以前、「オリックスVIPローンカード」のテレビCMについてコメントしましたが 、この話題、「きっこの日記」 でも取り上げられておりました。


あの記事をアップした時、


 こんな捻くれた見方をするのは俺くらいかな


と思ってましたが、同じような見方をする人がいてくれた、それも「きっこ」さんのような売れっ子ブロガーさんが取り上げていた事にちょっと安心しました。


もっとも、きっこさんも相当捻くれた人みたいですが。(^^;


ただ、さすがに超人気ブログを主催するだけあって、ものの見方、切り口が、私などには到底及ばない深いものがありますね。ご本人は「高卒のヘアメイク」と自己紹介されてますが、強烈な個性を持った人達(一流芸能人)相手の世界で鍛え抜かれた感性はさすがだと思います。


まじめな話、舞台とか、映像の世界のプロというのは本当に凄いですよ。リンクしたサイト ではこのCMの製作過程を見ることが出来ますが、たった30秒程度のCMの撮影に物凄く細かい作業が施されている事が分ります。ほとんど映らない机の上の小物類や、その配置、恐らくメモに書かれた伝言まで、それらしく再現してあるはずです。


以前、舞台の小道具さんの話を聞いたことがありますが、その方の話では、役者さんが芝居で使うマッチの柄まで精巧に再現するのだそうです。もちろん、客席からはマッチを使っていることは分っても、そのデザインまで分かるはずがありません。ある意味、マッチなら何だって良いはずなのに、やはりその時代のマッチを再現しなくてはいけないのだそうです。そうしないと、役者さんが役に入り込めないのだそうです。プロ中のプロに最高のパフォーマンスを期待するには、「どうせ客席からは見えない(映像には映らない)からいいや」では駄目なのでしょう。


実は、私には10年ほど前、自社CMの撮影現場に立ち会いに行って、そのまま出演しちゃった経験がありますが、映像のプロフェッショナル達のこだわりには本当に驚かされました。


当時私は基礎研究部門の研究員で、CMは創立○○年を迎えた当社の様々な挑戦を描くというもので、そのワンシーンに、1秒にも満たない一瞬ですが、私の研究テーマに関するカットが挿入される事になり、横浜の撮影所に立会いに行ったのです。


行ってまず驚いたのは、セットの中に私が普段仕事をしている研究室がそのまま再現されていた事です。実験台などは、水道の位置、ガスの配管までそのまま再現されているので、一瞬、


 あれ?いつ(研究室から)運び出したのかな?


と思ってしまったほどです。もちろん、全てハリボテです。そう言えば、数日前に撮影スタッフが何人か研究室の中を撮影したり、実験台を採寸したりしておりました。


さらに驚いたのは、私がサンプルを置くのに使っていたラックがあるのですが、このラックには各棚に植物を培養するための蛍光灯がぶら下がってます。この蛍光灯からの熱で上の棚に置いたサンプル(培養中の植物)が干からびてしまいますので、工事現場から拾ってきた断熱ボードの切れ端を敷いていたのですが、蛍光灯付きラックはもちろん、この断熱ボードまでちゃんと同じものが用意されてました。


 これ、研究所から持ってきたのですか?


と、スタッフの方に尋ねると、


 いいえ、同じものを探しましたよ。苦労しましたけどね。(笑)


と答えられ、驚きました。工事現場で拾ったものですから、私は商品名はもちろん、どこで売っているものかさえ知りません。それを、私が必要なサイズに切った後、培養室の片隅にほったらかしていた切れ端を手掛かりにちゃんと見つけてくるのですからそのこだわりは凄い。


撮影の立会いでは、リアリティを追求するためでしょうか、様々な実験室での実験風景を役者さん(修行中のアルバイトでしょう)たちが演じますが、その一挙手一投足にコメントを求められました。


そのシーンの一つに、培養器を手に取って状態を観察するシーンがありましたが、役者さんの培養器を手に取る仕草に違和感を覚えて(研究者ではないので当然ですが)、何気なく実演したのですが、それを見ていた監督さんが


 いいですね!このシーンはあなたが演って下さい。

 メイクさん、すぐに彼にメイクして。


という事になり、なんと、その場でメイクを施され、CMに出演する事になってしまいました。


入念なリハーサルを行い、最初に立つ位置にはチョークで印が付けられ、本番は十数回も同じ仕草を繰り返させられました。


結局、コンマ何秒かのカットに過ぎないのですが、1時間近くもかかってやっとOKをもらえました。


子供の頃、密かに役者に憧れてましたが、台詞すらないシーンの撮影でくたくたになってしまい、これにアクションや台詞が入ったらとても勤まらないと思い知らされました。


そのCMですが、私の演じたシーンはどうせボツにされるだろうと思っていたのに、ある日テレビを見ながら食事をしていたら、いきなり私が登場したのでびっくりしてしまいました。我ながら結構サマにはなっておりました。オンエアされると学生時代の同窓生やら親戚から問い合わせの電話がしばらく続きました。ほんの一瞬なのによく私だと判ったものです。


ま、今は窓際サラリーマンの私にも、輝いていた時代もあったというお話です。(^^;