21日に東京新聞&中日新聞夕刊に
掲載されたコラムです。
生産者のご苦労には胸が痛みます・・・。
木場弘子
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『放射線検査』
いまだ風評被害に苦しむ福島県の牛。
郡山の食肉流通センターで、牛の放射線量測定の
新たな取り組みを取材した。
牛の体表から筋肉中の放射線セシウムの濃度を
短時間で測る検査で、実用化を模索している。
この検査には、手塩にかけて育てた牛を
無駄死にさせたくないという農家の思いもある。
出荷前に放射線量を把握し、規制値を超えそうな牛は
出さないという判断ができる。
この検査機の開発に取り組んだのは
JA全農の獣医たちだ。動機は金銭面。
海外のメーカーからの売り込みはあったが、
1台1億円というもの。それが円高もあるからと、
最後は3千万まで下がったが、
デモンストレーションさえ見せてくれなかったという。
随分と足元を見たひどい商売と心寒くなる。
しかし、その機器では、両脇のバーの間に牛を立たせる検査で、
体表への密着性がない。
また、機器が大型で、牛をそこまで移動させる手間がかかる。
そこで、試行錯誤の末、手作りの機器を作った。
直径11センチ、高さ7センチのリング状の鉛。
バームクーヘンの形状だ。
それを牛の腰に置いて、大気中の放射線を遮断し、
その中に測定器を挿入する。
このサイズだと、個々の農家でも検査が可能。
そして、値段は何と70万で収まった。
今はデータを取っている段階だが、実用化が待たれる。
こうした前向きな取り組みで、再び
福島の牛の信頼を取り戻せる日が早く来るよう切に願っている。
(木場 弘子=キャスター、千葉大学教育学部特命教授)