#8 3/2 TOHO_HIBIYA


世界を動かしたファミリーの話

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ドリームプラン


子どもの頃の体験から、父として5人の娘を守り、立派な人間に育てることを誓ったリチャード(ウィル・スミス)。特にテニスの類稀な才能を発揮する第4子ビーナス(サナイヤ・シドニー)、第5子エレーナ(デミ・シングルトン)には周囲が心配するほど厳しく指導する。テニス経験のない自身の指導の限界に突き当たったリチャードはプロの有名コーチを探すが、富裕層のスポーツとされたテニス界は黒人で貧しいウィリアムズファミリーには門を閉ざしていた。


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伊達公子さん(本作の翻訳監修をされてました)と松岡修造さんのウィンブルドンでの活躍からずっとテニス好き。本作の話はそのちょっと前。サンプラスとかサンチェスとかライブで見てたもの。今もバリバリ活躍されているウィリアムズ姉妹はすごい。


本作はその姉妹の父リチャードの話。暴君に映る態度からキングと呼ばれたのだそうだが、原題のまま公開してたら感じが違ったかも。リチャードは偉人ではない。パワハラ、DVまがいである。が、本作ではそこも含めてリチャードは迷いの中にいる。


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差別社会で育ったリチャードは、娘たちを徹底的に教育し成果をあげる。しかし、生活環境は底辺。抜け出したくても金がない。改善されたとはいえ、まだ黒人が白人並みに稼げる仕事もない。育てたはいいが、送り出す社会が熟成していない。


娘を守りたい一心のリチャードはジレンマに陥る。そう、本作でのキングは悩み、焦る。チャンピオンを育てた英雄としての威厳などない。「キング」をタイトルに冠するより、珍しくも邦題のほうがしっくりくるパターン。


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当時「キング」の通称はリスペクトだけではなかっただろう。スミスがトライしたこの実在の人物は難役。本作のスミスの評判はすこぶるいいようだが、それも納得だ。妻オラシーン役のアーンジャニュー・エリス。本作中盤以降はキーマンと言っていい。


シドニーは「フェンス」「ドリーム」など近年のアカデミー賞にも絡む重厚な作品に出演。シングルトンはミュージカル経験豊富。双方、今後の注目株。コーチ役ジョーン・バーンサル…って「ウォーキングデッド」のシェーンだと気づかなかった。


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バスケ、陸上、野球、アメフト…黒人が白人と対等に勝負する場は黒人自らが勝ち取ってきた。富裕層のスポーツとされたゴルフやテニスも然り。アスリートとしての勝利だけでは不十分。要は人だ。その人が世界を動かす魅力があるか否か、だ。


差別と闘い続けたキングと呼ばれた男は家族によって大切なものに気付かされる。チャンピオンの育成のためのプランは実は貧しい黒人ファミリーの夢のプランでもあった。センターコートを後にするウィリアムズファミリーが見た光景に涙した。



 DATA

監督:レイナルド・マーカス・グリーン/脚本:ザック・ベイリン/製作:ウィル・スミス

出演:ウィル・スミス/アーンジャニュー・エリス/サナイヤ・シドニー/デミ・シングルトン/ジョン・バーンサル/トニー・ゴールドウィン



hiroでした。



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