片頭痛の治療薬は日進月歩で、近年、新薬が相次いで登場してきています。
しかしこれは成人領域の話で、小児(特に小学生)への使用が正式に認められている新薬はほとんど存在せず、相変わらずアセトアミノフェンやイブプロフェンの頓服でしのいでいる旧態依然のまま。私は何とかならないかと効果不十分例には漢方薬を提案しています。五苓散内服で5割、五苓散と呉茱萸湯を組み合わせると7割の患者さんに効果があると報告されています。
さて、偏頭痛と群発頭痛を扱う番組を視聴し、わかりやすい説明だったので備忘録としてポイントを書き残しておきます。相変わらず小児には使えない薬の話ですが。
いくつか記憶すべき数字が登場しました;
・鎮痛剤が有効かどうか → 内服2時間後に楽になっているかどうかで判断
・鎮痛薬は月に10回以内の使用にとどめる。月に10日間以上、それを3か月以上続けると「薬剤の使用過多による頭痛」のリスクが高くなる。
・週1回以上鎮痛薬を服用している人は医療機関を受診し予防薬による治療の検討が必要。

<総論>
▢ 三大頭痛(頭痛そのものが病気)
・片頭痛
・緊張型頭痛
・群発頭痛
▢ 片頭痛の診断
(問診)約9割が診断される:頻度、起こり方、痛み方、服薬歴、等
(診察)神経系の診察
(検査)血液検査、MRIなどの画像検査を行うこともある。
・・・以上により二次性頭痛(ほかの病気が原因の頭痛)を除外する。
▢ 二次性頭痛の例
・脳梗塞
・脳出血
・くも膜下出血
・髄膜炎
・脳腫瘍、等
▢ 危険な頭痛(二次性頭痛)の特徴
・突然の頭痛、今までにない激痛
・麻痺やしびれ、しゃべりにくい
・精神症状(厳格・妄想・幻聴、等)
・意識がぼんやりしている
・発熱
・視力低下を伴う
・50歳以上で新規発症
・頻度や程度が増えている、等
▢ 頭痛治療薬まとめ
1.片頭痛
(発作治療)
・トリプタン製剤(内服薬)
・ラスミジタン(レイボー®、内服薬)
(予防薬:毎日内服)・・・効果がない・副作用が出た場合は注射薬を試す
・カルシウム拮抗薬
・β-遮断薬
・抗てんかん薬
・抗うつ薬
(予防薬:月1回注射)
・CGRP関連抗体薬:少しでも効果があれば1年〜1年半ほど継続(痛み軽減作用もある)
(治療&予防薬)
・リメゲパント(ナルティーク®、2026年9月承認、12月販売):副作用が少ない、血管収縮作用がない。
2.群発頭痛
(発作治療)
・トリプタン製剤(自己注射薬)2007年承認
・在宅酸素療法
(予防薬)
・カルシウム拮抗薬
・ステロイド
<各論>
【片頭痛】
▢ 片頭痛について
・慢性頭痛の代表的な疾患の一つ。
・患者数は1000万人(推計)。
・女性に多く、女性:男性=3:1。
・頭の片側、もしくは両側が痛み、吐き気・嘔吐を伴うことがある。
・日常生活に非常に大きな支障をきたす疾患。
▢ 片頭痛が起きるメカニズム
・脳の視床下部で痛み物質が産生される。
・痛み物質は三叉神経を刺激する。
・三叉神経は脳の血管を拡張させるとともに炎症を起こす。
・血管拡張と炎症が痛みを発生させる。
・嘔吐中枢も活性化され、吐き気を催す。
▢ 片頭痛の特徴(セルフチェック)
① 動くと悪化する。
② 吐き気がある。
③ 光・音・においに過敏になる。
①②③の2つ以上該当する → 片頭痛の可能性あり
▢ 片頭痛の誘因(きっかけ)
(自己調節可能な誘因)
・まぶしい光
・強いニオイ
・飲酒
・睡眠不足
・寝過ぎ
・人混み
・騒音
(対人関係)
・ストレス
・ストレスからの解放
(自然現症)
・天候の変化
・温度の変化
・高い湿度
・月経
・更年期
▢ 市販の鎮痛薬の効果
・市販薬で痛みが改善し、支障なく過ごせているのであれば問題ない。
・服用して2時間後に楽になっているかを確認すべし(本当に効いている?)。
▢ トリプタン製剤(内服薬)
・頭痛のメカニズムに沿って作られた薬(血管の拡張と炎症を抑える)。
・これまでの鎮痛薬(NSAIDs)で効かない人にも効果が期待できる。
・種類;
スマトリプタン(イミグラン®)点鼻あり、ジェネリックあり
ゾルミトリプタン(ゾーミッグ®)ジェネリックあり
エレトリプタン(レルパックス®)ジェネリックあり
リザトリプタン(マクサルト®)速く効く、ジェネリックあり
ナラトリプタン(アマージ®)効果が長い、ジェネリックあり
・副作用;
のどが締めつけられるような感じ
だるくなる
眠くなる、等
・服用日数:ひと月に10日以内
・服用できない人(禁忌):血管を収縮させるため、以下の病気の人は服用できない。
❌️ 脳梗塞
❌️ 心筋梗塞
❌️ 重い高血圧
❌️ 肝障害
▢ 「薬剤の使用過多による頭痛」
・トリプタン製剤でも市販薬でも起こりうる。
・使用頻度が月に10日間(※)以上、それを3か月以上続けていると脳が痛みに過敏になってしまい、わずかな刺激でも頭痛が起きやすくなる。
※)非オピオイド系鎮痛薬は15日。
・週1回以上鎮痛薬を服用している人は医療機関を受診し予防薬による治療の検討が必要
▢ トリプタン製剤が使えない人へ
・ラスミジタン(レイボー®、2022年承認):血管収縮作用がない。
▢ CGRP関連抗体薬(予防薬)
・頭痛のメカニズムに焦点を当てた新たな予防薬。
・月に1回自己注射をして片頭痛の発生を抑える効果がある。
・三叉神経末端から分泌されるCGRPが血管のレセプターに結合して作用し血管が拡張&炎症を起こすが、CGRP関連抗体薬はCGRPが受容体に結合する前にトラップして持ち去ってくれる。
・薬剤;
ガルカネズマブ(エムガルティ®)
フレマネズマブ(アジョビ®)
エレヌマブ(アイモビーグ®)
※)費用:保険適用あり、3割負担の場合1本12,000円程度。
【群発頭痛】
▢ 群発頭痛の疫学
・患者数:約10万人
・男性に多く、20〜40歳で発症(近年は女性も増えている)
▢ 群発頭痛の症状
・片側の目の奥やこめかみが痛くなる。
・短時間で痛みがピークになる。
・15分〜3時間続く(終わると通常に戻る)。
・1日のうち短時間だけ痛みが起こる。治まるが毎日起こる。
・痛む側の目が充血し涙が出る、鼻水が出る。
・群発期がある。毎日数時間頭痛が起きる、数週間〜2か月ほど続く。
・群発期以外は頭痛は起こらない。
・群発期は半年〜数年おきに来る。
▢ 群発頭痛の治療
(発作用)
・トリプタン製剤(イミグランキット皮下注®、自己注射薬)(2007年承認):効果が出るまで数十分(内服薬では1〜2時間)、1日2回まで使用可能
・在宅酸素療法:高濃度の酸素を15分間吸入すると、群発頭痛の症状改善が期待できる。なお、酸素は登山用などではなく医療用酸素。
(予防薬)群発期のみ服用し、痛みの程度や頻度を減らすことができる。
・カルシウム拮抗薬
・ステロイド
<参考>
・チョイス@病気になったとき「頭痛〜治療と予防の最新情報」(NHK Eテレ、2026年5月3日放送)
・頭痛専門医検索(日本頭痛学会HP)
<追加>
最初に書いたように、トリプタン製剤は添付文書上、小児に適応がありません。しかし、適応がない中でも安全に使える可能性が高いことが「頭痛ガイドライン」にも記載されている、という宙ぶらりん状態が現状です。製薬会社さん、小児適応取得をお願いします。
▢ 小児に使用が許可されているトリプタン製剤
(12歳以上、体重40kg以上)スマトリプタン(イミグラン®)点鼻
・・・ほかのトリプタン製剤は小児に対する有効性が証明されていない。もし使用する場合は、説明と同意の上、年令12才以上・体重40kg以上は成人と同じ量、年令8才以上~12才未満・体重25kg以上~40kg未満は、成人の半量が処方量の目安。
▢ 正式に認可されていないが、説明と同意の上、小児使用可能なトリプタン製剤例
(6〜12歳)
スマトリプタン(イミグラン®)点鼻あり
リザトリプタン(マクサルト®)速く効く
(13〜17歳)
スマトリプタン(イミグラン®)点鼻あり
リザトリプタン(マクサルト®)速く効く
ゾルミトリプタン(ゾーミッグ®)
エレトリプタン(レルパックス®)
ナラトリプタン(アマージ®)効果が長い
▢ 頭痛ガイドラインでは・・・
・頭痛ガイドラインでは、カロナールでコントロールできない頭痛はトリプタン製剤(リザトリプタン、マクサルト®)が推奨されている。体重によって40kg以上は10mgで40kg未満は5mgが推奨されている。
もちろん、ガンコな頭痛、鎮痛薬抵抗性の頭痛の際は、二次性頭痛の可能性を検査で除外しなくてはなりません。実際に、頭痛を主訴に受診された小学生に「頻度・程度が悪化傾向なら脳神経外科で検査が必要です」と説明したところ、その半年後に脳神経外科で「もやもや病」と診断されたお子さんがいました。