#n9 NETFLIX


あの国のあの人に見てほしい

西部戦線異状なし


1917年、第一次世界大戦の最中のドイツ。17歳のパウル(フェリックス・カマラー)は仲間と共に兵役を志願する。フランス・パリへの侵攻に興奮し、祖国の未来を信じていたパウルだったが、配属されたのは最前線の西部戦線。聞いていた話とは裏腹に塹壕戦の現実は凄惨を極めていた。真実の西部戦線は連合国の抵抗により長きにわたり膠着状態にあった。ドイツの政治家エルツベルガー(ダニエル・ブリュール)は連合国との休戦協定に奔走する。



エーリヒ・マリア・レマルクの小説を原作に1930年に映画化。映画黎明期を代表する反戦映画の金字塔的な作品となる。本作は2度目の映画化。初見なわけだが、何より当事国のドイツがこの作品を作ったことが意義深く思える。


戦争で命令するのは権力者で、戦地で血を流すのは国民である。誰もが知るこの事実。本作でも描いているのは言い古されたそれである。では、今さら無意味なのか?…いや、誰もが知っているはずなのに、戦争は未だ繰り返されているのは事実。


繰り返すが、最初の映画化は1930年である。後の歴史を知る僕たちは、1941年、次の大戦が始まることを知っている。1930年時点で当事国で反戦を唱えている先見性に驚く。そして、その声は届かなかったことが悲しい。



本作もテーマは反戦。その演出は武骨。最前線での着弾や乾いた発砲音等々、その場にいるような音響が秀逸。そこに現代風の音楽をかぶせることで塹壕にいることの恐怖が増幅。スクリーンの音響環境だったら、とんでもない体験になっていたかと。


最前線から離れた駐屯地の長閑な時間。長閑でもあくまでそこは占領地。決して穏やかではない。そうだよね、戦争だもんね。占領された側は敵国兵士は憎いはずだよね。そういう空気も終盤の展開の伏線になっていたりする。


2023年の米アカデミー賞で9部門でノミネートされ4部門を獲得。「エブエブ」と並ぶ台風の目とはいえ、あまり観ることのないドイツ映画。エドワード・ベルガー監督も主演カマラーもお初。製作総指揮も兼ねるブリュールしかわからん。



現代、再びドイツのクリエイターが発信した反戦メッセージ。時まさにロシアによるウクライナ侵攻の最中である。戦争はどんな綺麗事を並べても殺し合いに他ならない。お国の事情、プライド…どんな事情であれ、戦地で殺し合いをするのは国民だ。


彼の国の為政者に問いたい。国民の命よりも大切な事情やプライドって何ですか?



 DATA

監督・脚本・製作:エドワード・ベルガー/脚本・製作総指揮:イアン・ストーケル/レスリー・パターソン/製作総指揮:ダニエル・ブリュール/原作:エーリヒ・マリア・レマルク

出演:フェリックス・カマラー/アルブレヒト・シュッフ/アーロン・ヒルマー/モーリツ・クラウス/アドリアン・グリューネヴァルト/エディンバラ・ハサノヴィッチ/ダニエル・ブリュール



hiroでした。

*画像は「映画.com」等のサイトより引用。



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