いつもは月曜にUPする


「ほぼ紙つぶて」ですが、


今回のテーマが震災に関連するので、


1時間少々早めですが、


UPさせて頂きますね。


<3月10日 東京&中日新聞夕刊掲載分>



++++++++++++++++++++++++++++++++



『長屋のつながり』


東日本大震災から明日で1年が経つ。

私が住んでいる浦安市も液状化による被害を受けた。

しかし、災害救助法に「液状化」という項目がないため、

被災地としての認定を受けるのに時間がかかり、

この間、計画停電などで苦労した。 


しかし、そんな中、何とかやってこられたのは、

近所の人とのつながりのお陰だった。

 以前、このコラムでママ友達の話を書いた。

名古屋で孤独な子育てをしていた時に

同じマンションの人に助けられた。

母子で食事会をしたり、悩み相談をしたり。

それこそ、「お味噌貸してチョー」の世界だ。

このマンションが高層だったので、私たちはそこを「縦長屋」と呼んだ。

十六年前、浦安に移り住んだ時にも、私は長屋の形成を心がけた。

近所への挨拶は上下、左右だけでなく、斜めの上下にも広げた。

そんな日頃からのコミュニケーションのお陰で、

震災の時には水の配給情報、スーパーの食料事情など、

長屋から情報を得た。当時は同じ市内でも場所によって、

水が出ない、ガスが使えない、下水を流せない状態が40日も続いた。

当然、お料理もできないし、お風呂も入れない。

無銭米を分けあったり、食事に呼んだり、呼ばれたり。

高校生の息子は部活仲間にお風呂を貸し、しばらく我が家は銭湯になった。

 今なお、余震は続く。

先週1週間は家族が不在で心細かったが、

隣人が気にかけてくれた。

人とのつながりがいかに大事かを改めて実感した1年だった。


(木場 弘子=キャスター、千葉大学教育学部特命教授)