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それがハリウッド!

Mank/マンク


若き天才オーソン・ウェルズ(トム・パーク)を全権に迎えたハリウッドの映画会社RKOはある作品の脚本をハーマン・J・マンキウィッツ(=マンク/ゲイリー・オールドマン)に依頼する。脅威的な早さで書き上げたその脚本は、銀行王として成功を収めていたハースト(チャールズ・ダンス)と女優で愛人のマリオン・デイヴィス(アマンダ・セイフライド)をモデルにしたストーリー。撮影前から「誰もが恐れる銀行王にマンクが喧嘩を売った」という噂が流れ出す。



…その作品が「市民ケーン」。ウェルズ監督・主演でウェルズとマンクの共同脚本。アカデミー賞9部門にノミネートされるも、ハーストの怒りをかったことで受賞は脚本賞のみ。しかし、アングルや撮影技法が評価を得て今も名作として語り継がれる。


…そんな名作を未見。これは本作を鑑賞するうえでも大きなビハインド。本作、モノクロ撮影だったり独特の撮影技法を使ったりと「市民ケーン」へのリスペクトもてんこ盛りなのだとか。併せて当時のハリウッド事情を知っていればもっと楽しめたはず。



メイヤー(アーリス・ハワード)、ハウスマン(サム・トラウトン)、セルズニック(トビー・レオナルド)ら当時のハリウッドの大物たちも実名登場。…という状況なので一度鑑賞を止めて人物を調べてからまた観る、というドタバタ。笑うしかない。


いわば「市民ケーンができるまで」的な裏話。「ローマの休日」の裏話としても楽しめる「トランボ」と似た感じかも。マンクの目を通して描かれるハリウッドの表と裏。忖度を重視する人々に対するマンクの矜持は現代人にも響くはず。



「嫌われ者」のマンクを演じるのは誰もが認める実力派オールドマン。その風評を飄々と受け止める立ち居振る舞いはさすが。ただ、40代、50代を演じるには、当時の見た目を差し引きしてもいささかリアリティに欠けたかな。


ダンス演じるハーストよりも目を引いたマリオン役セイフライド。悪女でもヒロインでもない存在ながら「事件」における重要度の高さが推し量れる。狂言回し的な立ち位置のリリー・コリンズと妻役タペンス・ミドルトンの配置が光る。



デヴィッド・フィンチャーにしては映像以外は「普通」な印象。実は本作の脚本ジャック・フィンチャーはデヴィッドの実父。ジャーナリストのジャックが書き上げたものの映像化は実現しなかったマンクの物語を息子が仕上げた、ということ。


2003年、72歳で亡くなった父へのレクイエム。そんな私的な一面を持つ本作をエンタメ作品に昇華したのはフィンチャーの実力。アカデミー賞では「市民ケーン」を上回る10部門ノミネート。オスカーを逃したとしても「それがハリウッド」(笑)



 DATA

監督:デヴィッド・フィンチャー/脚本:ジャック・フィンチャー

出演:ゲイリー・オールドマン/リリー・コリンズ/アーリス・ハワード/フェルディナンド・キングズレー/トム・ペルフリー/タペンス・ミドルトン/サム・トラウトン/トビー・レオナルド/トム・パーク/モニカ・ゴスマン/アマンダ・セイフライド/チャールズ・ダンス



hiroでした。



ウィントン・チャーチル←オールドマンのオスカー受賞作


ソーシャル・ネットワーク←フィンチャーのオスカー受賞作


マンマ・ミーア←助演女優賞候補アマンダ主演!