【プロ野球】“逆襲の2年目”菊池雄星は順調か? | スクランブル交差点

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 再び、日向の地を踏みしめた。2011年1月31日。羽田空港発、宮崎空港着の航空便が降り立つ。到着ゲートをくぐる西武ナインの中に、2年目の菊池雄星投手の姿があった。この1年間、精神的にも悩まされ続けてきた左肩の痛みは、「もう痛くありません」と言い切れるほどに和らいでいた。

 キャンプイン初日。早速ブルペン入りした菊池の投球は、それまでの周囲の見方を変えた。躍動感あるフォームから繰り出される剛速球。最速155キロ復活、とまではいかないものの、この直球ならば今年こそは、と淡い期待を抱かせるには十分なものだった

 渡辺久信監督の声も明るかった。
「去年の今頃とは雲泥の差。去年の失敗を乗り越えて、しっかりやってきている。今年にかける彼の思いが伝わってくる」。安心したような指揮官の表情が、心中をうかがわせた。

 自主トレ期間の1月18日、西武第二球場。自主トレを視察に来た渡辺監督の目は、室内練習場のブルペンで思い切り投げる菊池に注がれていた。捕手を立たせたまま55球、汗をほとばしらせながら投げる姿は、左肩痛が快方に向かっていることを示していた。

「2月も継続して見たいのでは」と報道陣から問われた渡辺監督は「もちろん」と断言。翌19日の全体会議で、菊池のA班(一軍相当)参加が決まった。「投げられるのなら連れて行く。ケガ明けだから、無理せずに焦らずやってほしい」とメッセージを発した。

「焦るな、焦るな」
渡辺監督の菊池への言葉は、常にここに集約される。2009年秋のドラフト会議で、「球界の宝」とまで言われた当たりくじを引き当てたのは渡辺監督その人。その分、菊池への期待度、預かっている責任感は強い。

 左肩痛がひどくなり、参加していたA班キャンプからB班落ちさせたのは前年2月末。シーズンが始まり、二軍生活が長引きそうだと分かると、例年以上に二軍からの状況報告を促した。長いリハビリの末、回復のメドが立った昨秋には、A班の秋季キャンプ帯同も真剣に検討した。結果的には実現せずに終わったため、この春季キャンプの意義は大きくなった。渡辺監督がようやく手にした、菊池と直接向き合える貴重な時間になったのだ。一方で、左肩痛を再発させないために、手綱(たづな)を締める時間にもなっている。

 さて、菊池が無事に春季キャンプを乗り越えた場合、〈逆襲の2年目〉はどういう姿を世間に見せるのか。投球練習を受けた捕手の岳野竜也は「フォームに躍動感もあるし、本当にいい直球がきている」と、高評価を与える。

 一方で渡辺監督は「去年1年は投げてなかったわけだから、肩回りの筋肉が付いていない。投球練習は補強も兼ねている」と見ている。まだまだスタートラインに立ったばかりだ、ということだろう。

 たとえ順調に進んでも、先発投手の層が厚い西武。二軍で先発機会を増やし、結果を出しながら、チャンスをうかがうことになるかもしれないが、まだ19歳。その意味でも、焦る必要はない。

 当の菊池本人も、キャンプの目標を尋ねられると「まずは真っ直ぐを磨くこと。それを評価されてプロの世界に入ったと思うので。去年のことを考えると、現状維持じゃ自分も周りも納得できない。高校時代以上の投球をしないと」。

 決して大言壮語はしない。一歩ずつ着実に。再び道を踏み外すことがないように。若葉マークを付けたまま、ギアは1速でも、今は進んでいること自体に意味がある。