外で働いていると、嫌でも人間社会の汚い部分も見ることになる。
決してきれいごとでは済まない部分。
世の中は、道徳の教科書通りにはいかないの。
人間の本能に根差した、あらゆる欲が剥き出しになったような裏の面。
そうした物に接し、揉まれ、鍛えられて、
この世での処し方、渡り方を身につけていくことになる。多かれ少なかれ。
それはいつの世も、どんな世も、そうだと思う。
談合とか、政治汚職、派閥争い…
決してなくならないと思う。
世のサラリーマン、いや男性諸氏ならよくご理解いただけますよね。
私が常に気を張っていて、どこかピリピリしているのもそうなの。
守ってくれていた夫はもういないし、
特に私は男社会の業界で働いているからね。
一方、私の妹ですが…
「会社(組織)で働いた」という経験がない。
「正規で」働いたことがない。
大学卒業後、趣味のアルバイトのようなことをしばらくしており、
ほどなくして結婚し、その後はずっと専業主婦。
一人暮らしの経験もない。
(私とは違って)舅姑によく仕え、ずっと介護をして看取り、
自治会やPTA、親戚との付き合いも実によくこなし、
実家の親の面倒もよく見、
周囲からは「よくできたお嫁さん」と言われ、(私もそう思います)
いたって質素で夫には従順。
何か少し大きなものを買う時は、夫に「お伺いを立ててから」買うのだとか。
もう10年以上前になるけど、
自分名義のクレジットカードを1枚も持っていないと聞いた時には、腰を抜かさんばかりに驚いた。
そして、そのことを別に何とも思っていないことにさらに驚いた。
(断っておきますが夫婦仲は非常にいいのです。決してDV夫ではありませんよ💦)
驚く私に「専業主婦なんてこんなもんよ。」と平気でのたまう。
稼ぎがないことで自己肯定感が低く、あまり自己主張しない。
じゃあ自分で稼いで、自分の自由になるお金が欲しくないのかと思うけれど、
べつにそうは思わないみたい。
冒険して痛い目に合うよりは、多少不自由でも守られて安心して過ごしたいと考える。
とにかく私とはライフスタイルが正反対なのです。
ところが、こんなよく出来た古典的なお嫁さんの妹ですが、
話しているとイライラすることが時々あります。
時間の感覚がゆるくて、ぽわーんとしているのはまあ仕方ないとして、
なにしろ、性善説を地で生きているような人だから、
話が通じない、というか、私から見ると反応が鈍くてイライラしちゃうんだよね。
これべつに妹の事を悪く言っているのではないよ。
誤解されては困るので強く強く言っておきますが、
私は決して世の専業主婦の生き方を否定しているわけではありません。
生き方の違いで、気づいたらこんなに嚙み合わなくなっていたというだけで、
あくまで「私とは違う」というだけ。
妹のような人生も当然ありだし、むしろある意味羨ましくさえ思う。
一生その世界で生きていくのなら、なにもこの世の醜い部分を知る必要もなし。
そんな世の中の醜い部分、知らずに済むのならその方がいいに決まってる。
母の長年の友人で、近所に住む一人暮らしの方がいたんだけれど、
誰にも知らせず施設に入ったらしいの。
元気で暮らしていたけれど、何しろお歳がお歳(90代)なので、
遠方に住むお孫さんが老人ホームに入れたらしいの(ご主人お子さんは既に他界)。
母はそれまで仲良くしていたものだから、どこで調べたのか、その方の入所先を突き止めて、はるばる会いに行ったらしいのよね。
そしたら、その施設の人に
「どのようなご関係ですか」ときかれ、
「血縁者以外誰にも会わせないようにと(お孫さんに)言われております」と言われ、面会を断られたらしいの。
その方はべつにご病気でも何でもないのよ。
私はそれを聞いてピンときた。
なぜかと言うとね、そのお友達と言うのは、実はものすごい資産家。
昔の地主で、土地が有り余るほどある方なのよ。金額にしておそらく何億も。
既にその一部は大手不動産会社に売って、そこには今高層マンションがデーンと三棟建っている。
母がその方と長年の友人であることは、そのお孫さんも知っているのよ。
でも、だからこそ警戒されたのよね。
「うっかりばあちゃんが口車に載せられて『あの土地あんたにやるわ』なんて言い出しかねない!」ってね。
「年取ったばあちゃんを狙って、誰かがだまし取るかもしれない」ってことなの。
で、どうやら私のこの見立ては当たっているのよ。
世の中本当にそういう人もいるものなのね。
お金持ちだからって幸せに過ごせるとは限らないのね。
その方、私もよく知っているけれど、本当に気さくで明るく楽しい方で、
90過ぎてもお茶の先生してたり、博物館でなんとボランティアもなさっていたの。
一人暮らしだったけれど、お茶のお弟子さん達が生活面でお世話をしていたらしく、行政のサービスも利用していて、近所に住む母とも仲が良かった。
それなのに、誰にも行き先を知らせず施設に入れるなんて。
寂しいだろうからと、はるばる訪ねて行ったのに会わせないなんて。
祖母の残り少ない人生を、隔離して一人寂しく過ごさせるなんて。
そんなのまるで、ただ生かして飼っているようなものでしょ?
なんて冷たい孫だと誰しも思うよね。
でも、その孫にとっては、祖母が友人に囲まれ趣味を楽しみ楽しく余生を送る事よりも、大事な大事な資産を守ることの方が大事!
人を見たら泥棒と思え!ってことなのよ、結局。
だから誰にも接触できないようにと施設に入れた(隔離した)の。
そんなことしたらボケちゃうじゃない!
不憫でならない。
でもね、
自分の価値観で人を責めることはできないよ。
資産家には資産家の価値観があるのだろうから。
(私にはようわからんけど)
でね、本題に戻るけれど、
この話を妹としても、まったく噛み合わないのよ!
妹にしてみれば、そんなことを孫が考えるとは全く理解できないらしい。
祖母の楽しみよりも、金を盗られないようにする事の方が大事と考え、
周囲の人を皆疑ってかかる孫が存在することが、まるで理解できないらしい。
それどころか、そんなことを言う姉を信じられないという目つきで見る。
妹と話していると、まるで私、自分が守銭奴にでもなったような気にさせられるのよ。
とにかく話が合わず通じず、ぽかーんとしてるだけなの。
この私のイライラわかるでしょうか。
ま、私はそれだけ
この世の嫌なこと辛い事いっぱい見て来て
「スレてる」ってことなんでしょうね。
ま、でも、だからこそ、
妹のような人が、もし伴侶を亡くして一人荒野に放り出されたら、
危なっかしくて見てられないかもしれないけれど、
私のようなたくましい(?)世にスレた女なら
一人でもやっていけるのかもしれないね。
いや、夫が元気だった頃の私は…
今より世間知らずだったと思う。
何しろ夫に守られてぬくぬくと生きていたから、
夫から見れば、危なっかしく、世間のこと知らなさ過ぎだったんだろうな。
死別後三年経って…
どんどん強くたくましく、世にスレていく私です。