1.抗うつ剤(SSRI)
薬物療法の主役になるのが抗うつ剤です。
パニック障害をはじめとした不安障害(不安症)に属する疾患は、セロトニンの欠乏が一因であることはほぼ間違いないと考えられています。
そのため抗うつ剤の中でもセロトニンを増やす作用に優れるものがよく使われます。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる抗うつ剤は、セロトニンを選択的に増やす作用に優れるため、パニック障害の治療によく用いられます。
具体的には、我が国には現在4種類のSSRIがあり、このうちのいずれかが用いられます。
・フルボキサミン(商品名:ルボックス、デプロメール)
・パロキセチン(商品名:パキシル)
・セルトラリン(商品名:ジェイゾロフト)
・エスシタロプラム(商品名:レクサプロ)
このうち、どれが良いかは患者さんによって異なるため、主治医とよく相談の上で選択していきます。統計を取ると、どれも有効率に大きな差はないとする報告が多いため、極論を言えばどれを使っても問題ありません。
抗うつ剤を使用する際の第一選択は原則としてSSRIですが、SSRIでは効果が不十分の時は別のおくすりを使う事があります。三環系抗うつ剤(TCA)という古い抗うつ剤の中で、セロトニンを増やす作用に優れる抗うつ剤がしばしば使われます。
具体的には、クロミプラミン(アナフラニール)などです。ただし三環系抗うつ剤は、古いおくすりのため副作用も多く注意が必要です。
抗うつ剤は大きく分けると、「セロトニンを主に増やすもの」「ノルアドレナリンを主に増やすもの」に分けられます。このうち、パニック障害の治療にはセロトニンを主に増やすものが用いられます。
ノルアドレナリンを主に増やすものは、セロトニンを主に増やすものと比べるとパニック障害に対する治療効果が低いため、第一選択としてはあまり用いられません。ただし、ノルアドレナリンを主に増やすものにもセロトニンも増やす作用もあるため、症例によっては用いられることもあります。
抗うつ剤は、服薬初期には、吐き気や口の渇きといった副作用が出ることが多いため、少量から始めて徐々に量を増やしていきます。そのため、効果が出るまでに時間がかかるのが難点です。
パニック障害に対しての有効率は高く、しっかりと治してくれるおくすりですが、しっかりとした効果が出るまでに2週間~1か月程度は待たないといけません。
2.抗不安薬(安定剤)
SSRIを補助する役割として抗不安薬が用いられることもあります。抗不安薬は主にベンゾジアゼピン系抗不安薬というものが使われれます。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬はたくさんありますが、代表的なものには次のようなものが挙げられます。
・ロラゼパム(商品名:ワイパックス)
・アルムラゾラム(商品名:ソラナックス、コンスタン)
・ブロマゼパム(商品名:レキソタン、セニラン)
・ジアゼパム(商品名:セルシン、ホリゾン)
・クロチアゼパム(商品名:リーゼ)
・エチゾラム(商品名:デパス)
・ロフラゼプ酸エチル(商品名:メイラックス)
抗不安薬のメリットには「即効性」です。先ほど紹介した抗うつ剤は効果発現まで数週間待つ必要がありますが、抗不安薬は早いものだと飲んで15分程度で効果が出るものもあります。
その即効性から、発作が起きそうなときに時にすぐ使えるのも利点です。
デメリットとしては、長期服薬による耐性・依存性です。抗うつ剤には耐性・依存性はありませんが、抗不安薬には耐性・依存性があるため長期服薬はなるべく避けたいところです。
このデメリットのために抗不安薬を推奨していない治療ガイドラインもあります。英国国立医療技術評価機構(NICE)のパニック障害ガイドラインをはじめ、ベンゾジアゼピン系の使用を推奨せず「短期間に限る」としているガイドラインは少なくありません。
3.漢方薬
漢方薬の中には不安に対して効果を示すものがありますので、漢方薬を使うこともあります。
パニック障害に対して漢方薬を使用する際は、即効性はなく、ゆっくり穏やかに効いてくるということを理解しておく必要があります。短期間での劇的な改善は期待しない方がよいでしょう。
個人差もありますが、1か月程度かけて少しずつ効いてきます。効きの個人差も大きいため、漢方薬の適応かどうかは主治医とよく相談して判断してください。
パニック障害に良く使われる代表的な漢方薬を紹介します。
・半夏厚朴湯・・・気分が塞いで喉・食道部に違和感があり、時に動悸、めまい、嘔気を伴うものの諸症
・柴胡加竜骨牡蛎湯・・・比較的体力があり、心悸亢進、不眠、いらだち等の精神症状のあるものの諸症
・桂枝加竜骨牡蛎湯・・・下腹直腹筋に緊張があり、比較的体力の衰えているものの諸症
・柴胡桂枝乾姜湯・・・体力が弱く、冷え性、貧血気味で動悸、息切れがあり、神経過敏のものの諸症
・加味逍遥散・・・体質虚弱な婦人で肩が凝り、疲れやすく、精神不安などの精神症状、時に便秘傾向のあるものの諸症
・加味帰脾湯・・・虚弱体質で血色の悪いものの諸症