考えます。
もちろん、リメイクは原作をそのまま複製する作業ではありません。現地の視聴者に合わせて人物や出来事を再構成し、その社会の現実を反映することも可能です。
しかし、原作の名称と知名度を活用する以上、その脚色においては、原作が持つ創作上の独自性と中心的なテーマが十分に尊重されなければなりません。
原作の本質から離れた政治的・歴史的なメッセージが新たに加えられれば、それは単なる現地化の範囲を超え、作品そのものの創作的方向性を変えてしまう可能性があります。
2.1980年の光州および5・18光州事件関連の物語を導入した理由について
今回の韓国版において、1980年の光州および5・18光州事件に関連する歴史的な物語が描かれたことについて、私は、その選択の必要性と作品全体における役割に疑問を抱いております。
私が問題としているのは、歴史的な出来事をドラマで取り上げること自体ではありません。
その歴史的素材が作品の中心的なテーマとどのような必然的関係を持つのか、人物や出来事の展開に本当に必要な選択だったのか、そして歴史的背景と表現上の責任が十分に考慮されていたのか、という点です。
『ドクターX』の中心的なテーマが医療界の不正、医師の専門性、患者に対する責任にあるのであれば、特定の歴史的事件を主要な物語に組み込む際には、その選択が原作のテーマとどのようにつながるのか、説得力のある説明が必要ではないでしょうか。
なぜ他の時代背景ではなく1980年の光州が選ばれたのか。なぜこの歴史的事件が本作の物語に不可欠だったのか。その決定によって、原作の中心的なメッセージはどのように発展したのか。
こうした点について、制作側から明確な説明がなされるべきだと考えます。
仮に、この選択が原作のテーマを発展させるために不可欠なものではなく、韓国版の制作陣が独自の社会的・政治的メッセージを伝えることを主な目的としていたのであれば、原作との関連性および脚色の妥当性について、より厳格な検討が必要です。
3.韓国社会における歴史的・政治的な敏感さと視聴者の受け止め方について
5・18光州事件は、現在の韓国社会においても、歴史的評価や政治的解釈をめぐる議論が続いている、非常に敏感な問題です。
歴史的事実についての公的な評価と、個々の論点や政治的解釈をめぐる議論は区別されるべきですが、このような歴史的素材が社会的に強い感情や反応を引き起こし得ることも、無視できない事実です。
したがって、このようなテーマを大衆向けドラマの物語に取り入れる際には、歴史的考証だけでなく、その素材が作品に本当に必要なのか、特定の解釈を一方的に伝えているという印象を与えないか、視聴者の関心が本来のテーマから政治的な論争へと移ってしまうおそれはないかについて、慎重に検討する必要があります。
国によって歴史的経験、社会的感情、政治的論争の背景は異なります。日本で制作された作品を韓国でリメイクする際に、韓国の歴史や社会の現実を反映できることは十分に理解しています。
しかし、現地化とは、その社会が抱える敏感な政治的・歴史的問題を、必然性の検討なしに原作へ持ち込むことを意味するものではありません。
むしろ、歴史的に敏感な素材を導入するのであれば、その素材が作品の本質にどれほど貢献するのか、また、表現の均衡と責任がどのように確保されているのかについて、より高い水準の配慮が求められるはずです。
今回の脚色が韓国社会の多様な視聴者の受け止め方を十分に考慮したものだったのか、また、原作本来の魅力を保ちながら、不必要な政治的偏向をめぐる論争を避ける方法はなかったのかについて、疑問を抱いております。
このような選択について十分な説明がなされなければ、作品に対する批判は単なる好みの違いを超え、制作側の創作方針や公平性に対する疑問へと発展する可能性があります。
さらに、不必要な社会的対立を招き、原作そのものへの信頼を損なう結果にもつながりかねません。
4.原作関連権利者による検討および脚色管理の手続きについて
『ドクターX』は、原作の制作陣および関係者が長年にわた力築き上げてきた作品です。海外リメイクは原作の価値を新たな文化圏へ伝える機会であると同時に、その名声と独自性を維持する責任を伴うものでもあります。
そこで、テレビ朝日および原作関連権利者の皆様に、以下の点について正式にお尋ねいたします。
1) 韓国版において、1980年の光州および5・18光州事件関連の物語を導入した創作上・物語上の根拠は何でしょうか。
2) このような歴史的素材の導入や、原作の主要な設定から離れる変更について、原作関連権利者またはテレビ朝日による事前の検討や協議は行われたのでしょうか。
3) 原作の中心的なテーマと創作上の独自性を維持しながら海外リメイクを進めるための審査基準や管理手続きは設けられているのでしょうか。
4) 今後、原作の独自性に重大な影響を及ぼす脚色が行われる場合、原作の創作意図と名声を保護するために、どのような検討手続きを適用されるのでしょうか。
私は、実際の契約内容を確認していないため、今回の脚色が契約違反に当たると断定するものではありません。
しかし、原作の主要な物語や創作上の方向性に相当な変更が加えられたのであれば、その変更がどのような基準と手続きに基づいて行われたのかを確認することは、正当な問題提起であると考えます。
5.原作の名声と創作上の独立性を守るための検討のお願い
文化コンテンツの国際的な交流は、異なる国や社会への理解を深める重要な役割を果たします。
しかし、その過程で原作の独自の価値が別個の政治的メッセージを伝える手段として受け取られたり、現地版独自の意図が原作の本質よりも前面に出たりすれば、原作を信頼してきた視聴者に失望を与える可能性があります。
私は、『ドクターX』が日本で長年にわたり築いてきた創作的遺産と国際的な評価が、今後も尊重されることを願っています。それは原作者や放送局だけのものではなく、作品を信頼し、長く見守ってきた視聴者にとっても大切な価値です。
つきましては、テレビ朝日および原作関連権利者の皆様に、今回の韓国版の脚色方針、とりわけ5・18光州事件関連の物語を導入した背景と、原作の中心的なテーマとの関係について、正式な検討をお願い申し上げます。
また、当該の物語が原作の創作的方向性とどのような関係を持つのか、原作関連権利者による検討がどのように行われたのかについて、可能な範囲で公式な説明をいただければ幸いです。
本書は、特定の政治的見解を押し付けたり、歴史的事件についての議論を禁じたりすることを目的としたものではありません。
原作を基盤とする作品において、その独自の創作的同一性を尊重し、社会的に敏感な素材を導入する際には、その必要性と責任を十分に考慮すべきである、という原則に基づく要請です。
本意見を単なる政治的反応や感情的な批判としてではなく、原作の創作的遺産と国際的な信頼を守るための真摯な意見としてご検討いただければ幸いです。
貴社の公式な見解および本件に関する検討の有無について、ご回答を賜りますようお願い申し上げます。
敬具