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人生は一場劇

(C)2001千年女優製作委員会

千年女優


往年の大女優・藤原千代子(荘司美代子/小山茉美/折笠富美子)は引退後、30年にわたる隠遁生活を送っていた。閉鎖される銀映撮影所についてのインタビューを映像製作会社社長の立花(飯塚昭三/佐藤政道)から依頼されると快諾し、千代子のファンだという立花とカメラクルーの訪問を受ける。インタビューに先立ち、立花から千代子に小さい箱が渡される。


(C)2001千年女優製作委員会


漫画家としてデビュー後アニメーションの世界に転身。大友克洋、押井守等レジェンド級の人々と関わり、自身、たった4本の劇場作品を遺し、46歳で膵臓癌で早逝。今敏その人もまたレジェンドの一人となった。劇場作品2作目になる本作を初見。


特徴的なのは説明しようのないストーリー。インタビューが進み、千代子の半生と出演作品が入り混じっていく。そこに撮影隊として立花とカメラマンの二人が現場に現れる。千代子マニアである立花がさらに…観ていただくほうが早い(笑)


このカオス、後の「パプリカ」の現実と仮想現実のクロスオーバーが連想される。「難解」だと避けられていた挑戦はやがて定型となる。「映画」をテーマとしていることから大林宣彦監督の「海辺の映画館」も思い出した。


オールド千代子役荘司さん、少女ようなおばあちゃんの声にフィット。2020年に亡くなられている。小山、折笠、山寺宏一津嘉山正種のその後の活躍はご存じかと。ブライトさんこと鈴置洋孝の声が聞こえた。鈴置さんも亡くなられていたのか。


「鍵の男」の影を慕い続ける思いを人生最期の時に客観的に「批評」する千代子。その思いはロマンスだったのか演技だったのか。それに踊らされていた自分への嘲笑で幕。一人ひとりの人生は、ひとつひとつの一場劇なのかもしれない。


藤原千代子という女優。彼女の人生そのものが女優であり、フィルムに記録された彼女の思いは百年、千年と語り継がれる。私たちの人生もまた、関わった人たちの記憶に残っている限り、永遠に生き続けるのだ、と思う。



 DATA

監督・脚本・原案:今敏/脚本:村井さだゆき/音楽:平沢進

出演:荘司美代子/小山茉美/折笠富美子/飯塚昭三/佐藤政道/小野坂昌也/津田匠子/鈴置洋孝/山寺宏一/津嘉山正種



hiroでした。



東京ゴッドファーザーズ←12月になると見たくなる


パプリカ←今敏の遺作にして最高傑作


AKIRA←この影響は大きい