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現代人のコーピング術

(C)2020「私をくいとめて」製作委員会

私をくいとめて


お一人様が落ち着く会社員のみつ子(のん)は、心のなかでイマジナリーフレンドのA(中村倫也)と会話をしている。ある日、会社の同僚で年下の多田(林遣都)と偶然近所のコロッケ屋で遭遇し、近くに住んでいることを知る。多田に恋していることをAに指摘されたみつ子だったが、気をつかうことを面倒がり、多田との距離は一向に縮まらない。


(C)2020「私をくいとめて」製作委員会


勝手にふるえてろ」の大九明子監督と「海月姫」ののんのコラボ作品を初見。コメディのふりして結構辛辣。それでいてたくさんの女性(…に限ってはいないけど)へのエールがグッとくる。期待どおりの大九監督らしい快作だった。


イマジナリーフレンドとは想像上の友人。捉え方は人それぞれだが、怖いとかヤバイとか反応する方は少し考え直すべき。これは心の病じゃなく、逆にストレス状態の時の対処法のひとつである。本作のAもみつ子を救う存在である。


(C)2020「私をくいとめて」製作委員会


自分を客観的に見るための「自身との対話」。「Aならどうする?」という問いは「自分はどうすべきか」を客観的に判断しようという試みである。そうして見ると、やや孤独だが普通に生きているように見えるみつ子もストレス下にある、ということだ。


ストレスのない人はいない。Aを認識できるみつ子は対処できている。対処法(コーピングという)を持っていない人のほうがストレスに無防備。セクハラ、パワハラ、モラハラ…特に女性はストレスに晒されやすい。コーピングを知っておいて損はない。


(C)2020「私をくいとめて」製作委員会


主演はのん。独自路線で芸能界を突き進むのん自身も多くのストレスと闘っているのだろう、と勝手に主人公と重ねてしまう。軌道に乗ってきたようなので今後も楽しみ。本作では7年ぶりに朝ドラ盟友橋本愛との共演も話題。


Aの声は中村。顔が出ない(…実は終盤に出るのだが…笑)にもかかわらず存在感が凄い。助演と言っていい。お相手林はいつもどおりなので安心領域。臼田あさ美はコメディが似合う。前野朋哉が衝撃的すぎる登場。


(C)2020「私をくいとめて」製作委員会


割と堅めな感想を書いた。が、主人公に自分を重ねる方は少なからずいるかと思う。珍しいことじゃない。ストレスはストレスと認識して、敵視せず、うまく付き合っていくのが、自分にとっての最大の武器になるんじゃないかと思うよ。


「勝手に…」の松岡茉優に続いて大九監督に見出されたのん。観客が共感しやすいキャラクターを熟知してるなーと感心。みんな頑張ってるよね。頑張ってるんだから、みんなが穏やかに過ごせるといいね。



 DATA

監督・脚本:大九明子/原作:綿矢りさ

出演:のん/林遣都/臼田あさ美/若林拓也/片桐はいり/前野朋哉/吉住/橋本愛/中村倫也



hiroでした。



勝手にふるえてろ←大九監督代表作!


海月姫←のんの映画代表作


ジョジョ・ラビット←IFといえばこの名作