20240602【2人の異人★倶留尊山】③ | 動的平衡

動的平衡

同情するならアメをくれ!

 

今日は月イチ出勤土曜。

慢性の腰痛が治らないうちに、胸部の痛みも重なる。

今週、美人女医の診察時に症状を伝えたら

「う――ん。じゃあCT撮っておきましょう!」

「重篤な病の徴候が見つかったら?」

「ああ、大丈夫。何かあったら放射線科から画像診断の連絡が入ります」

「はい。で?」

「緊急の場合、直ぐに柳沢さんの携帯に電話しますから安心して下さい」

今のところ、電話はないのでヤバい病気ではないのかもしれない。

 

 

さて。

14:27 @倶留尊山の続き。

まだ歩き始めて2時間半なのに猛烈な喉の渇き。

たぶんどうってことの無いレベルなのだろうが

「飲みたくても飲む水がない」という精神的なプレッシャー。

小走りに駆ける。

一刻も早く山を下り、水分補給しお昼ご飯を食べたい。

 

15:27

《亀山峠》に差し掛かったころ、気紛れな6月の神さまが微笑み一瞬光が射す。

「GReeeeeeN!」

(eの数っていくつだっけ?)

【いま下りてきた道】

 

15:56 @駐車場

自販機でコーラを買い一気飲み。

瞬間で回復。

近くに売店や食堂は見当たらないので

次の目的地への移動中にお昼ご飯を食べることに。

いざ《都介野岳》へ向けて出発。

一本道を下り〈曽爾高原ファームガーデン〉を過ぎ

青蓮寺川に沿って走る県道81号に差し掛かる手前。

左手の山肌の道なき道を下りてくる一人の男。

ボクもよくあるので一目で分かった。

道迷いだ。

路肩に車を停め、話しかける。

「どうしました。道に迷いました?」

「●△◆☆■○▼…」

「は?取りあえず乗ってください」

乗ってきた男(20代前半)は、ほぼ日本語が(英語も)喋れなかった…。

 

ウインドブレーカーを雨合羽代わりに被る国籍不明の男。

所持品は一眼レフカメラ、GoPro(動画撮影用の小型アクションカメラ)

ピンクの折り畳み傘、リュック。

「何処から来たの?」「どこの国の人?」

英語と日本語で語りかける。

なかなか会話が成り立たない。

マジか。

粘り強く問いかけて、漸くベトナム人ということが分かる。

再度、車を路肩に停め質疑応答。

ニッポンに来て1年目で、京都で暮らす技能実習生。

名前はドーコン・タイン。

今日は京都から電車とバスを乗り継いでこの辺の山に登ったそうだが

途中で道に迷い登山ルートを外れ直滑降で下山。

「アナタハドコヘイキマスカ?」

紙に地図を描き、現在地、京都、名古屋を示す。

「ボクはこの後1件立ち寄り名古屋に帰る予定だったけど」

「■○▼◇●△◆☆?」

「タインが良ければ、京都まで送っていってあげる」

 

通じたのかどうかよく分からないが出発。

その間、何度も「コレカラドコヘイキマスカ?」と訊いてきたから

よく理解していなかったと思う。

道すがら、タインのことを訊く。

かなり根気のいる。

タインは溶接の仕事に従事。

仕事はキツく会社は面白くない。

それは容易に想像がついた。

面白くフレンドリーな会社なら

1年もニッポンにいてこんなに日本語が喋れないはずがない。

会社の寮で生活し狭い部屋で4人のベトナム人と同居。

彼女はいなくて、ベトナムには両親と4人の姉。

「タインは何番目?」と訊くと「ウエニアネガ4ニンイマス」

「下は?弟、妹?」

「オトウト…ワカリマセン。シタニハイマセン。ゼンブデ6ニン」

(数が合わんだろw)

 

時刻はすでに16時半を回る。

急がないと次の目的地の《都介野岳》に間に合わない。

ここでトラブル。

タインが窓を開け苦しそうに胸を押さえている。

マジか。

「酔った?」

「▼◇●△◆☆…」

たぶん車酔い。

後続車には申し訳ないが、ノロノロ運転で進む。

そして途中また何度か「アナタハドコヘイキマスカ?」

その都度、紙に書いた地図を見せ「1ヶ所立ち寄ったら京都まで送るから大丈夫!」

 

17:30 @三陵墓古墳群

直前にゲリラ豪雨。

《三陵墓古墳群》に着いたころ、小雨に。

「本当は都介野岳の登ろうと思ったけど、もう時間がないので古墳だけ見てくる」

「△◆☆■○▼?」

「ボクは降りるけどタインはどうする?」

「ワタシ…ワタシハオリマス」

 

《三陵墓古墳群》というくらいだから、3つの古墳があるのだろう。

取りあえず目的の三陵墓西古墳へ。

5世紀前半に築造された大型の円墳。

当時この辺りは闘鶏(つげ)氏と呼ばれる豪族が支配していて

日本書紀にも登場する(らしい)。

闘鶏(つげ)が転じて地名の都介(または都祁)になったと思われる、たぶん。

【闘鶏国造の墓ではないかと言われる三陵墓西古墳】

 

あなたに逢いたかった!

ゆるキャラの失敗作のような〔つげまろ〕。

意外に顔は厳ついw

 

古墳上部には円筒埴輪列(ダミーかな?)。

【つげまろの後ろ姿と傘をさすタイン】

 

つげまろにハグ。

【GoProで撮影するタイン】

【バイバイ、つげまろ!】

 

この連なった石板の丸い小さな穴の先に〔つげまろ〕が見える仕組み。

(上手く写らなかった)

 

《三陵墓古墳群》を後にして、名阪国道・針インターへ。

やっぱり「アナタハドコヘイキマスカ?」と訊くタイン。

「だからーこれからタインの住む京都まで行くから。ところで京都のどこ?」

「ン…ウジ…デス」

「ほう、宇治のどこ?」

「ワカリマセン…ンン…ナパリ」

「ナパリ?名張から来たの?」

「ナパリナパリ。バスアリマス」

「大丈夫、宇治まで送るから」

「キンテチュ、キンテチュノエキ」

「キンテチュ?近鉄かぁ。それより宇治のどこよ」

 

走りながらも悪戦苦闘。

やっとのことで聞き出せたのが宇治市大久保。

ナビをセットし大久保へ。

車中、タインはずっと壊れて仕舞えなくなったピンクの折りた畳み傘と格闘。

高そうなGoProと一眼レフカメラを持っていることを訊くと

仕送り以外の給料をすべてカメラに費やしているそうだ。

劣悪な労働環境で楽しみが全くないため

週末は1人で毎週近場の山に登るのが唯一の趣味だとも。

お昼ごはんを食べそこなったので「一緒にご飯食べる?」と訊くと

「●△◆☆」と言って両手でバツ印。

まだ車酔いが醒めないらしい。

 

19:00 @近鉄大久保駅周辺

 

「シンチャオ」

「カムオン」

ここでタインとお別れ。

「また何処かで!」

どこまで伝わったか分からない。

変なニッポン人と思われただけかも。

最寄りのマクドナルドでごはんてりやきセット買って食べる。

 

タインとつげまろ。

2人の異人との出逢いが強烈な山歩きでしたとさ。