NETFLIX
尊厳死は悪?
(C)2022「PLAN75」製作委員会 / Urban Factory / Fusee
PLAN75
政府は高齢社会対策として75歳以上の安楽死を認め支援する「プラン75」を新設。ホテル清掃業に従事するミチ(倍賞千恵子)は不安と共に暮らす。役所のプラン75を受け持つヒロム(磯村勇斗)は申込者の中に叔父(たかお鷹)の姿を見つける。海外から働きに来ていたマリア(ステファニー・アリアン)は娘の手術費のために報酬のいいプラン75関係の仕事に就く。
(C)2022「PLAN75」製作委員会 / Urban Factory / Fusee
近未来? いやもう明日にでも実現しそうな世界。安楽死=尊厳死は安易に答えを出しちゃいけないテーマなのかと。倍賞さんが9年ぶりに主演を張った日本・フランス・フィリピン・カタールのスタッフがチームを組んだ話題作を初見。
当事者の高齢者、運営する公務員、現場の職員。三者三様の物語は交わることなく進む。最後の最後。ほんのわずかな接点に辿り着く。もしもこんな制度があったら…オリジナルストーリーなのは挑戦的。ただ、この制度の設定は無理があるかな。
(C)2022「PLAN75」製作委員会 / Urban Factory / Fusee
仕事しているミチは健康的にも経済的にも立派に自立している。ところが「年寄りだから」と仕事を辞めさせられ、就活もうまくいかず、住むところも確保できない。ちゃんと生きてたのに「PLAN75」に徐々に追い込まれていく。
一方、運営側のヒロム。偶然会った叔父と最期の時を過ごす。明確ではないが微かに何かが揺れる。高齢者をケアするオペレーター(河合優美)もまた、ルールを破ってミチと接したことで、揺れる。そんな中、マリアはお金のために黙々と働く。
(C)2022「PLAN75」製作委員会 / Urban Factory / Fusee
日本映画界の至宝、倍賞さん。「男はつらいよ」の桜は知らなくても「ハウルの動く城」のソフィの声なら若い方もご存知だろう。共に日本映画を支えた吉永さんとは対照的な庶民代表。本作観ていて辛くなるほどの出来の良さ。
磯村は説明の必要なし。実力は太鼓判。アリアンはフィリピンの俳優。お父様が日本人なんですって。たかお鷹はきっと見たことある。近頃カンヌで話題の河合が終盤だけの出番ながらすごい存在感。雰囲気を出せる逸材。
(C)2022「PLAN75」製作委員会 / Urban Factory / Fusee
高齢者の生活の辛い現実。PLAN75への誘導に使われているが結構リアル。高齢者を厄介者にして経済効果のみで安楽死を認めるのは反対…そんな意図が見え隠れ。作品に意図を埋め込むのは良い。が、本作設定からして少し甘くない?
経済効果を謳って年齢以外制限なし。そんな法案通るわけない。バカな選択をした国民を笑うブラックユーモアならわかるけど。尊厳死を否定するのは簡単。でも、終末医療の辛さ知ってます? それでも尊厳死って悪なの? 僕にはわからない。
DATA
監督・脚本:早川千絵
出演:倍賞千恵子/磯村勇斗/ステファニー・アリアン/河合優美/大方斐紗子/串田和美/たかお鷹
hiroでした。