#2 TOHO_HIBIYA


権力者を生み、守るシステムに一矢

(C)Universal Studios. All Rights Reserved

SHE SAID/その名を暴け


ニューヨークタイムスの記者ミーガン(キャリー・マリガン)はスキャンダルで追い込んだトランプが大統領選を勝ってしまう現実に報道の限界を感じていた。産休を終えて職場復帰したミーガンはハリウッドの大物ハーヴェイ・ワインスタインの性犯罪を追いかけていたジョディ(ゾーイ・カザン)のサポートに回る。被害者の反応から隠蔽工作の周到さに怒りを覚える。


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「#Me Too」ブームに乗っかった再現ドラマだったら書くことないな〜と正直思ってた。観てみないとわからないね。これ、傑作。遊び? ジョーク? いやこれは犯罪。なのに罪の意識なんてこれっぽっちもない。権力者は何をやっても許されるのか。


時系列を追うならドキュメンタリーでいい。本作はエンタメだ。二人の記者にはそれぞれ事件を追う理由がある。サポートする職場スタッフには報道する責任がある。そして告発する被害者の勇気。それらが相まって「ドラマ」を形成する。


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聞く人に痛い、重いセリフが連発。そういうテーマだから。それでいて観る人を惹きつけるのは脚本の妙。サスペンスチックだからハラハラドギドキ。ドラマチックだから引き込まれる。重くても、ちゃんとエンタメになるってこと。


ワインスタインの行動は反吐が出る。何をしているのかわかっていたのか。「男はみんなこうだ」と思わないでほしい。こんなゲスでも、守られるシステムがある。守ろうとする人がいる。そこは脚色も何もない事実。本作の重要なエレメントだ。


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トップクレジットにはマリガン。「17歳の肖像」「わたしを離さないで」から近作「プロミシング・ヤングウーマン」…いいキャリアを積んでいる。本作、自身が悩み抱えながらジョディをサポートする役。その包容力はマリガンが演じてこそ。


オスカー2度受賞のエリア・カザンを祖父に持つゾーイ。実質リードをとった本作で最高の仕事。ろくなオトコが出てこない中、アンドレ・ブラウアーがかっこいい。ブラッド・ピットが製作総指揮に名を連ねる。そっか、あの方の名も出てるんだね。


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トップは何でも許される。だからトップを目指す。それが「上昇志向」と尊ばれる。周りもトップを許し忖度する。彼らのパワー理論ではそれが常識。そういう人じゃないとトップになれないシステム。それが嫌で、僕自身、紆余曲折の末離脱した。


権力の集中がモンスターを生む。ワインスタインが関わった作品の数々。困ったことに、感動し熱狂した大好き作品が数多。ヤツは名前を貸しただけ。作品に責任はない。そう思わないと整理がつかない。それほどショッキング。


ラストシーンが秀逸。マスコミができるのはここまで。世界を変えるのは僕たちです。



 DATA

監督:マリア・シュラーダー/脚本:レベッカ・レンキェヴィッチ/原作:ミーガン・トゥーイー/ジョディ・カンター

出演:ゾーイ・カザン/キャリー・マリガン/パトリシア・クラークソン/アンドレ・ブラウアー/ジェニファー・イーリー/サマンサ・モートン/マイク・ヒューストン



hiroでした。



わたしを離さないで←カズオイシグロ原作


未来を花束にして←豪華キャスト


プロミシング・ヤング・ウーマン←衝撃作