魚に寄生する生きたアニサキスを食べて、それが胃の粘膜に潜り込み、激しい腹痛を訴える・・・これを「胃アニサキス症」と呼びます。

しかし、生きたアニサキスを食べなくても、アニサキスの成分が体に入るとアレルギー症状を起こすことがあり(アニサキスアレルギー)、こちらの要素が多いと近年いわれるようになりました。

 

また、「魚を食べてじんま疹が出たので検査して欲しい」という患者さんが来院された場合、魚の種類を詳しく聞きます。

特定の魚だけに反応する人もいれば、複数の魚で症状が出てかつ毎回出るとは限らないという人もいます。後者の場合、アニサキスアレルギーを疑います。つまり、同じ魚でもアニサキス入りの時は反応するし、アニサキスが入っていないときは無症状、という背景です。

 

・・・というのが今までの私の知識(一応「アレルギー専門医」です)ですが、さて、最新情報はどうなっているのでしょう。

専門家のインタビュー記事を読んでみました。すると、初めて知ったことが3つありました。

胃アニサキス症でもアレルギーの要素がある、つまり両者が合併することがあり得る。

・アニサキスアレルギーでは「遅発性アナフィラキシー」の可能性があること。

・即時型反応(アナフィラキシー型)の他に「慢性蕁麻疹型」が存在すること。

 

やはり知識はアップデートが必要ですね。

ポイントを備忘録として残しておきます。

 

▶ 胃アニサキス症

・アニサキスの幼虫が寄生している魚介類を生で食べると、人の胃の壁にかみついて食中毒を聞き起こす病態(胃アニサキス症)、腸に至ったのが腸アニサキス症。

・激しい上腹部痛。

・胃粘膜に食い込んだアニサキスが痛みなどの症状を起こすのは、アニサキスに対するアレルギー反応で胃粘膜が腫れ、炎症を起こすためと考えられている。

・アレルギーの側面もあるため、激しい腹痛にじんま疹を伴うことがある。

・痛みの個人差が大きく、救急外来を受診する人もいれば、無症状の人もいる(検診の内視鏡検査で偶然見つかることがある)。

 

▶ アニサキスアレルギー

・魚介類に寄生した生きたアニサキスが体内に入った際(必ずしも症状は出ない)に抗体が作られ、次にアレルゲンとなるタンパク質が体内に入ると、じんま疹や目の腫れ、くしゃみ・鼻汁の他、呼吸困難や意識消失など重篤なアレルギ^反応を起こす病態。

・現在、アニサキスアレルギーの原因蛋白質として16種類が見つかっている、大別するとアニサキス虫体そのものに対するアレルギーと、唾液や糞などの分泌物に対するアレルギーの2つに分けられる。

慢性蕁麻疹型アナフィラキシー型(突然発症型)に分けられる。

・一般にアナフィラキシー型(即時型アレルギー)では2時間以内に発症するが、アニサキスアレルギーの場合、魚介類摂取2時間以降に症状が出ることも珍しくなく、5〜6時間後、場合によってはそれ以上経過した後に遅発性アナフィラキシーを起こすこともある。

・診断:症状の既往+血液アニサキス特異的IgE抗体陽性で確定。

(血液検査陽性だが症状がない場合はアニサキスアレルギーと診断されない)

 

▶ 胃アニサキス症の経過

・胃アニサキス症は食後2〜10時間で発症する、食べたのが3〜4日前ではアニサキス以外の原因を疑う。

 → 夕食で魚を食べて、夜中に痛み出し、痛みで眠れず、朝を待って来院するケースが多い。

・人体に侵入したアニサキスの多くは1週間程度で死滅するので、我慢すればその内痛みも消失する。内視鏡で虫体を摘出すれば、ほとんどの場合、痛みは速やかに解消する。

★ アニサキスにより好酸球性肉芽種が発生したり、胃壁に穴が開いたり、小腸に達して腸閉塞を起こすこともあるため、症状があるなら早期に適切な処置を行うべきである。

 

▶ 胃アニサキス症の原因

・サバ、アジ、イカ、イワシ、サンマなどの刺身。

・寄生率は魚により異なり、容色と天然物では天然の方がリスクが高い、陸上養殖であれば理論上はノーリスク。

・魚介類の刺身は食べないことがベストであるが・・・。

・食べるのであれば「60℃(70℃以上との意見も)、1分の加熱」「-20℃で24時間以上冷凍」したものを摂取するようアドバイスする。

・発症した人に、魚介類全般除去を指示するか、種類を選べば食べてよいのか、専門家の間でも見解が分かれている。

・病院で行う経口負荷試験ではマグロを用いたりツナ缶であれば、カツオではなくマグロから試している。

 

▶ 胃アニサキス症の内視鏡による摘出

・1匹とは限らないので隈なくチェック。

・虫体を引っ張ると切れて頭部が残ることがあるため、胃壁にかみついている頭の部分をまわりの胃粘膜ごと摘出することがコツ。

 

▶ アニサキスアレルギーの治療薬

・蕁麻疹型には抗ヒスタミン薬(=抗アレルギー薬)

・アナフィラキシー型にはエピペン

 

<参考>

【時流◆アニサキス】

1.胃アニサキス症診療のポイント〜腹痛の観点から

 末廣聡士(胃と大腸の消化器内視鏡クリニック足立区院)

(2025.5.27、m3.com)

2.アナフィラキシーを起こすケースも散見

 田村誠朗(兵庫医科大学アレルギー・リウマチ内科)

(2025.5.31、m3.com)