辞書で「敵失」という言葉を調べてみると「自分の属するグループや組織ではなく、敵やライバル、反対勢力などがそれ自身で犯してしまったミスや失敗の事」となっている。
そのまま野球用語だと書いてあるものもある。

4月28日のジャイアンツ戦の引き分けも、5月1日のベイスターズ戦の逆転勝ちも敵失によるものだと私は思っている。もちろん、敵のミスに乗じて勝利する事は 勝負の世界では必定だろう。

仮に敵失がなかったら 今週のタイガースの成績は 1勝5敗であったことになる。それが 2勝3敗1分け、で済んだのだから有り難いものである。

選手が犯すミスは大きく分けて3つに分類できる。
1つ目は ケアレスミス。準備不足や集中力を欠いたりと不注意が原因で犯すミスだ。
2つ目は 技術不足によるミス。経験不足も含めて、要は下手クソだから犯してしまうミスだ。
そして、3つ目が自分の弱さが原因で犯してしまうミスだ。失敗を怖がって失敗をしてしまうメンタルの弱さから生じるミスだ。

私は若トラ達にこの3つ目のミスだけはして欲しくないと思っている。

ケアレスミスを防ぐには 常に確認作業をするルーティーンを身に付ければ良い。下手クソは 一生懸命 練習すれば良い。しかし、自分が弱くて犯かすミスは何も生まない。

それどころか、一生心の傷となってしまうことがある。私も 振り返れば 自分が弱くて犯してしまったミスによる心の傷がある。もう一度、あの場面に戻ってやりなおせたらなぁ、なんて思う事がある。このような苦い思いを若い選手には経験して欲しくない、と願っている。

では、首脳陣が犯すミスとは何だろうか? 指導力不足とは 先ほどの1・2・3のどれに当たるのか?たとえば、投手交代の失敗など。これらを突き詰めて考えれば2番目、つまり 指導者としての能力や資質の問題になるのだろう。

しかし指導者に、2つ目に問題があるのは致命的である。ここに問題があると、選手やチームに直接的な影響を与えてしまう。

昨今のベイスターズを見てみれば チームの士気や目標、そして育成といったところに問題があるのは明らかだ。ホームゲームでは 毎年 観客数を増やしている事実がありながら、それと反比例するかのようにベイスターズのチーム力は下がっている。

ベイスターズだけではない。ジャイアンツにしても主力選手のダラダラとした動きは目にあまる。ヒットやホームランを打てば ちんたらプレーする事が許されるわけではない。

26日のジャイアンツ、6回表に4点を取り 2-4となり 6回裏 1死の場面、福留がレフトとセンターの間にフライを打ったのだが それを両者がお見合いをしてしまい2塁打にしてしまったシーン。あろうことか、当事者2人が顔を見ながら笑っていたのだ。

こんな大事な場面でお見合いをして笑ってるというのは プロとして非常に残念なことだ。タイガースはこのチャンスを活かすことは出来なかったが こんなチームが首位に立っていても 必ず 落ちてくるだろう。

ジャイアンツが突っ走ってしまうのではないか、と心配している人もいるかもしれないが 「安心してください」である。


確かにタイガースにもウィークポイントはあるが それは 経験不足とか未熟なのであり、慢心やおごりといったものではない。一生懸命プレーする姿は 見ていて気持ちがいい。

ジャイアンツの主力選手は「かっこいい」を勘違いしているようだ。こういうことも教育ならば指導者の責任であると思う。

私は 名監督の条件もミスの種類と同じように 3つあると思っている。
1つ目は 当然の事だが勝つ事。チームを勝利に導くことは監督の使命である。
2つ目は 人材育成だ。自分がチームを去っても チームの財産である人材を残す事は監督にとって大事な仕事である。
3つ目は 指導者を育てる事。現在いるコーチのスキルを上げる事も含めて、いつか、現役の選手も引退するわけで、指導者になった時に困らない様に選手としては もちろんの事 指導者になった時の事を考えながら教育していくわけだ。

勝った監督は 沢山いる。しかし、育成や指導者教育をちゃんとできた人は 私の知る限りでは 野村克也さんしかいない。

指導力不足が招く チーム力の減退は ハッキリと目に見えないだけに厄介である。だが、そんな事を思わせる一週間だった。

タイガースに話を戻すが、金本監督となり、若手を抜擢する選手起用はファンを含めて 色々なところで支持を受けている。野手では最年長の福留を始め若トラ達のハツラツとした動きは 見ていて実に気持ちがいい。

今年、タイガースは 81年目のシーズンを迎える。今までのタイガースの歴史に無かった新生タイガースの誕生となるシーズンになるかもしれない。「超変革」に、益々、期待している。