雨の中行われた決勝トーナメント1回戦でしたが、善戦したものの残念ながら負けてしまいました。


同僚コーチのご厚意で、練習を休ませていただいたので、ナッキの応援のため、嫁とアッカと3人で球場に向かいました。


球場に入った時は前の試合がまだ続いており、うちのチームが戦った予選リーグをトップで抜けたCファイターズが、別のブロックで2位通過となったFイーグルスと対戦しておりました。回は4回、得点は4対0でFイーグルスがリード。スコアボードを見るとFイーグルスが1回から3回まで1点、2点、1点と小刻みに加点しており、相変わらずの試合巧者ぶりを発揮しているようです。


それでも、Cファイターズは良く守って4回はゼロに抑えましたが、5回、1死2、3塁からFイーグルスはお得意のスクイズ攻撃を仕掛けてきました。バントは一塁線に小フライとなりましたが、ピッチャーはあと一歩及びません。この打球をすぐに捕って一塁送球かと思ったのですが、Cファイターズバッテリーは打球に触らずファールを狙いました。ところが、雨で柔らかくなったグランドではもう一転がりが無く、ボールは無常にもライン上で止まってしまいました。この間、3塁ランナーばかりか2塁ランナーまで還り、決定的な2点を追加され、Cファイターズナインは完全に切れてしまいました。


こうなると上部大会の経験豊富で試合巧者のFイーグルスのやりたい放題です。足やバントを絡めた多彩な攻めに翻弄され、あれよと言う間に7点を追加され、終わってみれば11対0でFイーグルスの圧勝でした。


さて、今日最後の第4試合。いよいよ我がMエンジェルスがグランドに登場です。相手はさっきの試合で圧勝した、当市ナンバーワンチームであるFイーグルスを予選リーグで破ってブロック1位で通過し勢いに乗るNAコンドルス。


電光掲示板にはスターティングメンバーが発表されてます。そこには、9番ライトでナッキの名前もありました。うれしい反面、大丈夫だろうかという不安もあります。


試合は、立ち上がりの硬さがあったのでしょうか、初回内野陣のミスで1点を先制され、2回も似たような展開でさらに1点追加されました。打線は相手投手の球威に押され反撃の糸口さえ掴めません。


3回、ナッキの最初の打席が回ってきました。初球のストライクを見逃した後、2球目をセフティーバントに行きますが、これは高めの速球に空振り。完全に及び腰です。その後1球ボールを見逃して、4球目、真ん中低めのやや抜いた直球にあえなく空振り三振でした。完全に呑まれてます。この回もランナーは出しましたが無得点。


その裏、先頭バッターにいきなり右中間を抜かれホームラン。3点目を取られました。しかし、ピッチャーは切れる事無く、後続を討ち取り、この回も最小失点に抑えました。


4回。2死を取られ、バッターは5番のエース君。ここまでウチのチームにはまだヒットがありません。こりゃ冗談ではなくノーヒットノーランをやられちゃいそうな展開です。しかし、エースの意地でしょうか、センターオーバーの2塁打を放ちました。やれやれ、ノーヒットだけは免れました。しかし、牽制に引っかかって無得点。


その裏、四球で出したランナーに走られ、1死2塁から1-2塁間を抜かれます。ライトのナッキが処理し、バックホームしますが、間に合わず、4点目を失いました。回も終盤ですし、痛い失点です。その前からずっと思っていたのですが、ナッキの守備位置が深過ぎます。もっと前に出て来ないとライトゴロが取れません。今の打球もあと5メートル前で捕れれば、あるいはというタイミングでした。何度か、


 ナッキ~~っ!もっと前に来~~い!


と叫びかけましたが、ベンチの指示で守っている可能性もありますので、グッと我慢です。


5回。しぶとく内野安打で出た6番を7番が送って1死2塁。8番君の当りはサード前に弾んだやや難しいゴロでしたが、これをサードがお手玉してランナー1、3塁。この絶好の場面でナッキが打席に入りました。


私は、今日の出来から見てここは代打だろうと思っていたのですが、ナッキがそのまま打席に入ったので、


 まさか、スクイズをやらせるのでは?


と、不安になりました。どうしても1点欲しいこの場面、いつでも沈着冷静なT監督ならあり得ます。しかし、私が監督なら今日のナッキにスクイズのサインなど怖くて出せません。


1球目は見逃してストライク。相手投手はさっきの三振を覚えているのでしょう。完全にお客さん扱いで、スクイズを警戒している様子は微塵もありません。


 よし、やるなら次だな


ナッキは何やらサインを受け、ヘルメットの庇に手をやる「了解」の合図をして打席に入りました。私はグッと緊張して、バッターボックスのナッキを見つめます。


ピッチャーが投球モーションに入り、片足を上げた時、ナッキがサッとバントの構えに入りました。そして次の瞬間、高目の直球にやや仰け反りながらバントしました。打球はダイレクトに捕られる程ではありませんが小フライとなり、決して巧いバントとは言えませんでしたが、とにかく転がすことには成功しました。


 よっしゃーっ!


と、サードランナーに目を移すと、何とスタートしていません。


 えっ!サインミス?


相手キャッチャーは、サードランナーがスタートしていないことを確認すると、打球を処理したピッチャーにファースト送球を指示します。ピッチャーもサードランナーを牽制している余裕無しと判断したのか、ランナーには見向きもせず、ナッキを刺すためファーストに送球しました。


それを見たサードランナーが猛然とホームを衝きました。ディレードスクイズです。


 なるほど!その手があったか!流石はT監督。


ナッキは間一髪アウト。相手ファーストは必死にバックホームしますが、セーフ!1点を返しました。最低限の責任を果たしたナッキは笑顔で戻ってきます。


 ナッキ、ナイスバント!


応援席から声援が飛びます。親としてもホッと一息です。

そして、この間8番君もサードに進塁して、なお2死3塁のチャンスです。ここでバッターは1番のキャプテン君です。この子は足がありますからとにかく転がしさえすればチャンスはあります。もう1点取ればこの試合はまだ分かりません。


しかし、2-2からの5球目をインローに決められ、キャプテン君は見逃しの三振に仕留められました。応援席からはため息が漏れます。


 追い込まれているのに何で見逃すかなあ


傍で見ていたキャプテン君のお父さんは盛んにボヤきますが、あそこに決められたらまず手は出ません。相手投手が一枚上手でした。


この裏の相手の攻撃を、この試合初めてゼロに抑え、6回の攻撃を迎えました。打順は2番からの好打順でしたが、簡単に2死を取られてしまいます。しかし、4番君は粘って四球を選び、盗塁にも成功して2死2塁で先程ツーベースを放っているエース君の登場です。時間的に最終回となる可能性が高いので、スタンドも最後の声援を送ります。


この声援を背にエース君の放った打球は高く上がってレフトの頭上を襲いました。レフト完全に背走です。


 やった!抜けるぞ!


と、応援席は歓声に包まれましたが、相手レフト君、後ろ向きの苦しい体勢ながら、この打球を好捕しました。これには相手チームの応援席だけでなく、我がチームの応援席からも賞賛の拍手が起こりました。しかし、残念でした。ちょっと上がり過ぎました。


 残り時間7分ね


嫁がつぶやきます。


 うん、残念ながら次の回は無いだろうな


私は頷きましたが、さっさとスリーアウトを取ればまだチャンスはあります。しかし、先頭バッターを四球で歩かせてしまいました。う~~ん、痛いです。このランナーには走られ、無死2塁。時間はあと5分もありませんが、まだ1死も取れません。


 ここまでか


とあきらめかけましたが、野球の神様はまだナッキたちを見捨てていなかったようです。次打者が放った当りは痛烈なライナーでしたが、ショート真正面でした。2塁ランナーは当たりに釣り出されてしまい、ゲッツー!一気にツーアウトです。そして、次打者をセカンドゴロに仕留め、間一髪7回表に入れました。


さあ、流れはこっちのものです。応援にも熱が入りますが、6番、7番と簡単に討ち取られて2死ランナー無し。しかし、8番君は意地を見せて三遊間を抜きました。ところが、先程ファインプレーの相手レフトが打球を処理するや何とファーストに矢のようなワンバンスローです。


 危ない!


結果は間一髪セーフでしたが、打球を見ながらチンタラ走っていた8番君は肝を冷やしたでしょう。最後にレフトゴロではかっこ悪過ぎます。それにしても恐れ入った強肩です。


次はナッキですが、ここは当然代打です。4年生ながら勝負強いK君が出てきました。


 よし、頼もしい奴が出てきたぞ


スタンドは再び盛り上がります。K君は初球をいきなりセンター前にはじき返しました。ただ、当たりが強く、しかもセンターが前寄りに守ってましたので、ファーストランナーがセカンドで刺されるタイミングです。


 ヤバイ!


と、目を覆いかけましたが、センターが打球処理をあせって、横にはじいてくれました。ファーストランナーはこれを見てサードへ。打球に追いついたセンターがサードに送球しますが、セーフ!これを見たK君はセカンドを衝きます。サードがセカンド送球しますがこれもセーフ!この間にサードランナーが判断良く生還して2点目を挙げました。実は、今日の相手のNAコンドルスは予選リーグで2点以上取られたことがありません。応援席はもう押せ押せの大声援です。


ただ、


 この場面、まず走らせるのがセオリーだよな。

 センターがミスしなかったらランナーが刺されていたかも。


私は、T監督らしくないチグハグな采配だなと首を傾げました。ベンチも土壇場に来て上がっているのでしょうか。


打順は1番に帰ってキャプテン君です。ここで、セカンドランナーのK君、3盗まで成功させました。相手バッテリーは全く無警戒でした。まあ、この場面で普通なら3盗はあり得ませんから相手も相当驚いたのでしょう。


 やるなT監督。冷静でいながら結構ギャンブラーだな。


そして、やや動揺したピッチャーの球をキャプテン君はセンター前にはじき返しました。K君が還って3点目!あと1点です。さらにキャプテン君は完全にモーションを盗んで見事な盗塁も決め2死ながら一打同点の場面を迎えました。


打順は2番。5年生のサードH君。昨年まではBチームのキャプテンでした。今日も序盤浮き足立つ内野陣の中で、ただ1人堅実な守備でピンチを救ってきた頼りになる奴です。H君の打球は痛烈なライナー!


 やった!同点だ!


と叫びましたが、打球の先にはあのレフト君が待ち構えておりました。万事休す!


打球はゆっくりと彼のグラブに納まりました。今日はレフトの彼にやられました。彼は間違い無く本日のMIPでしょうね。晩飯は焼肉かな。(笑)

捕球と同時にガッツポーズで小躍りしながらマウンドに駆けて行きます。他のナインも満面の笑顔、応援席は優勝したかのようなお祭り騒ぎです。相手も苦しかったのでしょう。


それにしても、敗れたとは言え、最後まであきらめずに良く粘りました。序盤のミスが悔やまれますが、まあ、あの程度のミスは想定内でしょう。こういう試合ができるようになれば、次の大会も楽しみです。


ところで、最後に好打と好走塁で見せ場を作ってくれたK君ですが、試合後のT監督によれば、安打を打った球は「待て」のサインが出ており、3盗も全くノーサインだったそうです。(^_^.)

なるほど。T監督らしからぬギャンブル采配の謎が解けました。(笑)