フィギュアスケート企画  進化の過程 | 大ちゃんを全力で応援

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フィギュアスケートの髙橋大輔くんへの
思いや気持ちを中心に書いていきたいと思います。

宝石赤大阪日日新聞
http://www.nnn.co.jp/dainichi/rensai/skate/130221/20130221044.html

進化の過程 高橋大輔 ~上~

自然に動ける「月光」


$大ちゃんを全力で応援「四大陸フィギュアスケート選手権大会」が2月8~10の3日間、大阪市中央体育館で開かれ、男子はケビン・レイノルズ(カナダ)が250・55点、女子は浅田真央(中京大)が205・45点でそれぞれ優勝を飾った。2位には246・38点の羽生結弦(東北高)と190・08点の鈴木明子(邦和スポーツクラブ)が入り、3位は235・22点のハン・ヤン(中国)と181・03点の村上佳菜子(中京大中京高)だった。今回は期待されながらも表彰台を逃した高橋大輔(関大大学院)の2日間に注目し、3回にわたって連載する。(ライター・黒尾順子、写真撮影・森田正美)

 まるで音楽を具現化したかのような表現力、作品ごとに驚くほど多彩な表情を生み出す個性によって高橋大輔はフィギュアスケート界に欠かせないスケーターとなった。2010年のバンクーバーオリンピックではけが(前十字靭帯・半月板の損傷)からの復帰にもかかわらず銅メダルに輝いた。国内外のスケーターの憧れの存在であり、高橋のスケートに魅了される人は世界の果てまで及ぶ。

 その高橋が、四大陸フィギュアスケート選手権を前にしてショートプログラム(SP)を変更した。このニュースは瞬く間に関係者、フィギュアスケートファンに広がり、多くの人を驚かせた。なぜ高橋がこの時期に異例の楽曲変更を行ったのか。

 思えばグランプリファイナル(12月)での長光歌子コーチの言葉にその兆候は見られた。「大輔にとって『ロックン・ロール・メドレー』はとても難しい曲。彼の持つ、体から醸し出す雰囲気を必要としない曲なので、彼の良さを表現しにくい」。同じことを思ったか、実際に楽曲変更を提案したのはニコライ・モロゾフコーチだった。

 もっと表現しやすいもの、もっと点数が出るものを。そうして選曲されたのが『月光』である。高橋がクラシック音楽で滑るのは2006-07シーズンのSP「ヴァイオリン協奏曲」から6年振りのことだ。

 2月8日、大阪市中央体育館は熱気を帯び、観客は固唾(かたず)を飲んで高橋の演技を待った。新しい衣装をまとい、高橋はリンクの中央に立つ。ピアノの旋律が流れるとともに動き出した。冒頭の4回転トーループで着氷が乱れ、続くトリプルアクセルでの転倒。3回転ルッツ-3回転トーループのコンビネーションと後半のステップで盛り返したところでその演技を終えた。

 演技の出来は高橋の表情が物語っていた。苦笑いを浮かべ、コーチの元に戻る。長光、モロゾフの2人のコーチは温かく迎えた。「滑り込みが足らないせいか、自然に曲に乗ってという感じではなかった。その分見せることにセーブがかかってしまった」と、高橋は冷静に自分の演技を分析した。そして「この曲はとても好きな曲。変更して良かったと思う。世界選手権までには自分の体にこの曲を馴染(なじ)ませたい。やるしかない」と前を向いた。

 大会前日の会見で、『月光』の見どころについて問われた高橋は言葉を濁した。高橋にとって「プログラムのどこをどう見せたい」という認識はないのだろう。大事なのは「見せ場のポイント」ではなく「一つのプログラムを通してどう見えるか」だ。「『月光』は僕自身が自然に動ける。自由に滑ることができると思えるプログラム。音楽表現が伸び伸びとできる」と話す高橋。『月光』の進化、そして完成を待つ楽しみにありがとうと言いたい。今はそれだけだ-。