スーパーの店頭に色とりどりのりんごが並んでる🍎🍏

 

私は果物が大好きで、お米がなくても果物だけは欠かさない。

必ず毎日食べる。夫もそうだった。

旅行するときは必ず果物ナイフを持っていき、旅先で果物を買っては食べていた。

夫が亡くなった今も、常に3種類ぐらいは買い置きしている。

今あるのは、柿、ミカン🍊、バナナ🍌

朝、柿を1個むいて食べ、夜はみかんを2個食べた。

どんなに食欲がなくても果物だけは食べられる。

今日はないけど、りんごは特に好き。

 

 

りんごにまつわる夫のせつない思い出です🍎

 

癌で入院していた5年前のちょうど今頃、

「すりおろしたリンゴが食べたい」と夫が私に言った。

それまでも夫は「リンゴってすりおろすと美味しいんだよ」と言ったことがあった。

なんでも子供の頃、風邪をひくとお母さんがすりおろしたリンゴを食べさせてくれたのだそうだ。

私はリンゴをそうやって食べたことがなかったけれど、とにかく夫には何でも口にしてほしかったから、おろし器とリンゴをすぐ病室に持ち込み、夫のためにせっせとリンゴをすりおろした。

夫は美味しそうに食べたっけ。

私も一口食べたけれど、すぐ変色するし、正直あまり好きにはなれなかったな。

 

今でもその時買ったすりおろし器はあるの。

これを見るたびに、あの病室での夫の姿を思い出してしまう。

 

闘病中、夫は私に「アップルパイが食べたい」と言ったことがあった。

アップルパイってどこで買うんだっけ。

そういやアップルパイって普段私たちは食べたことがなかった(と思う)。

それで私はパイ=ケーキ屋で買うものと思い込んで、片っ端からケーキ屋さんで探したの。

けれど、ない、ない…

あ、……

アップルパイって、ケーキ屋さんではなく、パン屋さんで買うものだったのね。

パン屋さんにはしょっちゅう通っていたのにどうして気づかなかったんだろう。

 

それからというもの私は、いろいろなパン屋さんに立ち寄り、ありとあらゆるアップルパイを買い求めた。

 

夫は私にあまり「あれが食べたい、これが食べたい」と言う人ではなかったのだけど、病気になってからは、食べることにすごく執着するようになったの。

 

今でもパン屋さんに立ち寄り、アップルパイを見るたび夫を思い出す。

なぜあの時夫はアップルパイだったのかな…

 

 

食欲があり美味しそうに食べることができた時期も確かにあったんだけど、そうではない期間の方が長かった。

抗がん剤の副作用で口内炎が酷くなり、口の中が真っ赤にただれたようになって、食欲はあっても痛くて何も食べられない時期があった。

医師に塗り薬を処方してもらい、毎日就寝前、綿棒を使って口の中に塗るのは私の役目だったの。

あの時私は本当に真剣に塗っていたっけ。

「抗がん剤に耐えられる体力をつけるためには、とにかく栄養を取って食べなきゃならないのに、この口内炎のおかげで食べられない。にっくき口内炎め!」

こんな気持ちでね。

毎晩口の中に薬を塗りたくられて、夫も辛かっただろうな。

のりみたいに粘着力が強くて、においも味もきつかったらしい。

 

その口内炎のおかげでアップルパイも食べられなくなったの。

アップルパイだけでなく、固形物がすべて痛くて食べられなかったの。

 

あんなに食べることが好きなあなただったから、さぞ辛かっただろうなと思う。

 

 

夫がいた頃、私は毎朝お手製スムージーをミキサーで作っていました。

材料は、その日で変わるけれど、

ケール、レモン🍋、セロリ、はちみつ🍯、そしてリンゴ🍎

これが美味しかったのよ。

一日のスタートにふさわしく、フレッシュでビタミンたっぷりのスムージー。

リンゴの代わりにオレンジで作ることもあったけど、リンゴの方がおいしかった。

 

夫が亡くなってからは作らなくなりましたが、この春ごろからまた作り始めました。

 

でもね、いつの間にかまたやめてしまったの。

一人で飲むために作るのがめんどくさくなったし、前ほど美味しいと思わない。

材料をそろえるのもめんどくさくなったし、一人前だけを作るのは難しい。

 

あれは、夫と一緒の朝食だったから美味しかったのね。

 

 

 

リンゴと言えば、信州🍎

 

闘病期間中も信州に行ったのよ。

二週間に一度の抗がん剤治療の合間をぬって、比較的体調がよかった時にね。

 

それまでも私たちは毎年信州に旅行していました。

 

小諸には何軒かリンゴ栽培農家があり、私達は直接農園に行ってリンゴを買っていたの。

あの時夫は、前年も行ったリンゴ園で、大きくて見事なリンゴを一箱私の実家に送ってくれたの。

伝票を書き終えて代金を支払い、農園を後にした時、夫は「よかった」と言って満足そうな顔をした。

その前年私は実父を亡くしており、実家では母が寂しく暮らしていたんだけど、夫の看病が優先で私は帰省していなかったの。

そんな私や私の母に、夫はすまないと思っていたのね。

夫の思いのこもったリンゴ農園からの直送りんご🍎

あの時母はとても喜んでくれました。

 

あの農園、場所もはっきり覚えているけれどもう一人では行けないな。

 

 


みかん畑と言うと、ぽかぽか暖かい伊豆の段々畑が思い浮かぶけど、

リンゴ畑と言うと、キリっと澄んだ空気と透明な高い空を連想する。

 

夫はりんごが好きだったから、ふたりで青森に行きたかったな。

岩木山の麓に広がるリンゴ園を見たかった。

 

そうだ、

明日はおいしそうなリンゴを買ってきて、夫にお供えしよう。

高村光太郎のように、

すずしく光るリンゴを夫にお供えするんだ。