このブームの火付け役は、リーボック ジャパンが展開する「イージートーン」。09年2月から女性向け、昨年1月からは男性向けの製品が発売され、「当初はしばらく品薄状態が続いた」(マーケティング部の嶋田麻友子PRマネージャー)。従来のトーニングシューズに比べて半額以下の手ごろな価格帯と、より普段着に合わせやすいデザインがヒットの要因だ。2010年秋にはニューバランス ジャパンが参入。各社とも、「ウォーキングをする時間は取れないが、日々の移動時間を使って効率的にやせたい」という人をターゲットに今後もラインアップを拡大する計画だ。
仕組みは大きく分けて3タイプ
トーニングシューズは靴底や中敷きの形状・素材を工夫することで、通常のシューズより足への負荷を高めたもの。これがエクササイズにつながる仕掛けで、大きく3つのタイプに分かれる。今回、売れ筋の5モデルを実際に履いてみて、それぞれの特徴が分かった。
1つ目は、「ロック&トーン MW1645」(ニューバランス ジャパン)と、「シェイプアップスXW KMR6504」(スケッチャーズ)のタイプ。シューズの前後が切れ上がり、大きくラウンドした形状の靴底が特徴だ。見た目は通常のシューズよりボリューム感が出てしまうが、厚いソールの中間部分が軟らかく、履いて歩いてみたところ、前後方向へのぐらつきが非常に大きかった。特にシェイプアップスは、ロック&トーンよりも靴底が軟らかく、靴自体も重い。最初は歩きづらいほどだった。
2つ目のタイプは、「イージートーン ストリート」(リーボック ジャパン)と、「トゥルーバランス MW850」(ニューバランス ジャパン)。イージートーンはバランスボールのような不安定さを狙った軟らかい靴底で、トゥルーバランスはかかと部分に切れ込みが入っていることで左右方向に多少ぐらつく。ロック&トーンやシェイプアップスより見た目はすっきりとしていて、同時に「普段使いでの歩きやすさを重視した設計」(両社)でもある。快適に歩けるぶん、人によっては効果を実感しづらいかもしれない。
最後は「カロリーウォーク WM7021CW」(ムーンスター)のタイプ。通常のシューズと見た目はまったく変わらないが、シューズ内部のかかとと前側、中敷きに低反発衝撃吸収素材を配置しており、歩くと足裏が沈み込む仕組み。特につま先で蹴り出すときに大きく負荷がかかる印象で、見た目には想像が付かないが意外にも足に力が入った。
靴より「正しい歩き方」のほうが近道!?
トーニングシューズのエクササイズ効果をより高めるために各社が推奨するのは、「かかとで着地し、大またで歩く」こと。当たり前のことのようだが、実は「一般的に日本人は、かかとで着地し、つま先で蹴り出すといった『正しい歩き方』をしておらず、足裏全体を使ってペタペタと歩く傾向がある。これでは、そもそも足の筋肉がさほど使われていない」(東海大学体育学部の山田洋准教授)という。一方、各社が推奨するように正しい歩き方をすれば、「自然に大股になり、そのぶんふくらはぎや太もも、尻などの筋肉活動量が増える」と山田准教授は解説する。
そこで、通常のシューズで普段通り歩いた場合と、正しい歩き方を意識した場合の2パターンで筋肉活動量がどれくらい変わるのか、山田准教授の協力で筋電図を使って解析した。
すると、普段通り歩いたテスト結果より正しい歩き方のほうが歩幅は平均6cm以上も延びた。かかとで着地する際は、すねの前頸骨筋、つま先で蹴り出すときは、ふくらぎのヒラメ筋と太もも裏側の大腿二頭筋が使われるが、正しい歩き方をすると、いずれの筋肉活動量もアップしていたのだ。特に太もも裏側の大腿二頭筋、ふくらはぎのヒラメ筋では、筋肉活動量が20%以上も増加した。
実は前出のトーニングシューズ5モデルでも同じ条件で実験を行ったのだが、面白いことに通常のシューズで正しい歩き方をした場合のほうが筋肉活動量の増加率が多いケースもあった。不安定感が高いトーニングシューズを履いて歩くと自然に正しい歩き方になるとも言われるが、より手軽にエクササイズ効果を得たいなら、まず正しい歩き方を実践するのが近道といえそうだ。
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(文/勝俣哲生=日経トレンディ、撮影/大澤 誠