枠組みは、東電がリストラや事業を通じて得た資金を財源に賠償金を支払うことを原則とする一方、同社が破綻する事態を防ぐため、機構を新設し、必要に応じて東電に資本注入する。機構には、電力各社が負担金を支払うほか、政府が交付国債発行を通じてバックアップする仕組みで、支援体制は盤石に見える。
支援には上限を設けておらず、機構は東電の要請があれば、何度でも支援する。そのため、東電は事実上破綻しないことが確約され、上場も維持される。一見すると、ステークホルダーによる「痛み分け」はないようにも見える。
が、フタが開いて驚いたのが金融機関だ。メガバンクは事故直後から賠償案を作成し、議員行脚。東電への債権の“保護”を求めてきており、今回はこれがたたき台になっている。しかし、今回発表された文書には「全てのステークホルダーに協力を求め、とりわけ、金融機関から得られる協力について政府に報告を行う」と記されたのだ。
しかも発表直後の会見で、枝野幸男官房長官が「(金融機関が債権放棄しなければ)国民の理解が得られるかといったら到底できない」と発言。金融機関に激震が走った。
突然の発言に対して三菱UFJフィナンシャル・グループの永易克典社長は「枝野さんの発言には非常に唐突感、違和感がある。民民の関係に政府が出てくるのはいかがか」と不快感をあらわにする。政府内でも玄葉光一郎国家戦略相が15日、テレビ番組で異論を唱えるなど、議論は定まっていない。
■カギ握る第三者委員会
そもそも混乱を来すのは、肝心の東電のあり方が定まっていないからだ。事業体として残る前提だが、近く立ち上げる第三者委員会が東電の“解体”につながるという憶測も浮上。関係者は「発送電分離に意欲的な委員の名も出ており、リストラに向けて発送電設備の資産査定も行われる」と語る。
首相周辺では分離議論の機運も高まっているが、「例えば送電の場合、イニシャルコストがそうとう安くなければ収益性に問題が出る。資産売却でカネを作るといっても簡単にはいかない」(みずほインベスターズ証券の河内宏文シニアアナリスト)。
不確定要素が多すぎる賠償策。十分な議論がされず性急だったことは否めない。今後閣議決定を経て国会へ法案提出される見通しだが、党内の意見集約すらままならない状況では、さらなる混乱を招くことが必至だ。
(倉沢美左 =週刊東洋経済2011年5月28日号)
※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20110601-00000000-toyo-bus_all