相続問題に役立つ情報~トラブル解決に向けて~

相続問題に役立つ情報~トラブル解決に向けて~

高知県四万十市中村の藤田司法書士事務所が書いています。
借金(債務整理、過払い)・相続・未払い給与残業代・家賃未払い・消費者その他の
問題で困っている方の解決に日々努めています。
藤田司法書士事務所ホームページ http://www.hf-j.net

Amebaでブログを始めよう!

みなさん こんにちは

 

当事務所で相談の多い相続に関するテーマを取り上げ、解説しています。

 

遺言は「絶対」なのか?相続人が変更することはできないのか?

 

遺言書に記載の内容が「自分にとって利益とある」相続人であれば遺言書に「異議なし」

「自分にとって不利益となる内容」である場合の相続人にとっては「異議あり」といいたいところでしょう。

 

原則、遺言書の内容を相続人の一部が変更したり取り消したりすることはできません。

しかし、遺言書の内容を変更することは「どのような事柄であれ絶対無効だ」ということではありません。

 

第4回でもお話しましたが、民法に規定する「遺留分」の規定と相反する内容については、遺留分の権利のある相続人が自己の権利を主張することができます。

 

 

 

Q 父が死亡しました

相続人は母(B子)と私(A)と妹(C子)です。

父の遺言には、「遺産は、妻B子が6/8、Aがゼロ、C子が2/8相続するものとする」と記載されていました。

遺言の指定分と異なる相続分にすることはできないのでしょうか?

 

遺言で指定された相続分については原則守らなければなりません。

しかし、例外もあります。

Aさんは遺留分の主張をすることもできます

(遺留分については詳しくは第4回をご覧下さい)

Aさんの遺留分は遺産全部の1/8なので遺留分減殺請求権を行使することが可能です。

 

遺留分とは関係なく相続人全員(B子、A,C子)が合意すれば遺言の内容と異なる分割協議は有効でしょうか?

 

状況を分けて考える必要があります。

 

1、  相続人以外の者に遺産を与える内容が遺言書にある場合

 

遺言により遺言者の財産を与えることを「遺贈」といいます。

また、遺贈を受ける人のことを「受遺者」といいます。受遺者は相続人以外の人でもなることができます。

遺言書で例えば「相続財産の1/2は(相続人でない)Dに与える。残りの1/2は、A,B,Cに均等に相続させる」という内容の遺言書があった場合、A,B,Cは例え全員で合意してもDの同意を得ずに遺産全部について遺産分割を行うことはできません。

相続人A,B,Cは自分の遺留分が侵された場合にのみ、遺留分減殺請求権を行使できますが、

それ以外の場合は、「法的に有効な異議」を主張できません。

 

2、 遺言執行者が遺言で指定され、又は家庭裁判所で選任されている場合の遺言書の内容と異なる遺産分割(相続人以外の者に遺贈しない場合)

 

 遺言執行者とは「相続財産の管理その他遺言の執行(遺言の内容を実現する行為)に必要な一切の行為をする権利義務を有する」と民法で定められている者で(民法1012条)相続人の代理人とみなされます(民法1015条)

遺言者は遺言で特定の者を遺言執行者として指定したり、第三者に指定を委託することができます。

(民法1006条)

遺言者が遺言の内容を実行することを確実にしたい場合や遺言の内容を実行する際に必要な場合に指定します。

「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。」(民法1013条)と定められています。

よって、遺言執行者が選任、・就任している場合に遺言執行者の同意を得ずに相続人が遺産を処分することは絶対的に無効であるとされます。(大審院昭和5年6月16日判決)

遺言執行者の同意が無い場合、相続人全員の同意がある場合の遺産分割協議に有効性について考えます。

民法の条文に照らして考えると、同協議は無効のように思われます。

しかし、私的自治の原則の観点から、遺言によって取得した財産を相続人間で贈与したり交換したりすることを禁止することはできません

遺言執行者の同意を得ずになされた相続人全員の合意がある処分行為を有効とする下級審の判例があります。(平成13年6月28日東京地裁判決)

 

無効であるとする説もあります。

 

一般的には遺言執行者の同意又は承諾を得て、遺言内容と異なる遺産分割協議の実行を行っている例が多いようです。

 

遺言書に「相続人以外の第3者」に遺贈する内容がある場合、その第3者(受遺者)の同意がなければ、例え

遺言執行者の同意があっても、相続人全員で遺産全部の分割について合意した内容は有効とはなりません。

 

3、    遺言の内容が相続人以外の第3者を含まない内容であり、遺言執行者の指定も無い場合

 

本質問Q&Aの事例の場合、相続人全員(B子、A,C子)が合意すれば遺言の内容と異なる分割協議は有効であると考えられています。

しかし、相続人のうち一人でも反対があり合意できない場合は協議自体が有効でないのでできません。

 

例えば、遺言の内容に係わらず、B子さんが1/2、Aさんが1/4、C子さんが1/4という遺言と異なる遺産分割も全員の合意があれば可能となります。

 

4 遺言書で遺言執行者の指定が無い場合

 

  遺言書で遺言執行者の指定されていないが、家庭裁判所で遺言執行者が選任された場合、選任される前に相続人が行った処分行為は有効です。(昭和39年3月6日最高裁判決) 

 

遺言執行者とは遺言の内容を実現する為に必要な行為や手続をする職務の行為者です。

 遺言執行者は相続開始後に財産目録を作成したり、預貯金や不動産の手続など遺言の内容を実現するのに必要な一切の行為をする権限があります。