12日に掲載された


東京新聞&中日新聞のコラムです(*^_^*)



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『気楽に食育』


先週、金沢から立派な筍が届いた。

ご近所さんにお裾分けしたら大そう喜ばれ、

こちらまで嬉しくなった。

下茹では結構手間がかかるのだが、

その分しばらく旬を楽しめる。


最初は炊き込みご飯にし、その後おにぎりに。

薄味にすると、筍そのものの味や歯ごたえに旬が感じられ、

幸せな気分になる。

水さえこまめに替えれば、1週間は持つので、

若竹煮、豚肉との甘辛炒め、

そして最後は初挑戦でハッシュドビーフに入れてみた。

これが、シャキシャキとアクセントになって、

感動的な美味しさだった。 


我が家は食べることが大好きだ。

私も気合を入れて作り、「今日はどう?」と

毎回家族の反応を見る。

息子が小さい頃から食卓では目の前の料理を

話題にすることにしている。

食育なんて大袈裟なものではなく、

旬の話題、値段のこと、味のことを会話に盛り込むだけで、

子どもは食やそれを取り巻く環境に興味を持つ。

彼が小学生の頃、秋刀魚の値段に興味を持った。

昼間は1本八十円なのに、夕方にはニ本でニ百四十円に上がる。

それが商売なのだと。


夫もよく一緒に買い物に行くので、

その日の献立は値段や鮮度で決めていく。

彼は必ずスルメイカをチェックし、満足なものがあると、

「今日はしっかりワタが詰まってる!」と得意の塩辛を作る。

息子の大好物だ。


たわいのない話ばかりだが、

食一つでも十分コミュニケーションは生まれる。

食卓のこんな会話がアナログで何だか大事なことに思えるのだ。


(木場 弘子=キャスター、千葉大学教育学部特命教授)