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「かわいそう」で終わらせてはいけない

ヤクザと家族 TheFamily


薬物で父を亡くした賢治(綾野)は行きつけの焼肉店で襲われた柴咲組組長(舘ひろし)を助けた縁で組員となる。敵対暴力団との抗争が勃発し、兄貴分の中村(北村有起哉)の殺人の罪を自らかぶる賢治。14年の刑期を終えて無事に出所するが、久しぶりに戻った社会はあまりに変わっていた。



ヤクザ映画は苦手だが「新聞記者」が予想以上に良かったので藤井監督の次作を配信で初見。同時期に公開された西川美和監督「すばらしき世界」と似たテーマだと話題。未見なので比較はできないが、どちらも現代ヤクザ事情。観ていて複雑。


タイトルに「家族」とある。家族をなくした者、家族から逃げ出した者。行き場を失った者たちを受け入れ、新たな家族になるのがヤクザだという。主人公以外の経緯は描かれていないが、登場人物の大半の背景はそういうことなのだろう。



劇中の柴咲が家族のオヤジであり、凄みこそあれいい人すぎる。こっち方面の方々がみんなこんななら義理人情も悪くない。そこは「残念ながら」なのだろう。暴力団が薬物をはじめ多くの犯罪に関わってきた歴史は「ドラマの話」とは言いきれない。


劇中の「残念」代表が敵対組織のトップ加藤(豊原功補)。反社組織やそれに関わっていた人々が世の中から締め出される中、こういう人物が甘い汁を吸っている。許さられざる者ではあるが、リアルな世界で我々は両者を識別することはしていない。



そうした世の中で迎える本作のラストは切ない。賢治をそうさせたのは世の中である。仮に賢治が堪えてもいずれは他の誰かが同じことをするのだろう。物語では描かれない「その後」も予見できる。この連鎖を断ち切ることはできるのだろうか。


主人公の20年を演じた綾野くんは期待通りで言うことなし。目を見張ったのは市原隼人磯村勇斗のWハヤト。物語のキーマンで高い要求に見事に応えた。北村が器用。岩松了はいい人役のわけがない。舘さんは失礼ながら初めてうまいと思った。



スポーツ界でのタトゥーが問題になった。仮に外国人アスリートであれば違和感なく受け入れる。ところが町の銭湯で背中一面の彫り物を目にしたらどうだろう。その人のことを何も知らなくても固定観念を抱いてしまうのではないか。


本作、その観念がテーマである。ところが中盤までの「伏線」が長く、オーソドックスなヤクザ映画の印象を与えかねない。本作の意味は「新聞記者」同様問題提起かと。「カッコいい」や「かわいそう」で落ち着いちゃうと意味は大きく変わるよね。



 DATA

監督・脚本:藤井道人/音楽:岩代太郎

出演:綾野剛/舘ひろし/尾野真知子/市原隼人/磯村勇斗/北村有起哉/菅田俊/康すおん/二ノ宮隆太郎/駿河太郎/豊原功補/岩松了/寺島しのぶ



hiroでした。



新宿スワン←冒頭の綾野くんこれやね


アルキメデスの大戦←舘さんが山本五十六


さらばあぶない刑事←舘さんといえばコレ