ビートルズのラジオ番組といえば The Beatles Lover No.5 ザ・ビートルズ・ラバー・ナンバー・ファイブ
人気ラジオ番組が、読んで楽しめるテキスト版になりました。
ディープなファン目線、そしてサウンドメーカー目線でビートルズへの愛💖と共に楽曲を紹介していく人気ラジオ番組「The Beatles Lover No.5」。
杉田裕(JAYWALK)とサミー小川(メディアプロデューサー)がナビゲートします。
480回【2026年6月6日〜12日】の放送は、アルバム『ビートルズ・フォー・セール』(Beatles For Sale)の楽曲をご紹介します。
【サミー】先週に引き続いて大村亨さんをゲストにお迎えしています。
【亨】今週もよろしくお願いします。
【裕】楽しいお話をありがとうございます。
【サミー】大村さんはビートルズと日本に関する歴史研究の第一人者。新聞/雑誌/テレビ/ラジオの記事・番組をはじめ様々な情報を調査し、ビートルズと日本の関係を研究されています。主な著書に『「ビートルズと日本」熱狂の記録』『「ビートルズと日本」ブラウン管の記録』『「ビートルズ・ファン・クラブ」大全』などがあります。
【裕】まもなく新刊が出るそうですね。
【亨】『「ビートルズと日本」新聞が見た来日狂騒曲』という本が6月22日に発行される予定です。
【裕】僕が以前リリースしたアルバム『MOSO THE BEATLES』のジャケット中面の写真は、大村さんから提供していただいたものなんです。
【亨】その写真は、『「ビートルズ・ファン・クラブ」大全』を出した時に、当時のファンクラブの方から頂いた資料の中に入っていたものです。
【裕】大村さんはコレクターなんですか?
【亨】元々はコレクターでしたけど、本を書くようになってからは辞めてしまいました。
【サミー】ビートルズとの出会いは?
【亨】小学校6年生くらいの時に、イルカさんのラジオで「レット・イット・ビー」が流れたんです。それを聴いて好きになりました。1980年か81年くらいのことです。
【サミー】ジョンが亡くなった頃ですね。
【亨】ジョンが亡くなったのはニュースで見ましたけど、その時はまだファンではなかったと思います。
【裕】サミーさんや僕は第二世代ですけど、大村さんは第三世代って感じですね。
【サミー】大村さんは大学時代にはビートルマニアというサークルに入っていたんですよね。
【亨】その頃はバンドをやっていました。ベースを弾いてました。
【裕】今週は大村さんに「ビートルズ来日時に各学校で出された『ビートルズ禁止令』の真相」を伺っていきたいと思います。
【サミー】大村さんのお話は、番組後半の「今週のビートルズラバー」のコーナーでたっぷりと伺っていきたいと思いますが、その前に、いつものように楽曲を2曲ご紹介しましょう。
【裕】今週は4枚目のアルバム『ビートルズ・フォー・セール』のA面3曲目 「ベイビーズ・イン・ブラック」(Baby’s In Black)、4曲目「ロック・アンド・ロール・ミュージック」(Rock And Roll Music)をご紹介します。
【サミー】では担当する曲を「ビートルズじゃんけん」で決めましょう!「ビートルズじゃんけん」は、グーはジョン、チョキはポール、パーはジョージ、あいこの時はリンゴと言います。手の動きと口の動きを連動させるのが脳トレになりますよ!では、「最初はジョン」で始めるよ…。
オープニングテーマは杉田裕の「ビートルズなんて誰も知らない」
主旋律はどっち?「ベイビーズ・イン・ブラック」(Baby’s In Black)
【裕】武道館でも演奏しています。この曲は難しいと思うけど、ビートルズはよく演ったなと感心します。サウンド的にはテンポの速いワルツで、ジョンとポールのハモリが特徴的です。この曲は二人の共作ですよね。
【サミー】そう言われていますね。
【裕】1950年代から60年代に活躍したアメリカのエヴァリー・ブラザースの影響を受けてるのかな。
【サミー】なるほど。
【裕】全編ハーモニーで綺麗なメロディ。どっちが主旋律なのかわかりにくい。
【サミー】ビートルズあるあるですね。
【裕】ジョージのギター奏法も注目点で、ボリューム奏法を取り入れています。難しいフレーズを弾いてるなって思うんだけど、ボリューム奏法が反映されているところが分かりにくいというか…(笑)。ジョンがギターのボリュームを操作してサポートしていたそうですけど。
【サミー】微笑ましいシーンが目に浮かびます。
【裕】遅れ気味のプレイというのも微笑ましい(笑)。あと、アームを使っているって言うけど、たどたどしい感じ。
【サミー】この曲はアルバムのセッションの一曲目に取り上げています。自信曲だったんでしょうね。ひょっとするとシングルが視野に入っていたのかもしれない。
【裕】これからやろうって感じだったんだろうね。
【サミー】ライブの定番曲になっていて、ポールは気分を変えるためにこの曲を(セットリストに)入れたと語っています。杉田さんもライブの途中の気分や雰囲気を変えるために入れる曲ってある?
【裕】あります。自分もだけど、お客さんの気分も変えたいのでね。僕はこの曲をアルバム『THE BEATLES COVERS」でカバーしているんです。今度ライブで演ってみようかな。
オープニングコードを変えた「ロック・アンド・ロール・ミュージック」(Rock And Roll Music)
【サミー】日本公演のオープニング曲です。原曲はチャック・ベリーが57年9月にリリースしています。アルバム収録曲のレコーディング順では11曲目になります。
【裕】ふむふむ。
【サミー】10月18日は超大忙しの日で、7曲レコーディングしています。具体的には「カンサス・シティ/ヘイ・ヘイ・ヘイ・ヘイ」「ミスター・ムーンライト」「アイ・フィール・ファイン」「アイル・フォロー・ザ・サン」「みんないい娘」「ロック・アンド・ロール・ミュージック」「ワーズ・オブ・ラヴ」です。
【裕】そんなに!デビューアルバムみたいだね。カバー曲が多いから、お手のものだったのかな?
【サミー】この時期は忙しくて、新曲が間に合わなかったようですね。ジョンは『メロディ・メイカー』64年10月17日号のインタビューで「昔よく歌っていた曲を探している。LPに入れる曲が底をついてきたから。素材選びが厄介な問題になりつつあるよ」と語っています。
【裕】あれだけ忙しければ仕方がないですよ。
【サミー】チャックベリーの原曲はキーE♭でオープニングコードはE♭7。ビートルズはキーAでオープニングコードはE7。オープニングコードを変えているのが面白い。
【裕】5度のコードだね。
【サミー】途中からピアノの高音早弾きが入ってきますが、これはおそらくジョージ・マーティン。ジョンとポールがが連弾しているのにマーティンが加わっているのかもしれません。そして、途中でピアノ演奏が消えてなくなるんですが、左チャンネルで復活して「rocking that piano」で中央に戻っています。
【裕】ピアノが消えるところもあるけど、1分48秒から52秒くらいで、ギターも小さくなるんです。右側のギターがフッと下がっている。あれ、どうしたんだろうってなる。
【サミー】使えない何かがあったんでしょうかね。
【裕】それでも勢いで行っちゃってるのが面白い。
【サミー】いろいろありますけど、ジョンの歌の凄さはどうよ、と声を大にして言いたくなる。でも「ツイスト・アンド・シャウト」の頃と比べて高音はよく出るようになったけど、声が丸くなって尖り感がないように感じます。これを聴いた後「ノー・リプライ」を聴くと、彼の声がすごく優しくなっていることを実感できる。
大村亨さんにビートルズ来日時に各学校で出された『ビートルズ禁止令』の真相を訊く
【サミー】ゲストをお迎えしてビートルズ愛を語っていただく「今週のビートルズ・ラバー」のコーナーです。
【裕】今週は大村亨さんをお迎えして、各学校で出された『ビートルズ禁止令』について伺っていきます。
警察が組織をあげて動き出した
【裕】当時、ビートルズは不良のバンドみたいに思われていたのかな?
【亨】学校が厳しくてビートルズを観に行けなかったとかいう話を聞いたことがありました。今度出る本『「ビートルズと日本」新聞が見た来日狂騒曲』を書くために当時の新聞を見ていたんですけど、あれって学校が厳しかったのではなく、もっと上の組織から司令が出ていたことがわかったんです。
【サミー】え、そうなの。
【亨】国家権力の方から行くなと言われていた。
【サミー】当時の文部省から指示が出ていた?
【亨】警察です。新聞記事を丹念に見ていくと、そう書いてある。
【裕】へー、そうなんだ。
【亨】来日は4月くらいに決まったんですけど、まず最初に警察が動いた。これは雑踏警備です。事故が起きると大変ですからね。その時は警備部が動いています。それと並行して、少年非行防止を管轄する防犯部も動き始めています。
【サミー】なるほど。
【亨】そこから6月上旬くらいまでは警備を中心に動いています。ファンが暴れるのをなんとかしようと。6月下旬になると防犯部が本格的に動き出します。
【裕】来日直前ですね。
ビートルズは「エレキ=不良」の親玉だ
【亨】警視庁が補導体制の強化を指示しているんです。前年の65年にエレキブームがあって、その時に不良が問題になったんです。夜遅くまで遊んでいるとか、金銭を巻き上げる恐喝とか、シンナー遊びとか。エレキ=不良というイメージが出来上がっていたんですね。そしてビートルズはエレキの親玉、総帥だと。そういうのが来るんだから大変だ、不良がわんさか出てくるので閉じ込めろ、取り締まれということになって、6月20日に補導体制強化を指示します。その日に大阪と札幌からの家出少年が東京で見つかって警視庁に補導されました。それが問題視されて、警察庁が各県の教育委員会と私学連盟に対して、指導強化の指示を6月23日に出しました。この時に上京してはダメというようなことを指導しなさいと圧力をかけた。それを受けて教育委員会と私学連盟が各学校に落としているんです。来日の10日くらい前のことですね。
【裕】直前なんですね。
【サミー】チケットはすでに手元にある状態で、いきなりそんなことを言われてもねぇ。
【亨】指示を受けた学校は、額面通りビートルズ禁止としたところもあります。チケットを持っていたけど行けなかった人もいれば、学校の温情で行くことができた人もいた。
【サミー】あの時の会場周辺の映像を見ると、親御さんに付き添われて来た若いファンもいますよね。
【亨】田安門のところで「気をつけていってらっしゃい」って分かれる親子の映像がありますよね。
【裕】そうでしたね。
全面禁止もあれば、見て見ぬふりの温情も
【亨】今回は全国紙、スポーツ紙に加えて、全国の地方紙も調査しました。地方紙を見ると地域の動きがつぶさにわかる。
【裕】調べるのは大変だったでしょう。
【亨】面白かったですよ。
【サミー】県によって濃淡がありましたか?
【亨】もちろん。一番ヘビーだったのは福井県。県下全面禁止です。上京するなと。
【サミー】憲法違反と思われるような動きですね(笑)。
【裕】移動の自由がない(笑)。
【亨】なぜ警察がこういうことを言っていたかというと、当時の公安委員会に小汀利得という人がいたんです。彼は徹底的なエレキとビートルズ嫌いだったんです。あんなのは音楽じゃないって言っていました。だから、あの人が力を持っていて、強く影響を与えていたんだろうと思うんです。
【裕】なるほどね。
【亨】テレビでは頑固ジジイみたいなキャラで捉えられていたみたいですけど、実際はとんでもないことをやってくれていた。これは僕の見立てではあるんだけど、この小汀さんという人が力を持っていて、公安委員会を通じて国家権力を動かしていたように見て取れました。
【裕】ビートルズ側はチケット代を安く設定して、学生も来やすいように配慮していたのにね。
【亨】上から行くなと言われたけど、見て見ぬ振りで行っていいよとした話もあります。ホッとしますよね。
【サミー】ビートルズが好きな若い担任の先生もいたかもしれないよね。
【サミー】楽しいお話は尽きませんけど、大村さんに一曲選んでいただいて聴いてみたい。
【亨】日本公演ということで、テレビ放送で印象的な「ロック・アンド・ロール・ミュージック」の『アンソロジー』バージョンをお願いします。
【サミー】これは6月30日の日本公演の演奏です。
エンディングテーマは杉田裕の「絶望してる暇はない」





