最近アニメで、「異世界ファンタジー」が多くなってきました。
現代のぼくたちがどこか別の「世界」に召喚されてしまう。
あるいは、時間遡行をしてやり直しをするなど。
そこでは魔法だったり、異種族だったり、ゲームみたいな冒険が待っている。
見たことも、聞いたこともないような世界。
初めての経験に、どきどきしたり胸をときめかしたりする。
その根っこにあるのは、「不思議さ」だと思うんです。
そういう要素を手軽に構築できるのが「異世界」じゃないかと。
いまはどんな情報でも、簡単に手に入れることができます。
グーグルマップを使えば、海外の風景だってすぐに見ることができる。
不思議なことがどんどんなくなっていく。
ぼくはアニメやゲーム(その中でも、面白いと感じたもの)を紹介してきました。
なぜなら、それは深く考えなくても済むものだから。
けれども今回紹介するのは、「小説」です。
アニメやゲームと違って気軽にとれるものじゃありません。
「読む」というのは、すごく集中力を使うものです。
だから、小説は苦手なんだという人もいるでしょう。
長い文字は見ているだけで、頭が痛くなりますからね。
じゃあ、どうしたらそういう人に読んでもらえるか。
ぼくはそれでも小説には、「オリジナリティ」があると強く思うんです。
むしろ、アニメよりもずっと心に残ると思えるような。
今回は、とても魅力のある方を紹介します。
小説家「綾辻行人」さんです。
綾辻さんは、「本格ミステリ」と呼ばれるジャンルで有名な作家です。
アニメでは、「ANOTHER(アナザー)」がいっとき話題になりました。
主な著作は「館」シリーズを始めとする推理小説です。
密室のアリバイがあるなかでの殺人。
絶対にありえないようなシチュエーションの謎を解き明かしていく。
そんな空想を描いた探偵の話が「本格ミステリ」というジャンルです。
昔でいうと、エルキュール・ポアロだとか、シャーロック・ホームズ。
日本なら、明智小五郎だとか金田一耕助。
そういう「名探偵」がでてきて、犯人を論理的に追い詰めていく。
アニメでは毎年のように、「名探偵コナン」が映画化されていますね。
これはいかにぼくたちがミステリを愛しているかということでしょう。
小説というのは、何でも表現できるようでその幅は狭いものです。
というのも、荒唐無稽なことなんて読んでいて十秒で飽きてしまうからです。
これはプロの作品でも何ら変わりません。
アニメ以上に、文字の世界は興味を惹きつけるのが難しいものです。
「天才」と呼ばれる作家たちですら、つまらない作品を数多く書いています。
だから、彼らは自分たちのもっとも得意な手法を磨きます。
同じような物語ばかり並んでしまうのは、それが自分を最高に魅せるための手段だからです。
綾辻さんは「館」シリーズと呼ばれる、とある建築家が設計した「館」での殺人事件を描いてきました。
シリーズを重ねるごとに技術は向上していき、あわせて書いていたジャンルとついに融合します。
それが「ANOTHER(アナザー)」などに代表される怪奇小説の分野です。
――幻想怪奇小説。
見るからに妖しい響きですね。
そんな名に負けない怪奇譚を味わうことができます。
ホラーというのは、とても難しいジャンルです。
日本では、「心霊」を扱った物語があまりにも一般化しすぎています。
そんな偏見を打ち砕いてくれるかのような作品です。
個人的にぼくが好きなのは、「深泥丘(みどろがおか)奇談」です。
続編なども出版されていますが、この最初の短編集が最高です。
「あぁ、妖しげというのはこういうことか!」
と、思ってもらえると最高です。
ぼくが綾辻さんのベスト作品を3つ挙げるとするならば、
ひとつはさきほど言った「深泥丘奇談」。
もうひとつは、「館」シリーズ「奇面館の殺人」。
この二つを読んで、「綾辻さんって面白いな」と思ったなら、
最後におすすめしたいのが、同じく「館」シリーズ「暗黒館の殺人」です。
間違っても、最後から読んではいけません。
いきなり読むと、「つまらない!」と感じてしまう可能性が高いからです。
随所に魅惑的な「妖しさ」が散りばめられています。
それはあたかも宝石のように淡く、美しい貴品をそえています。
ある程度、「綾辻ワールド」に浸ってから処方するべきでしょう。
それでは、あなたにも妖しい世界が広がることを・・・
紹介した作品
「深泥丘奇談」 角川文庫
「Another」 角川文庫
「奇面館の殺人」 講談社
「暗黒館の殺人」 講談社