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置き忘れた時間をもう一度

(C)2021「夏への扉」製作委員会

夏への扉ーキミのいる未来へー


両親の死後、親代わりとなって育ててくれた松下の庇護のもとAIロボットの開発者となった宗一郎(山﨑賢人)。松下も亡くなり、今は松下の弟和人(眞島秀和)と会社を共同経営していた。宗一郎が開発中のプラズマ蓄電池が完成間近になったある日、和人の裏切りにより会社を追われた宗一郎はプラズマ蓄電池のデータを奪われてしまう。


(C)2021「夏への扉」製作委員会


ハインラインが1950年代に発表したタイムトラベル小説の古典作を原案に映画化。スマホやアプリ等は現代風アレンジ。宗一郎がコールドスリープから目覚めたのが2025年の設定だから、近未来というより、もうすぐそこじゃん。


未来モノ系の未来は殺伐した風景が多い。本作の風景は明るい。反政府だとかAIの反乱だとか殺伐とした話ではないのが要因。眠らされた間に奪われたものを取り返す、個人的な範囲のコンパクトな話。未来はまだ明るい。


(C)2021「夏への扉」製作委員会


現代に近いとはいえ、脚本は2010年代に練られたはず。その後、キャッシュレス、タクシーアプリなどはあっという間に浸透。自動運転は技術的には可能なわけだ。コールドスリープ、人型AIロボなどは別として驚くべき的中率だと思う。


狂わされた人生に抗う宗一郎。不良品のAI。行方不明の松下の娘・璃子(清原果耶)。雑誌に書かれたサイン。Mr.Children。すべての出来事には意味がある。清潔感のある部屋で目覚めた璃子の「おはよう」は気持ちのいいハッピーエンド。


(C)2021「夏への扉」製作委員会


キングダム」にハマり「今際の国のアリス」も好調のミスター熱男山﨑賢人。この熱男を差し置いて本作の空気をつくったのが清原果耶。彼女の透明感が全編を支配する。その後の朝ドラの国民的ブレイクも納得。若手の中でも無視できない存在。


藤木直人もまた透明な演技。なにせ感情というフィルターを持たないAIロボット。撮影は楽しかっただろう。夏菜の汚れ役はなかなか良い。原田泰造浜野謙太らは次世代名バイプレイヤーへの道を着々。先輩バイプレイヤー田口トモロヲは貫禄。


(C)2021「夏への扉」製作委員会


タネあかしは少々複雑だが辻褄は合ってるように思えた。もう少しスッキリできそうだけど原作ありきだから仕方なしか。10歳の年齢差と10年の睡眠時間差はうまく使った。おかげでラブストーリーとしてもちゃんと成立。


♪遠い記憶の中にだけ 君の姿探しても

もう戻らない でも忘れない 愛しい微笑み

真冬のひまわりのように 鮮やかに揺れてる

過ぎ去った季節に 置き忘れた時間を

もう一度つかまえたい♪

挿入される「CROSS ROAD」。

なるほど、これもちゃんと意味がある。



 DATA

監督:三木孝浩/脚本:菅野友恵/原作:ロバートAハインライン

出演:山﨑賢人/清原果耶/夏菜/眞島秀和/原田泰造/高梨臨/浜野謙太/田口トモロヲ/藤木直人



hiroでした。



キングダムシリーズ←山﨑賢人ハマり役


まともじゃないのは君も一緒←清原果耶主演の傑作


陽だまりの彼女←三木孝浩の傑作