16本目(9月1日鑑賞)
主人公は「痛い」のか?
大学に入った楓(吉沢亮)は本気で世界平和を語る同級生秋好(杉咲花)と出会う。他人との距離を保とうとする楓だったが気にせず距離を詰めてくる秋好と接するうちに意気投合し、「なりたい自分になる」サークル=モアイを立ち上げる。フリースクールの支援活動などをする二人に大学院生の脇坂(柄本佑)が加わり、モアイは少しずつ形を変えていった。
「きみの膵臓を食べたい」の住野よるの小説を映画化。キミスイのような「泣き」はない。が、予告のような復讐劇かというとそうとも言い切れない。なかなか凝った構造なのだが…うーむ、ネタバレ含む部分なので書きづらい。
主人公楓はなかなか面倒。思い込みも激しく、思い通りいかないと投げ出した挙句に復讐。コミュ力の高い学生に対するコンプレックスの塊で協調性もなし。そんな痛い楓に共感できず…なんて感想を抱いた方とは話しが合いそうにない。
物語は楓の目線で進む。なので、彼の闇の部分があからさま。最初は正義かと思われた彼の大義がだんだん怪しくなっていく。危ないヤツ、痛いヤツ。実はそれが仕掛け。彼のもつ闇を自分ももっている。そう思える人は楓に共感できるはず。
そう思えない人には本作はつまらない。常に大勢側にいてマニュアル通り行動して彼らの「常識」に支配されている人には楓が理解できないから。好感度ばかり気にする彼らに個性を感じないんだよね、個人的に。あなたは誰なのか、と。
主演の吉沢くんは人気とは裏腹に内向する役がうまい。一方の花ちゃんも実力は太鼓判。もっともっと映画に出てほしい。二人が本音を晒す「痴話喧嘩」は名シーン。その二人に絡むのが柄本くんというのは安心しかない配置。
岡山天音は露出も多く、キャリア最大の大仕事だったかも。清水尋也も実力がある上にアイコンとして貴重。鼻につく佇まいは若いのに一級品。松本穂香は若いのにサブ出演を多くこなす期待の星。森七菜のサメの歌に感動(笑)
「青くて痛くて脆い」のはすべての人に当てはまる(と思う)。自分もそうだと考える人と自分は違うと考える人。そのボーダーを投げかけ、観た人の本質をふるいにかける。そんなあざとさも垣間見られるなかなかのストーリー。
似たような服を着て、似たような表情で♪
この世界は群れていても始まらない♪
そんな歌が思い出される。僕はたとえマイノリティであったとしても楓に共感した。
監督:狩山俊輔/脚本:杉原憲明/原作:住野よる
出演:吉沢亮/杉咲花/岡山天音/松本穂香/清水尋也/森七菜/茅島みずき/光石研/柄本佑
hiroでした。