毎週土曜日、


東京新聞&中日新聞夕刊に


掲載していただいているコラム


『紙つぶて』を原文のままご紹介させて頂いております!


1月28日掲載分です。


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『若いお母さんへ』

「お母さんがいなかったら私はここにいない。

私を産んでくれてありがとう」大関把瑠都の優勝インタビューに

思わずグッと来た。若いお母さんなら、尚更だろう。 

子育ての講演をすると、彼女たちの真剣な目、

時に涙ぐむ姿に過去の自分が重なる。

 

私の子育のスタートは名古屋だった。

当時、夫が中日の投手だったため、結婚と同時に仕事をやめて飛び込んだ。

しかし、知り合いはいない、仕事もない、頼りの夫は遠征でいない。

更には夫の不調で色々言われるのが嫌で周囲に対し殻を作った。

自分のことぐらい自分でできる、と。


しかし、子育てはそうはいかない。育児書通りにいくわけがない。

募る孤独感。子どもが6カ月の時、同じマンションの女性に声をかけられた。

「何か困ったことがあったら、言って下さい。私たちにも小さい子がいるんですよ」

もう限界だった私は素直に甘えた。

以来、お買い物を頼み、子どものお風呂を手伝ってもらい、 

母子で夕食会を開いては相談した。先輩ママの経験から来る「大丈夫」の一言は、

どんなに分厚い育児書よりも私を勇気づけた。

自分の弱さをさらけ出せた。


「親であるということは一つの職業だ。

しかし、今だかつて子どものためにこの職業の適性検査が行われたことはない。」

バーナードショウの言葉である。子どもを産んだ瞬間、

親と呼ばれ戸惑うが、子育てのプロではない。子によって親に育っていく。


名古屋を離れて16年になるが、当時のママ友達との絆は強い。

どうか焦らず、周囲に甘えて欲しい。


(木場 弘子=キャスター、千葉大学教育学部特命教授)